蒼龍

  • 文藝春秋 (2002年4月12日発売)
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本 ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784163208602

感想・レビュー・書評

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  • 目次
    ・のぼりうなぎ
    ・節分かれ
    ・菜の花かんざし
    ・長い串
    ・蒼龍

    読んでいるうちに、泣きそうになる。

    例えば新しい職場で右も左もわからないというのに、誰もかれもが知らんふり。
    それでも、自分の力で仕事を覚え仲間を作っていくしかないのだ。
    そして自分という人間を分かってもらうしかない。時間がかかろうと。(のぼりうなぎ)

    例えば時代の流れに逆らうように、頑なに節を曲げずに商売をする父の真情を知った時、父はこの世にはもういない。
    これからは自分が父のように、すべてをひとりの肩に担わなければならない。
    そう気負った心に、父が遺した歌が…。(節分かれ)

    例えば家名を重んじ武士として生き、死ぬことと、家族を守るために生き、死ぬこと。
    これが両立できないとき、自分はどうするべきなのか。(菜の花かんざし)

    どれも単純にハッピーエンドだったり、悲劇だったりするわけではない。
    辛い気持ち、楽しい思い、悲しみ、いろいろまじりあった感情が、なぜか「泣きそう」を連れてくる。

    表題作は、何度も投稿しては落選を続けた著者ならではの作品。
    主人公の心の動きが実に説得力を持って迫ってくる。
    面白かった。

    好きなのは「長い串」
    江戸から国に帰る殿に従う道中奉行。
    江戸留守居役・森勘左衛門はまだ若い吉岡徹之介をその大役に推薦したが、雨で川留めをくった時天領で藩士と町人が相撲を取ったことで大目付に呼び出される。
    天領で相撲=お上をバカにしてるのか!ってこと。
    徹之介が詰め腹を切らないと藩がお取りつぶしになるかもしれない。しかし…。
    こんにゃくを三角に切って串に刺しておでんにする。
    その串が、解決の道を開くのだ。
    うん、これはいい話だ。

  • コネがものをいう

  • 大借金を抱えた大工が起死回生を狙って茶碗の
    新柄の公募に挑んだ。その顛末は?
    表題作と、最新の中篇4作を収録。

  • 江戸時代の職人、商人、武士の日々の生活に生きる人々の中に、喜びや悲しみを淡々と書いている はらはらドキドキする展開に、時に笑い時には涙して読み終えた。清々しさが残った 

  • のぼりうなぎ、節分かれ
    菜の花かんざし、長い串、蒼龍の五篇。

    少し読みにくいところもあるけど、だんだん面白くなってきたところで終わってしまうのが何とも残念。

  • 短編集で「菜の花かんざし」「長い串」が武家物、「のぼりうなぎ」「節句分かれ」「蒼龍」が町人物。
    それぞれ作品としてはいいんだけど、どうも重苦しい。一応はハッピーエンドの方なのにすっきりしない。哀感を残すって意図かな(笑)
    わりと好きだったのは「長い串」、好きになれなかったのは「のぼりうなぎ」だけど全く個人の好み。時代小説としてのレベルは高い。

  • 山本一力強化月間ということで、評価の高いこの作品を読書。
    借金に追われる大工、手代として老舗の改革を任された指物職人、武士や商人、職人など様々な人にスポットを当てた作品集。
    借金苦や藩同士の諍い、苦境に立たされた商人など様々な問題に直面する人々の奮戦ぶりがとても痛快な作品ばかり。どの作品もそれぞれ情に溢れていて、読後感もいいものばかりでした。幾つかもう少し話を続けて欲しいという作品もあったけど、余韻を残すという意味でもありなのかなぁと感じました。

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著者プロフィール

1948年高知市生まれ。都立世田谷工業高校卒。旅行代理店、広告制作会社、コピーライター、航空関連の商社勤務等を経て、97年「蒼龍」でオール讀物新人賞を受賞。2002年『あかね空』で直木賞を受賞。江戸の下町人情を得意とし、時代小説界を牽引する人気作家の一人。著書多数。

「2023年 『草笛の音次郎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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