こんなもんじゃ 山崎方代歌集

  • 文藝春秋 (2003年6月25日発売)
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  • 本 ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163219707

感想・レビュー・書評

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  • なんでこんなに沁みるんだろ。
    山崎方代(やまざき・ほうだい)さんは、今の山梨県に生まれ、定職に就かず、生涯独身を通した歌人。
    方代、という名は、子を次々に亡くした方代さんのご両親が「生き放題、死に放題」の意味から取って付けたとされているそう。

    方代さんの歌には、孤独が満ちている。
    でも、しばしば、他のものの気配を鋭敏に感じていたよう。
    その他のものとは、土瓶や、石や、夕日や、こおろぎだ。
    方代さんの歌の中ではほとんどの他のものが「笑って」いることが驚くほど多い。
    なんで笑っているんだろう。
    人間は可笑しくても笑う。寂しくても笑う。悲しくても笑う。
    でもやっぱり、方代さんは可笑しくて、それらの他者を「笑って」いるとしたのではないだろうか。
    生きてるって、可笑しいね。老いて死ぬって可笑しいね。
    方代さんの歌から、私はそう感じた。
    究極の生命賛歌だと思う。

    <人生はまったくもって可笑しくて眠っている間のしののめである>

    • ☆ベルガモット☆さん
      5552さん、こんばんは!

      お名前はどこかでお見かけした気がしますが、特集があったのかなあ。
      名前の由来はご両親の想いがこめられてま...
      5552さん、こんばんは!

      お名前はどこかでお見かけした気がしますが、特集があったのかなあ。
      名前の由来はご両親の想いがこめられてますね。
      孤独が満ちている、生命賛歌気になります!
      こちらも図書館にありましたので読みたい本リストに追加します☆
      2023/02/15
    • 5552さん
      ベルガモットさん、こんにちは。

      以前読んだ本で、西加奈子さんが、方代の<茶碗の底に梅干しの種二つ並びおるああこれが愛と云うものだ>とい...
      ベルガモットさん、こんにちは。

      以前読んだ本で、西加奈子さんが、方代の<茶碗の底に梅干しの種二つ並びおるああこれが愛と云うものだ>という歌を好きな歌として挙げられていたんです。方代の歌は「洒落た小料理屋の掛け軸で見る感じ」とか何とか、仰られてたかな。
      こちらの本のプチエッセイで中野翠さんが書かれていたんですが、短歌というより俳句っぽい感じ、飄々としたイメージもありました。
      読みたい本に追加ありがとうございます。いつかベルガモットさんのレビューを読めることを願ってます!
      2023/02/16
  • 5552さんのレビューで出会うことができました。ありがとうございます!
    茶碗や土瓶などの日常的なものや石ころ、雨や月、雪、花などの自然を詠った歌、年齢を交えた歌など、等身大のぬくもりを感じるような歌が多い。元気のないときにほっとするような応援歌のように思えてくる。散文のようで平易な言葉なのにちゃんと短歌になっていて説得力がある。
    巻末に『方代・私の一首』として山吹色の台紙にカバー絵の東海林さだおさんや俵万智さん、谷川俊太郎さんらによる解説が掲載。

    年譜より抜粋~
    1914年大正3年山梨県現中道万智右左目生まれ、八人兄姉の末っ子。27歳(昭和16年)入隊、一等兵となり台湾、マレー等南方を転戦。29歳時チモール島戦闘で砲弾片を受け右目失明、左目も視力低下している。病院船で帰還後十代から始めていた作歌を再開。靴修理、歯科技工の手伝い、雑用農作業など転々とする。41歳第一歌集『方代』自費出版、翌年『短歌研究』へ総合短歌誌初の掲載。60歳第二歌集『右左口』、66歳第三歌集『こおろぎ』刊行。その後自選歌集や随想集を刊行している。肺がんによる心不全のため70歳死去。

    特に心に響いた歌
    <いつまでも転んでいるといつまでもそのまま転んで暮らしたくなる>
    <戦争が終った時に馬よりも劣っておると思い知りたり>
    <植木鉢かかえてあげればそこだけがぽっかり黒く口あけている>
    <こんなにも赤いものかと昇る日を両手に受けて嗅いでみた>
    <一生に一度のチャンスをずうっとこう背中まるめて見送っていた>
    <声をあげて泣いてみたいね夕顔の白い白い花が咲いてる>
    <ふりむくと己れの影がついて来る月かげなれど味方でもある>
    <縄跳びの赤い夕日の輪の中に少女が十字を切っている>
    一首目の本歌取りを詠んでみました。
    いつまでも眠っていたいいつまでもそのまま眠っていたい月曜
    (☆ベルガモット作☆)

    • 5552さん
      ☆ベルガモット☆さん、おはようございます♪
      この歌集、読まれたんですね!
      方代さんは、読みやすいし、分かりやすいし、☆ベルガモット☆さん...
      ☆ベルガモット☆さん、おはようございます♪
      この歌集、読まれたんですね!
      方代さんは、読みやすいし、分かりやすいし、☆ベルガモット☆さんのおっしゃる通り説得力あるし、すごいなと思いました。
      皆さんに彼の短歌が愛されているのも、よく分かりました。
      本歌取りされた歌、素敵です。
      リフレインに切実さと、ほんのちょっとユーモアを感じました。
      方代さんの歌と構造が同じなんですね〜。
      勉強になります。
      2023/06/15
    • ☆ベルガモット☆さん
      5552さん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます!
      わかりやすいけど真似できない方代さんの世界観がじんわり伝わってきます。方代研...
      5552さん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます!
      わかりやすいけど真似できない方代さんの世界観がじんわり伝わってきます。方代研究会というものもあるらしく、ほんと、愛されてますよね。5552さんのレビューのおかげで興味持てました。ありがとうございます☆
      本歌取り評も嬉しいです!ネタ切れしてきているので、素晴らしい歌の構造を学ぶ練習になる気がします。
      2023/06/15
  • 名前といくつかの歌は知っていた。ここには413首あるという。技巧を駆使する人ではない。普段遣いの言葉で詠んでいるのに、不思議な力がある。急にどこかに連れ去られたり、自分に矛先を向けられたり。生涯独りだったけれど周りはにぎやかなようにも思える。「しまう」「しもうた」の結句は泣き笑いの感じ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「不思議な力がある。」
      ふ~ん。。。読んでみたくなりました!
      「不思議な力がある。」
      ふ~ん。。。読んでみたくなりました!
      2013/03/05
    • 丘村さん
      コメントありがとうございます!普段使いの言葉ばかりなのに、他の人より真っ直ぐ届く感じです。日本語が楽しくなります^^
      コメントありがとうございます!普段使いの言葉ばかりなのに、他の人より真っ直ぐ届く感じです。日本語が楽しくなります^^
      2013/03/05
  • 山崎方代の短歌を文芸春秋の編集部がテーマごとに編んだアンソロジー。かつて方代は文芸春秋に原稿を持ち込んだことがあり、その時は相手にされなかったそうだから、このようなアンソロジーが編まれたことをお墓の下でどう思っているだろうか。「こんなところに釘が一本打たれいていじればほとりと落ちてしもうた」「留守という札を返すと留守であるいつでも留守の方代さんなり」「一本の傘をひろげて降る雨をひとりしみじみ受けておりたり」「もう姉も遠い三途の河あたり小さな寺のおみくじを引く」「声をあげて泣いてみたいね夕顔の白い白い花が咲いてる」「遠い遠い空をうしろにブランコが一人の少女を待っておる」

  • 泥くさく楽しく切ない短歌の本。


    こおろぎが一匹部屋に住みついて昼さえ短いうたをかなでる

    いつまでも転んでいるといつまでもそのまま転んで暮らしたくなる

    それもまた忘れさられてゆくものかことりことりと土を踏む音

    こんなにも赤いものかと昇る日を両手に受けて嗅いでみた

    いつまでも握っていると石ころも身内のように暖まりたり

    大切な一日である起き出して冬の空気をはりたおす

    一生に一度のチャンスをずうっとこう背中をまるめて見送っている

    飛行機のプロペラの音高ければ見えぬ眼をもて空仰ぐ父

    声をあげて泣いてみたいね夕顔の白い白い花が咲いている

    なるようになってしもうたようである穴がせまくて引き返せない

  • 図書館から借りました

     短歌集。
     「首」に入っていた短歌も入っているが、それ以外もある。
     発行は2003年。
     首は1981年だから、こっちの方が圧倒的に新しい。

     ここで気に入ったのは。
    「へり少し こぼれておれど この壺の つぼの姿勢は 常に正しい」

     色紙に書きたくなるような言葉ですね。
     この人の短歌はお日様の匂いと、土の匂いが濃いのです。

  • 本当にさりげない言葉なのに、はっとさせられ、胸を突かれる歌ばかり。
    自分を振り返らせられる歌集です。
    手元に置いて、時々パラパラと捲りたい一冊。

  • 「丸出しの甲州弁で申します花は死であり死は花である」

  • ひとりが染みこむ短歌集
    小さな絵本屋さんおすすめ

  • 言葉では説明できない衝撃を受けた歌集。

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