介護入門

  • 文藝春秋
3.21
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本棚登録 : 456
レビュー : 118
  • Amazon.co.jp ・本 (106ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163234601

作品紹介・あらすじ

俺はいつも、「オバアチャン、オバアチャン、オバアチャン」で、この家にいて祖母に向き合う時にだけ、辛うじてこの世に存在しているみたいだ。第131回芥川賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • YOとかに惑わされないよう、文体への注視を一旦やめ、物語のみに焦点を当てるという読み方をあえて自分に課してみた。
    そうすると印象に残ったのは、この物語が、孫が祖母を献身的に介護するという“いい話”で、主人公(=作者)が見た目とは違って実は“いいひと”だ、っていうこと。その証拠に、主人公が祖母に着せるのは「おむつ」ではなく「襁褓(むつき)」だ。

    だが、介護する青年のイイ話だけでは、ありきたり。既存にない独自の作品への昇華には、もう一歩突き抜けるための何かが必要。では、この作品のオリジナリティは何か? 私なりに考え、出した結論は、「敵を次から次へと作り出す上手さ」。

    作者が他より頭一つ突き抜けたのは、その文体だけではなく、正義ヅラした“クソ”として描かれる奴らを、筆の勢いでバッサバッサと斬っていくところにある。そう確信した。
    例えばそれは、祖母から見て実の子どもにあたるのに、祖母と寝食を共にして自ら汗をかくことを避け、たまに来ては綺麗事と自己保身しか言わない叔父叔母ども。そして一くくりに「介護地獄」とかキャッチフレーズ的に中身ゼロの放送しかしないワイドショー。果てには、よりによって国際線の機中で放映された国辱的にクダラナイ映画「踊る大捜査某」(というタイトルで登場)といったところ。
    私たち読者は、そういう主人公の快刀乱麻を断つ書きぶりにカタルシスが得られる。読者はそれでいいだろう。

    しかし、作家にとって、敵を次々と作るという作風は、他方で、危険な側面ももつ。少年ジャンプの連載漫画に限らず、敵を倒し、次に進もうと思えば、もっと強い敵を作らなければならないというジレンマが生じる。モブ・ノリオさんは果たして、この作品で偽善者どもを次から次へと引きずり出し、面の皮を剥いだ末に、作家としての昇華に至れたのだろうか?

    書いてるときは、そりゃ、気持ちよかったと思うけど…
    でも私たちは経験上知っている。その結果、恐ろしい疲弊と閉塞感が襲ってくることを。その作風から次に進みたいと考えたとき、その気持ちよさを超えるのは簡単な作業じゃない。ハッパなんかと比べ物にならない禁断症状がクルはず。

    本当は敵を作って切り捨てていく作風に走るんじゃなく、徹底して介護のリアルと人間心理に迫るっていうのが、作家として本当はカッコよかったんじゃないか、なんて思う。素人ながら一言だけ。
    (2012/7/10)

  • 介護によって
    溜まりに溜まった思いを
    吐き出した作品

    文句を吐きまくっている個所には
    やたら
    HAHAHA とか YO が頻出

    近代的意識が培養した
    デリカシーの欠如に対する無自覚

  • 骨折をして寝たきりになってしまった祖母を孫である俺は、介護をしている。その俺が読者に向かって語りかける手法で、話は進んでいく。
    明るくさらりとは読める。ただ年寄りのせいか、文末にくる朋輩と書いてニガーと読ませるのがいただけなかった。
    もう少し若い頃に読んでいたならば、すんなり受け入れられたのかもしれない。年寄りついでに、私の年だと祖父母の介護というよりは、親の介護のほうがしっくりくると思ってしまった。
    かなり辛口の感想となってしまったことを、お詫びいたしますm(__)m

  • 当時祖母の介護をしていたので興味を惹かれて購入。

  • 文体に作為が滲んで鼻白む。バンドやっていたくせに文章にリズム感がない。しかしその自己愛に満ちた勝手を尽くした姿勢に、極限の感情が浮き出て愛おしい。可愛いのだ。介護ベッドの高低に生きざまを反映して感激するシーンもリアル。

  • どんな事でもいいのだけど、悩んだり葛藤したり苦しながらそれに真剣に向かい合う事で初めて知り得ることがあってモブ氏にとってそれは祖母の介護だった。文体はラッパー調というのか、独特のリズムがあり、大麻でイッテル感じがある。これ以降のモブ氏の作品は聞かない。読んでみたい気がする。

  • 一見支離滅裂なようで意外にちゃんと構成されており、リズミカルな文章で、すっと読める。底面に横たわっているのはまっとうすぎるくらいの感覚と愛と、周囲へのルサンチマン。即ちわかりやすいからなのかもしれない。
    芥川賞なのか?といわれるとちょっと疑問ではあるが。

  • けっこう前に芥川賞を受賞した作品です。
    積ん読状態だったのが、やっと読めました。

    内容は、仕事もしていない、親戚からごくつぶしだと思われていて、四六時中大麻のことを考えている『俺』が、ばあちゃんの介護を通して感じたことを書いている。
    文体が特殊で、ラップ調というのかなぁ・・・ちょっと違うかな?まぁ、そんな感じで描かれています。

    YO!朋輩(ニガー)明日なんてない、いつだって今日だとわかってたつもりだったんだがな。
    ~本文より~

    ただ、普通の文体で介護の実態を書かれているよりは、不思議と説得力がありました。
    「俺はロクデナシだ」という視点から書かれているからかなぁ?
    ほぼ、自由に動けない祖母の、それでも何かを楽しみたいという気持ち。
    介護に携わらないヤツが、本人の前では言わないにしろ
    「おばあちゃん、これだったら死んだ方がましやね」
    なんて言うのを許さない。
    確かに、祖母は泣くこともあるけど、それと同じだけ笑って楽しむこともある。

    ほぼ寝たきり状態で生きるっていうのは、想像できないし、やっぱり、そういうふうにして生きるのはツライなぁと思ってしまうのだけど、この作品を読むと、そうでもないんだなぁなんて思ったりして。
    文体に慣れるのにちょっと時間がかかったけど、良い作品でした。

  • すき

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