- 本 ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163220109
感想・レビュー・書評
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いい本です。
今、苦しさの只中にいて、「頑張れ、頑張れ」と力強く励まされるよりは
隣にすわって肩をぽんぽん、と静かにたたいてほしい人。
ビュービュー空気をかき回すハイテクエアコンの温風ではなくて
小さなろうそくに灯った炎で、ゆっくり心をあたためたい人に。
目次の隣の頁に、ドラえもんの腕時計の写真が載っているのですが
私は幼いころ、同じ年頃のお友達ほど、ドラえもんが好きではありませんでした。
『赤毛のアン』とか『若草物語』が大好きな、西洋かぶれの女の子だったからかもしれません。
でも、大人になって、今、この本を読んだあとに
ふすまの前で寛ぐドラえもんとのび太を見ると、なんだかしみじみと涙がこぼれます。
ささやかな普通の暮らしの中で、寄り添って生きる幸せが溢れるようで。
収録された5つの短編を、よしもとばななさんはあとがきで
「どうして自分は今、自分のいちばん苦手でつらいことを書いているのだろう?」
と思いながら書いた、つらく切ないラブストーリーばかりです、と綴っているけれど
私には、包み込まれるような、温かい印象が残りました。
つらい出来事が起こっても、そっと傍に来て思い遣りに満ちた言葉をくれる人がいて
沈み込みそうになる主人公の心を揺るぎない日常に引き戻そうと
突拍子もない行動に出る人がいて。
男とか女とか、大人とか子供とか、そんなことは関係なく
大切な誰かと、ただ寄り添ってこつこつと生きるのが、どんなに尊いことか。
出産を控えての執筆だったというよしもとばななさん。
新しい命を迎えるために、つらい記憶を物語の世界に解き放ち
空いたところにきれいな空気をいっしょうけんめい吸い込もうとしているような一冊です。 -
辛くても人は生きる。
デッドエンドの思い出: 名作。婚約者に裏切られたミミ。傷心の彼女を救うのは雇われ店長西山。
幽霊の家:大家夫婦幽霊が縁
お母さん: 毒物混入事件
温かくなんかない:男友達 -
読んだのはけっこう前だけど、江國香織さん的な気品を感じたと思う。
おもしろかった。と、お金持ちだなぁーとちょっと距離置いちゃうような感覚があったような。
けど読み返したいくらい素敵だった記憶。 -
切ない中に温かさと希望を感じられる、恋の思い出短編集。すごく良かったです。
全編どこか不思議な感じがする。個人的におかあさーん、デッドエンドの思い出がすごく好きで、主人公の心の叫びと浄化、人との関わり方など変に暑苦しくなく、人と人との出会いやタイミングなど運命に対する独特の解釈も読んでいて素直に受け取れました。素敵な本です。 -
作者いわく辛く切ないラブストーリー短編集らしい
確かにどれも不穏
はじめてだけど読みやすいなよしもとばなな -
たまにこういう小説に出会えるから、読書っていいよなあって思われせてくれる本。
どれも切ない話だけど、小さな救いがあって、僅かに希望を感じられるところが、今生きてる日常にマッチしてて良かった。
2020.9.20 -
少し前に観たグレーテルのかまどの「よしもとばななのロールケーキ」の題材がこの小説に収録されている「幽霊の家」で、懐かしいと思って10年ぶりに本棚から出して読んでみました。
よしもとばななさんの小説に出てくる登場人物って、普通の人に見えるし実際普通の生活を送っているのだけど実は過去に特殊な経験をしているっていうパターンがけっこうあって、その悟りを開いたかのような人物に傷ついた主人公が癒されていくお話が多いと思う。
それで、それを読んでいる自分もいつの間にか癒されている。意識していなかった過去の傷に優しく触れられているような。
失恋だとか、人との関係で傷ついたりして、でもその傷を癒してくれるのもまた人だったりする。
描かれているのはそういう普遍的なことだけど、何が自分にとっての幸せなのかを考えたり気づいたりするのって、傷や挫折から再生するときなんだなと改めて思った。普遍的だからこそ、そう思えたのかもしれない。
自分が深く傷ついたとき、自暴自棄になって自分を大切にしていなかったかもしれない、という過去の経験があるのだけど、その頃のことを思ったとき、無理に自分を動かしたところで傷が癒えるわけもなくて、時には思い切り弱音を吐いて休むことも必要なのだと、この本を読んで思った。
忘れて乗り越えたつもりでいても、実はずっと引っかかってることも、たくさんあるのだと思う。
そういう様々なことが、人との出逢いでふっと解ける瞬間があって、この小説にはそういったことが描かれている。
時を置いての再読はやはりいいものだと思いました。
10年前の私は、どんな風にこの小説を読んだのだろう。 -
ばななさんがあとがきに書いていた
なにひとつ自分の身に起きたことなんか書いてないのに、なぜか一番私小説的な小説ばかり と、
私もなぜかそう感じた。私のようだと。
不器用で、何もわかってなくて、自己肯定感の低かった若かりし日々を暖めてくれるような、そんな読了感。
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切ない物語が詰まった短編集。どれもそこそこ面白く個人的にはハッピーエンドな「幽霊の家」とアンハッピーエンド?な「あったかくなんかない」が好きです。
読み始めるとすぐに物語に引き込まれ、話につながりは無いので短編ごとにスラスラと読めました。
ツグミ以来のよしもとばなな作品でしたが、やっぱりいいですね
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「キッチン」や「TUGUMI」の揺るぎもすごく好きなんだけど、この痛みは女性ならきっと知り得るもの。明らかな状況を重ねて共感するんじゃないのに泣けてしまう。ばななさんはそれぞれ女性の持つ心の襞を知っている。恋人を取られました、捨てられました、大切な人が死にました、どれだけ傷付けられても他人と離れることはできなくて、他人の力で回復していくしかない。
著者プロフィール
よしもとばななの作品






アンソロジーの中にあった『あったかくなんかない』があまりに素晴らしくて
この短編が収められた本は絶対読まなきゃ!と思って...
アンソロジーの中にあった『あったかくなんかない』があまりに素晴らしくて
この短編が収められた本は絶対読まなきゃ!と思って借りてきたんです。
もう、紹介してくれたアンソロジー、ありがとうー!!!
と声を大にして叫びたくなるような本でした。
ばななさんは、ずうっと前に『キッチン』と『つぐみ』を読んだきりだったんですが
円軌道の外さんが最も影響を受けた作家さんとあらば、より張り切って読まなければ!
薦めてくださった本、図書館で探してみますね(*'-')フフ♪
こちらこそ、これからよろしくお願いします(^O^)
おお!本の感想を語り合いたくて、ブクログにいらっしゃったんですね。
私も、同じ気持ちで去年の3月にブクログを始めたので、と...
おお!本の感想を語り合いたくて、ブクログにいらっしゃったんですね。
私も、同じ気持ちで去年の3月にブクログを始めたので、とてもうれしいです♪
益田ミリさんも、よしもとばななさんも、ニノミィさんの本棚やレビューを参考に
わくわくしながら開拓していこうと思っています。
本のことでおしゃべりしたくてたまらなくなったら
ぜひまた声をかけてください!
私もニノミィさんの本棚に、せっせとおじゃましようと思っているので(*'-')フフ♪