High and dry (はつ恋)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163231600

作品紹介・あらすじ

生まれて初めて、ひとを「好き」になった瞬間を、覚えていますか?14歳の少女が恋をした。ばななワールドの新たなる幕開け、心温まる永遠のファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの通り人を好きになる初めの気持ちが切に描かれた一冊だった。
    大人っぽくって、少し薄暗くてでも気持ちの良い場所に気持ちを持っていってくれた。もしかしたら、今の子達には縁が遠い話になってしまうのかもしれないが、なんだか憧れた大人を感じられると思う。

  • 恋が中心の物語なんてあんまり読んだことない。小さい頃からラブストーリーには縁がなかったよ。映画くらいなら少しは見たかなぁ。恋愛が恥ずかしいからなんだと思う。自分なんかが人を好きになるなんて恥。ほれたのはれたの縁がない。喪女ってやつだ。

    でも今、昔好きだった人が亡くなって辛いから図書館で恋愛コーナーに置かれてたこの本を借りてみた。瑞々しくってずっとウエット。何故ずっとこんなにしっとりとした湿気を感じるのかなと思いながら読み進めて、別れが前提のお話だからなのかなと思ってたのだけど、そういうことではなくてよかった!たくさん素敵な言葉があるのだけど「水を含んだガーゼみたいに」って表現がすごくすきだった。本当にずっと、こういうどこか水気が溢れ出てきそうな状態の文章だと思った。泣くのを瞳の奥ギリギリで堪えてる時みたいな。

    理想的すぎて嫉妬しちゃうけど。大事なものの後にそういうことがあるって素敵じゃない!?私みたいな自信がない女はいつも男性と会う=肉体の恐怖があった。そういうものなくアイスクリームを食べたりコーヒーを飲んだり旅行に行けるなんて、素敵すぎるよー。本当に、今読んでよかった。誰も傷つかない踏み躙られない、恋と心の何かを再生できるお話だった。

  • 14歳の私には人には見えないものが見える。
    お母さんはそれを受け止めてくれている。
    だから私はおかしくならないでいられる。
    私は絵の先生に恋をしている。
    彼は20代後半で芸術家。
    先生に気持ちを伝えたけど…。
    でも先生は向き合ってはくれる。
    私の成長と先生の葛藤。
    ハッピーエンド!とか少女漫画的ではないけど
    ほっこり暖かい気持ちになれる本。

    だって、目の前にいないんだもん。私は、ロマンチストじゃないから、目の前にいない人のことはどんどん忘れちゃうのよ。特に忘れないようにという努力もしていないけれど、ただ、自然に忘れていっちゃうのよ、あなたがいることを。

  • 考え方や話し方が中学生っぽくなくて違和感を感じる。

  • 心温まるはつ恋ファンタジー。話もさることながら、私が魅せられたのは、山西ゲンイチさんの装丁と挿絵です。どこかなつかしく、あったかいキュートなイラストがいっぱいで、とくに小さいカッパの絵がとてもかわいくて...皆さんも、ぜひ一度本屋さんで手に取ってみてみてください、たまりません。

  • 初恋を通じて見えていく、生命の力や、家族との繋がり、愛、すべてが守られているという事実…
    見えなくてもそこにある、気づかないけど手にしている、そんなことを改めてそっと目の前に差し出してくれる、癒しの物語。
    読みながらぽろり、ぽろりと涙しました。きっとこの先の人生で御守りとなるであろう一冊。

  • はつ恋。
    神様の啓示を受けたとか奇跡を共有したとか、
    具体的なエピソードは違えど、きっと誰だってこういう、衝撃的な幸福から「落ちて」しまうものなんだよな。


    登場人物みんな、自分の言葉に対して真摯なところが素敵。
    それぞれのまとうオーラというか生命力の色というか…が、本当に鮮明に見える描写。スピリチュアルなものに半信半疑なわたしにすら、それでも。


    ただミホさんの立場と決意に身に覚えのある自分には、
    ただ真っ直ぐにはつ恋の高揚だけを受け止めることができなくて、
    どうしても夕子とキュウくんの進む道筋に切ない視線を投げてしまうので、
    その点では、それこそ夕子と同じくらいの年齢の時にも読んでおきたかった、
    かも。
    でもミホさんだって、ちっちゃいきらきらしたもの大事にしたいって、ちゃんと思ってるはずだよ。

  • ばななさんにしては主人公がお若い.なのにやはり私の憧れる女性.初恋は上手くいかない、というのが専らな説だが夕子ちゃんの初恋は続いて欲しいと思う.タイトルはRADIOHEADと関係があるのだろうか?

  • 代官山のカフェ会(4/18)にて。るぅさんからの推薦。その後るぅさんに会うことになったので、その前にと読んでみました。

    ばななの作品は、大人が主人公だと、淡々とした描写の中に潜む底知れない深い孤独に圧倒されることが多いのですが、この作品は、14歳の思春期真っ只中の少女がヒロインということもあり、絶望というファクターがなかったので、楽しく読めました。

    はつ恋のキラキラを、丁寧に表現しています。
    相手は20代後半の青年。
    ばななお得意の、不思議体験を交えての話なので、現実に幻想性が織り混じった話になっていますが、それでも人を好きになる喜びと悲しみ、両親から感じる愛情の不安定さなどが、丹念に描かれています。

    はつ恋がうまくいかないのは、心が気持ちに追いつけず、対応しきれないからなんですね。物語は青年の気持も彼女に向いたところで終わっており、この先の二人のことは書かれていませんが、やはり彼女のはつ恋はきれいなままで、実らないのではないかという気がします。
    そんな切なさが、行間いっぱいにつまった作品です。

    ちなみにタイトルの「high and dry」とは、「〈人が〉取り残されて, 見捨てられて」、もしくは(高くて乾燥したところ)→「困難な状況」という意味のようです。苦しい心の内を表した表現なのでしょうか。

  • ばななさんの書く小説の登場人物は、本当に嫌味がなくて、読んでいて嫌な気持ちになりません。また。登場人物の内心を表す言葉がとても丁寧で美しくわかりやすい言葉で綴られているのに毎回感心します。
    今回の主人公は14歳の少女で、14歳にしては、とても考え方が大人びていて(見えざるものが見えると言う設定もあり)少しとっつきにくい人物でした。学校の描写がほとんどないので、この子は本当に学生で14歳なのか?と何度も疑問が頭をもたげました。一回り上の社会人との恋愛は、なんだかおとぎ話のようでファンタジー色の強いプラトニックな物語でした。それでも、やはりばななさんはばななさんで、人物の場面場面で感じた気持ちを丁寧に読者に伝えようとしてくれるので、感じ入るものが所々ありました。性的な描写はほとんどないので、10代の方にも進められると思います。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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