スプーン 林あまり歌集

  • 文藝春秋 (2002年4月10日発売)
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  • 本 ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163208503

感想・レビュー・書評

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  • 林あまりさんの歌集ですね。
    林あまりさん(1963年、東京生まれ)歌人、エッセイスト、作詞家。
     なんと、一週間で詠えあげた歌集だそうです。
    三ヶ月かけて、詠んだ短歌がどうやら設定ミスで「この短歌…、全部駄目だ!使いものにならない!」と気付いて、歌集出版の締切一週間前に、「大変なスピードで、私は書きました。五日経ち、作品は百首以上になっていました。」とあとがきで語られています。
     つまり、この歌集は実体験ではなく、主人公の設定があるドラマ化された歌集のようです。
     短歌の成り立ちがそうであっても、詠み人の内面から産まれた歌であるから良いのだとは思います。

     わたしのからだの重さをいつも知ってきた
       たったひとりのこの腕と胸

     約束はいつでも次の季節まで
       「春になったら植物園へ」

     お湯から先に上がったあなたはもう冷えて
       猫のわたしがあたためている

     仕事がちっともはかどらなくて鉛筆を投げる
       しばらく木枯らしを聞く

     海を見るためだけに乗るモノレール
       カーブのたびに青が濃くなる

     そこからが思い出せない見も知らぬ
       路地を曲がった夢のその先

     抱いていた猫を下ろせばまず胸が
       冷えてきて冬がまた来る

     むかしむかしの春の歌ひとつ教わって
       くちずさむうち ねむたくなった

     短歌を詠むことに悦びを味わう作者の息づかいが感じられます。一晩で三十首詠まれた事もあって出来上がった歌集です。恋歌の歌が多いです。さすが、プロの芸術家はセンスが違いますね。林あまりさんの歌集は、女性に人気が有るそうですが、頷けます。
     恋歌は、私には余り縁が有りませんが、湿り気が無いあっさりとした短歌は、読んでいて頷けました。

  • かなり好き!生活の中に潜んだネガティブもさっぱり詠んでしまう感じが心地いい。するする読めたけど、時折どきっとさせられる歌もあって読み応えもある。

    ・ていねいにクリームを塗る夜があり/なんにも塗らずに寝てしまう夜も
    ・忘れていた宝石箱の忘れていた指輪/古代の骨のようにも
    ・日程を決めない限り かなわない/大人の遊びはどれひとつとして
    ・月は好き 手ざわりなんてないのだし/距離を保った友人のよう
    ・ほんのりと好きな男にほんのりと優しく返され/それだけのこと
    ・ともだちの娘は会うたび美しくなり/ともだちは痩せてゆく しあわせそうに
    ・どう? わたし身長一六〇センチ/いじめられたりしない大人よ
    ・会える日は化粧を落とす/頰と頬へだてるものはなにもいらない
    ・何時間でもゆっくり抱いていてくれる/優しさは目に見える曲線
    ・そのひともわたしも口にしなかった/結婚はいつも他人のものだ

  • 表紙が可愛い、さすが文芸春秋。短歌が可愛い、さすが林あまり。「橇に乗り銀いろの森こえてゆく目を閉じてあと十五分だけ」「約束はいつでも次の季節まで「春になったら植物園へ」」「そこからが思い出せない見も知らぬ路地を曲がった夢のその先」

  •  歌集は好きで時々読みたくなる。この「スプーン」も心地よかった。

  • うーん…。
    これは短歌というよりキャッチコピーではないかな…。
    不倫(おそらく)や、冷血そうな友達の夫など、設定の面白さに頼ってしまって、肝心の短歌が説明になっているように感じた。
    「時計の針はあんなに動いて
     この書類ちっとも理解できないままだ」
    とか、そうなんだ、としか…。
    「くちづけで起こされるのはいい気持ち
     朝ならもっとうれしいだろう」
    などは、その後ろに背景が広がって見えて良いなと思ったのだけど。
    もちろん、説明し尽くされるのが好きな人もいるだろうから、私の好みではなかった、という話。

  • あまり、どきっとした言葉はなかった。

  • たったの二行から、広く鮮明な情景が複雑で繊細な心が生まれる。
    きれい。



    「ひとの手のかかった食事は今夜はつらく レトルトシチューあたためている」

    「海を見るためだけに乗るモノレール カーブのたびに青が濃くなる」

    「入院の母にこっそり食べさせる カップのアイスがなかなか溶けない」

    「視力がおちてきたのか あなたを見失う距離がこのごろ短くなって」

    「何時間でもゆっくり抱いていてくれる 優しさは目に見える曲線」

  • #12 愛の歌集
    一冊の本をあなたと眺めている
    少女の頃にしたかったこと

  • 夜桜お七作詞。なんだか官能的。「すき、すき、とうごかしながらくちびるをあなたにすべらす声は出さずに」「日程を決めない限りかなわない大人の遊びはどれひとつとして」「少しずつ紡がれている関係は居心地がいい恋ではないが」

  • 表紙につられて。

    少女のような歌と、大人の寂しさのような歌がまざってて面白かった。

    口語の分かりやすい歌。ストレートすぎて好みではなかった。でもいくつか好きなのもあった。

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