- 本 ・本 (104ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163208503
感想・レビュー・書評
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林あまりさんの歌集ですね。
林あまりさん(1963年、東京生まれ)歌人、エッセイスト、作詞家。
なんと、一週間で詠えあげた歌集だそうです。
三ヶ月かけて、詠んだ短歌がどうやら設定ミスで「この短歌…、全部駄目だ!使いものにならない!」と気付いて、歌集出版の締切一週間前に、「大変なスピードで、私は書きました。五日経ち、作品は百首以上になっていました。」とあとがきで語られています。
つまり、この歌集は実体験ではなく、主人公の設定があるドラマ化された歌集のようです。
短歌の成り立ちがそうであっても、詠み人の内面から産まれた歌であるから良いのだとは思います。
わたしのからだの重さをいつも知ってきた
たったひとりのこの腕と胸
約束はいつでも次の季節まで
「春になったら植物園へ」
お湯から先に上がったあなたはもう冷えて
猫のわたしがあたためている
仕事がちっともはかどらなくて鉛筆を投げる
しばらく木枯らしを聞く
海を見るためだけに乗るモノレール
カーブのたびに青が濃くなる
そこからが思い出せない見も知らぬ
路地を曲がった夢のその先
抱いていた猫を下ろせばまず胸が
冷えてきて冬がまた来る
むかしむかしの春の歌ひとつ教わって
くちずさむうち ねむたくなった
短歌を詠むことに悦びを味わう作者の息づかいが感じられます。一晩で三十首詠まれた事もあって出来上がった歌集です。恋歌の歌が多いです。さすが、プロの芸術家はセンスが違いますね。林あまりさんの歌集は、女性に人気が有るそうですが、頷けます。
恋歌は、私には余り縁が有りませんが、湿り気が無いあっさりとした短歌は、読んでいて頷けました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表紙が可愛い、さすが文芸春秋。短歌が可愛い、さすが林あまり。「橇に乗り銀いろの森こえてゆく目を閉じてあと十五分だけ」「約束はいつでも次の季節まで「春になったら植物園へ」」「そこからが思い出せない見も知らぬ路地を曲がった夢のその先」
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歌集は好きで時々読みたくなる。この「スプーン」も心地よかった。
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うーん…。
これは短歌というよりキャッチコピーではないかな…。
不倫(おそらく)や、冷血そうな友達の夫など、設定の面白さに頼ってしまって、肝心の短歌が説明になっているように感じた。
「時計の針はあんなに動いて
この書類ちっとも理解できないままだ」
とか、そうなんだ、としか…。
「くちづけで起こされるのはいい気持ち
朝ならもっとうれしいだろう」
などは、その後ろに背景が広がって見えて良いなと思ったのだけど。
もちろん、説明し尽くされるのが好きな人もいるだろうから、私の好みではなかった、という話。 -
あまり、どきっとした言葉はなかった。
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たったの二行から、広く鮮明な情景が複雑で繊細な心が生まれる。
きれい。
「ひとの手のかかった食事は今夜はつらく レトルトシチューあたためている」
「海を見るためだけに乗るモノレール カーブのたびに青が濃くなる」
「入院の母にこっそり食べさせる カップのアイスがなかなか溶けない」
「視力がおちてきたのか あなたを見失う距離がこのごろ短くなって」
「何時間でもゆっくり抱いていてくれる 優しさは目に見える曲線」 -
#12 愛の歌集
一冊の本をあなたと眺めている
少女の頃にしたかったこと -
夜桜お七作詞。なんだか官能的。「すき、すき、とうごかしながらくちびるをあなたにすべらす声は出さずに」「日程を決めない限りかなわない大人の遊びはどれひとつとして」「少しずつ紡がれている関係は居心地がいい恋ではないが」
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表紙につられて。
少女のような歌と、大人の寂しさのような歌がまざってて面白かった。
口語の分かりやすい歌。ストレートすぎて好みではなかった。でもいくつか好きなのもあった。
林あまりの作品





