神のロジック・人間のマジック (本格ミステリ・マスターズ)

  • 文藝春秋 (2003年5月27日発売)
3.43
  • (18)
  • (51)
  • (67)
  • (13)
  • (4)
本棚登録 : 285
感想 : 62
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163218403

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 〈学校〉と呼ばれる建物で寮生活を送る6人の少年少女たち。奇妙な〈実習〉に教師達の不可解な行動。
    ここはいったいどこで、何が行われているのか?
    やがて、〈学校〉に新入生が入ったことをキッカケに事件が起こる…

    文藝春秋の創業80周年記念事業の1つとして始まった「本格ミステリ•マスターズ」の一冊。
    「自分が書きたかったのはこれだという手応えを感じました」と作者。アメリカ留学して学んだ創作技術や異国の地で感じた孤独感が活かされている模様。
    同時期に刊行された某作品と類似点があるが、あちらはそれがメイントリックなのに対して、こちらはメインの謎に繋がるサブ的要素に位置付けられていると感じた。メインは作者お得意の“ディスカッションによる推理”で、探偵役が入れ替わりながら延々とディスカッションを繰り返して推理合戦する様が実に面白い。

    舞台となる〈学校〉はいったいどんな目的で設立されたのか?秘密探偵養成所?前世人格再現能力者研究所?はたまたヴァーチャルワールドか?
    生徒らが繰り広げる推理は一見飛躍しているようにも思えるが、事実と仮説をベースに組み立てられるロジックはいちいち説得力があり、ついその気になってしまう。

    さらに、終盤押し寄せる怒涛の展開は息つく暇もなく、圧倒された。〈学校〉の真相は、若干無理筋ではあるものの伏線はしっかり張られていて膝を打つ。犯人の動機はよくわからなかったが、“実習”の目的には笑ってしまった。

    本格ミステリ・ベスト10 6位

  • 約束のネバーランドっぽくて面白かった。
    ほんタメでたくみさんが、徹夜で読みたいミステリ3選(一気読み推奨)で紹介していて読んだ。
    たしかに、特に最後の方は、この学校の謎が知りたくて夜更かしして一気読みだった。

  • 「神のロジック・人間のマジック」
    謎のスクールに集められた僕。


    <blockquote>ここはどこ?何のために?世界中から集められ、謎の“学校”で奇妙な犯人当てクイズを課される〈ぼくら〉。やがてひとりの新入生が〈学校〉にひそむ“邪悪なモノ”を目覚めさせたとき、共同体を悲劇が襲う。</blockquote>


    ちょっと約束のネバーランドに似ている。勿論こっちが先なんだが、近いものがある。


    日本の神戸からやってきた僕が、国籍の異なる同い年の仲間達と共に学校寮で生活する。僕と仲間の生活は悪くない。学校には定期的に仲間がやってくる。毎日実習と講義があるが、それもやりごたえがある。しかし、邪悪な何かが、学校を揺るがすことになる。うん、似ているでしょう?


    しかし、これは西澤保彦のミステリー。それも神のロジックに人間のマジックだ。タイトルが既に匂わせている。芸能人が匂わせ写真をアップするあれくらいの匂わせ度である。間違いなく気づいて欲しいやつだ。


    しかし、気づけなかった。違和感はあったが、ずばり!と気づけなかった。終盤までに色々伏線は張られてるし、僕を始めとする探偵団も色々推理して、邪悪なモノをあぶり出そうとする。しかし、謎をずばっと指摘!ってなんないんだよなーと。


    ころりと騙されるか、ずばり!と謎を解けるかはあなた次第。

  • 学校内で生活させられてる6人の生徒達。
    寮長、学校長等に見られながら、授業を過ごしているが、この学校の真意は?
    という話やけど、読了後の感想はうーん。

    中盤、学校の存在意義やなぜこの学校に入れられたのかという謎でどんどん読み進めるけど、最後の謎解き部分があんまりだった。
    ネタバレなるから言えないけど、このオチは、もっとすごい別の作品あるしなぁー。

    予想は裏切られる内容だったけど、衝撃を受けるほどでもないし、被害者達が殺される理由もよくわからない。
    ラストも切なさが漂ってるけど、おい、これで終わりかい!となってしまった。

    とにかく設定が重いのと、外人の名前が出てくるに加えて主人公があだ名をつけてることがややこしさを増し、誰が誰か分からない。
    このあだ名の意味あるんかな?

  • 2.0

  • 明かされる真相よりも、主観的な事実が客観的事実に置き換わることが印象に残った。必ずしも多数派が正常で、少数派が異常とは言えない。自分が当たり前のように現実に起こることだと思っていることが実は何の根拠もなくて、他人から見てみれば幻想や妄想の範疇でしかないのかもしれない。

  • #読了
    序盤のひたすな設定の説明の連続は流石にいつまで続くんだ…と思いながら読んでたし、絶対誰もが思うであろう「約ネバ?」ともなりはしたけど、中盤以降は世界観に引き込まれていった。
    本当に神のロジック人間のマジックだわ…
    もう身近な事で考えてもこの理論は全然破綻してないと思う。

  • 以前同じ著者の『七回死んだ男』を読了できないままで放置していたのだが、同じ著者だとは気が付かずに読んでいた。

    なんというか、ミステリーだが、ミステリーではないという感じ。トリックを楽しむ小説ではなく、では何が面白いのかと言われるとなんとも言えない。空間が作られた理由と、なぜ登場人物たちが選ばれたのかということを考える楽しさはあると思う。また、それぞれの登場人物が考察した内容を読むことも、面白さの一つだと思う。

    ただ、手材料が少なくてどうもわからないところで、いきなりどんでん返しが来る。少し古い小説なので、どこかで見かけたことがあるような気もするが、伏線もうまく利用していて驚きは十分にあった。かなり楽しめたが、施設が作られた理由があまりにもあけすけで、笑ってしまった。

    ミステリーだけど、頭を使わないで読むことができた。作品を通してのテーマも考えさせられるもので、非常に良かった。

    完璧余談だが、先日(1/24)に本屋に行ったら新装版がかなり大きく紹介されていた。手に取りやすいと思うので、おすすめできる。

  • 序盤は退屈でしたが、登場人物達が全く知らない隔離された場所で新入生との共同生活が始まると、堰を切ったかのように惨劇が始まります。連続殺人の緊迫感とホラー的な恐怖が、物語をスリリングにしています。
    そして明かされる真相の衝撃は、全てを崩壊させてしまう破壊力で、実に強烈です。さらに、その後に待ち受ける何とも切ない結末も良かったです。
    ただ、別の作家の某作品が全く同じネタで、それも同じ時期に同じ出版社から出版されました。その某作品と比べると強引な展開で粗さが目立ちました(出版社のせい?)。

  • 学校と呼ばれる社会から隔離された謎の施設での生活。
    何の目的で集められたのかわからない6人の生徒たち。
    記憶の欠落、ふと感じる違和感、不可解な日常の出来事などから思案し、仮説を立て、自分たちの現状を理解しようとします。
    一見、平穏に見える日々。実のところは微妙なバランスで成り立っている。

    足元を根こそぎすくってしまうようなストーリー展開。
    完全なるフィクションですが、信じられないのは自分自身というか、読者のみならず登場人物も欺く展開は驚きです。

    面白かったのですが、、、本の後半にインタビュー等のページが結構あるため、衝撃的なラストの場面を読みながらも、「まだ何かあるのか?!」と二転三転を期待してしまい、ちょっと肩透かしをくらった気分でした。

全62件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西澤保彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×