イッツ・オンリー・トーク

  • 文藝春秋
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感想 : 126
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  • 本 ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163226309

感想・レビュー・書評

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  • 糸山さんのデビュー作。
    ぜんぜん本筋(本筋があればの話だけど。なんせイッツオンリートクなんで)とは関係ない部分でなんか泣きそうになった。

    元ヒモでギャンブラーのいとこが自殺しようとしているのを電話で叱咤して、呼び寄せて空港で到着を待っているシーン。

    「行き交う人たちはとてもまっとうで、自殺未遂のいとこを迎えに来ていることがなんだかとてもくだらない、それでもじっとしていると体が震えるようだった。早く来い、早く姿を見せろ、と思った。」←混乱までいかない素直な戸惑いの気持ちや緊張感や優しさが溢れていていい文章だと思いました。

  • 絲山さんの作品をランダムに読んでいるが、処女作を読んでいないことに気付き読む。
    タイトル作はまだ粗々しさを感じたが、自身の経験が反映されていてルーツ・オブ・イトヤマという感じがした。
    同時収録されている「第七障害」は、基礎が整ってきた印象。愛馬の死を責めている主人公が、徐々に受け入れて様が描かれていた。
    調教師柴田の「生きているものは必ず死ぬんだよ」という言葉が心に残った。

  • 「第7障害」がよかった。
    忘れなくていい、が心に響いた。

  • 精神病院に入院していたことのある35歳の優子。彼女の周りにいる男たちはへんてこな人ばかり。
    EDの議員議、鬱病のヤクザ、元ヒモの選挙ボランティア、紳士的な痴漢(合意の上でおこなう)、前歯に泡を溜めながら喋る同級生。

    その場の流れで男女の関係になることもあれば、一目見た瞬間にこの男とは寝ないなと判断することもある。男がEDの場合もある。関係性は色々だ。

    死んでしまった友人を想う。運転しながら音楽を聴く。絵を描く。何をしていても時間は進み、年月が過ぎていく。

    さざなみみたいに穏やかな、グッドな小説だった。

  • 引越しの朝、男に振られた。
    東京・蒲田―下町でも山の手でもない、なぜか肌にしっくりなじむ町。
    元ヒモが居候、語り合うは鬱病のヤクザに痴漢のkさん。
    いろいろあるけど、逃げない、媚びない、イジケない、それが「私」、蒲田流。
    (アマゾンより引用)

    よく分からん

  •  かつて精神病を患い、今は蒲田で絵を描きながら貯金で暮らしている35歳の橘優子。ランチア・イプシロンに乗っている。酒を飲んだあと「する?」と聞いてしまう。私は誰とでもしてしまう。そんな彼女とトークするのは、都議会議員立候補の本間俊徳、痴漢のk(車はオペル)、福岡のいとこ林祥一44歳、うつ病のヤクザ安田昇33歳、優子に惚れてる小川誠35歳(車はランチア・インテグラーデ)。

  • 「俺ね、順子さんの顔見るとほっとするんだ」
    「なんで?間抜け面だから?」
    「違うよ。すぐ顔を思い出せなくなるんだよ、だから顔見ると、ああ今は探さなくていいんだって」

  • 表題作も、第七障害もさらさらと読めた。
    妙齢の女性と、なぜか関わりあっていく周りの人々。性癖あり。鬱あり。
    人にはそれぞれ難あり。
    どちらも人と関わるのが得意ではないけど、関わらずにいられない感じがした。
    あまりよい評価でない人もいるけど、個人的にはよかった。

  • 【イッツ・オンリー・トーク】直感で蒲田に住むことにした、優子/僕はいろんなことを諦めちゃってるからだめなんだろう、と述懐する、旧友で議員の本間。諦めた男は描き続けたいモチーフなのだろうか。自殺未遂の果てに転がり込んできたヒモでニートのいとこ祥一。お互いが求めた時にだけ会う痴漢。二歳年下の鬱病のヤクザはTシャツにジーパン、しかし蛇柄の雪駄といういでたち。目の前からいなくなる前にきちんと挨拶に来てくれて。//お互いの距離を計りあって苦しいコミュニケーションをするより寝てしまった方が自然だし楽なのだ。/その思いを眠剤と一緒に飲み込んで寝返りをうった。/当たり前だよ、月だって人だってそういうとこはあるよ(祥一)/私は自分の、EDの議員の、鬱病のヤクザの、元ヒモのボランティアの座標分布を思った/イッツ・オンリー・トーク、全てはムダ話とエイドリアン・ブリューが歌う。//なんかさ、みんないなくなっちゃって 、という寂しい感じを残しつつ、けど、【第七障害】乗馬クラブでの落馬事故で愛馬を事故死させてしまい、自責の念から、職も彼氏も住処も捨てて、東京に出て彼氏とは折り合い悪いが、自分とは意気投合した彼氏の妹と同居を始めた順子。日々を取り戻しつつ、新たな道に進んだかつての乗馬仲間の篤とも再会し、彼の好意を感じつつ、少しずつ惹かれていく。/ゴッドヒップの死を認めない限り自分はこれ以上前にすすめないのだと順子はずっと知っていた。/名前なんかつけなくていいの。物事に名前をつけるから全ての間違いがはじまるんです(順子)/笑いながら目が覚めて急に取り残された気分になる。夢は補償なのだと気づく朝はつらい。(順子)/俺の第七障害はここなんだ(篤) /紆余曲折を経て、二人の関係が進みそうな予感を残しつつ。美緒の、るるるーと歌い出しながら喋るシーンとか好きだった。

  • やっぱり多才なのよー!
    この前に書いたスモールトークと主人公が同じ。
    こちらが先でしたね。

    なんつーか。
    同録の第七障害もそうなんだけど。

    やっぱり凄いんだよなー。

    うぅぅん。

    って唸ってしまうんだよなー。

    堕ちて行ってしまうんだよなー。

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2023年 『ばかもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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