桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝

  • 文藝春秋 (2002年3月26日発売)
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本 ・本 (536ページ) / ISBN・EAN: 9784163205304

感想・レビュー・書評

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  • 太宰治が井伏鱒二の仲人による石原美知子との再婚を期待する手紙から感じる彼のナイーブさと意外な真面目さ。無教会キリスト教指導者・塚本虎二の影響による聖書への造詣、『駆け込み訴え』『女生徒』『走れメロス』などの名作が生れた背景ともいうべき美知子との家庭生活の充実。彼の作品がそもそも名作であるその独特の文体の秘密などについて迫力ある文体で表現してくれています。美知子の前に結婚・離婚した小山初代。愛の結晶・太田治子の母となった太田静子、そして2人きりの死をあたえるため心中をした山崎富栄など、その他にも多くの女性との浮名を流しながら、死ぬ前に書いた美知子のみを愛しつづけているという遺書の凄さに驚きでした。美知子にとってはこの言葉は救いだっただろうと思います。しかし、破滅的な生活をし、師の井伏鱒二を「悪人」と呼ぶ独善的な晩年は淋しさを感じざるを得ません。小説を書けなくなって死を選ばざるを得なくなったということは事実なのだと思います。三鷹市下連雀、井の頭公園など、現住所の近くの出来事ばかりであり、ひと事とはおもえないような臨場感を感じました。

  • 斜め読みながら面白かった。井伏さんはやっぱりいい人だった。

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著者プロフィール

長部日出雄(おさべ ひでお)
1934年9月3日 - 2018年10月18日
青森県弘前市出身の小説家、評論家。故郷である津軽についての小説、エッセイを多数刊行。
早稲田大学文学部哲学科中退。1957年『週刊読売』記者に。その後退職し、雑誌『映画評論』編集者、映画評論家・ルポライターを経て、作家になる。
1973年『津軽じょんから節』『津軽世去れ節』で第69回直木賞、1979年『鬼が来た-棟方志功伝』で第30回芸術選奨文部大臣賞、1986年『見知らぬ戦場』で第6回新田次郎文学賞をそれぞれ受賞。2002年『桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝』により第29回大佛次郎賞・第15回和辻哲郎文化賞を受賞。紫綬褒章受章。
それ以外の代表作に『天皇はどこから来たか』『「古事記」の真実』など。2018年10月18日、虚血性心不全のため死去。

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