春、バーニーズで

  • 文藝春秋 (2004年11月25日発売)
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784163234809

感想・レビュー・書評

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  • 最近、「著者が何歳の時の作品なのか」が少し気になるようになってきた。歳を取ったせいなのか…

    今の自分の比較して
    これから先に感じることなのか…
    経験してきた年齢のことなのか…
    によって、感じ方にも多少違いがあるからなのか…

    今作は、2002年から2004年までの期間に書かれたようなので、著者が30代半ばの作品。

    30代半ばと言えば、もう若くはないと感じ始める頃合い。過ぎてしまえば、どの年齢もあの頃は若かったとなるわけだけれども…

    そんな30代の主人公の筒井の人生の一幕。
    人生の分岐点…誰にでもある分岐点…
    あの時、別の道を選んでいれば…どんな人生をたどって、今がどうなっていたのか…。そんな「たられば」の考えることって誰にでもある。
    そう、誰にでもあるんじゃないかな。そっちの人生の方が良かったのではないか…とか。
    あの時、あんなことを言わなければ、別の人生だったのではないか…とか。
    そんな、たられば意味ないのに…

    そんなことを、感じさせる作品でした。
    156ページ、行間も広く、すぐ読み終わる。

    最後の章、「楽園」の一幕の会話が印象的。
    あなたにとっての、楽園ってどんな感じ?
    から始まる会話。

    自分の楽園ってどんなだろう……
    イメージする。夢見る。でも、どこかで諦める。日々の日常の忙しさに言い訳する。ある。

    自分のイメージする人生の楽園を過ごすこと。
    本当は、できる。誰でも。
    そんなことを考えました。

    吉田修一さんの本は、横道世之介シリーズ、エッセイに続き4冊め。
    黒いジャケットのカバーと、タイトルのカッコよさ、惹かれ手に取った。すぐ読めそうだったし。

    実際、サクッと読めて、
    懐かしく甘く切ないような
    思いに浸れる作品でした。

    他の方の感想読んでて、最後の息子って作品の続編らしい…
    また、やってしまった…

    自分あるある早く言いたい

    前調べせず読むから
    続編から読んでしまいがち〜〜

  • 150ページ程で1ページあたりの文字数も少ないのでサラッと読めるおとな短編集という感じ。
    「最後の息子」という本の続編だと読み終えてから知る。
    すれ違う色んな普通の人達にも、一番近くにいる人にも、実は様々な過去とか思いとかがあるんだろうな、と思わせる
    けどそんなに刺さらないし残らないあっさりした一冊。

  •  漆黒の装丁とモノクロの写真たちが物語にふっと入り込ませる。
    何気ない日常のひとコマ、どこにでもいそうな登場人物たち、このリアリティーに溢れながら、どこかふわふわと浮世じみている不思議さ。
    切り取らなければただ過ぎ去る忙しない毎日を小説にしてしまう著者の力量に頭が下がる。
    同郷の著者が都会の東京について書くことがより共感するのかもしれない。

  • 短くてあっという間に読み終わる。
    エッセイを読んでいるような感覚になる。この人の文章はなぜ私をこんなに惹きつけるのかな。主人公のエッセイを読んでいて、主人公に惹かれ、主人公と一体化するような感覚。
    最終章の一つ前の章でなんだか不穏な予感を覚え、最終章で、え!!??となった。
    余白があり、解釈は私たち読者に委ねてくれているような、私がいいように解釈しても許されるような、吉田修一さんのおおらかさを感じた。

  • 愛し合いながらも秘した闇の部分も併せ持つ中年夫婦を軽妙なタッチで描いた作品。短編の連作であることで読み易くなっている。

  • 綺麗で読みやすい文章。
    最後の章で えっえっ、どゆこと?!と胸のざわつきが度々押し寄せて、少し読んでは読み返してを繰り返した。
    最後の章の解釈に正解があるのかよくわからず、かなりモヤモヤするが、なぜかスッキリした読了感もある。
    この作家さんの他の作品(特にデビュー作)も読んでみたいと思った。

  • 「最後の息子」の続編。その後が書かかれている作品。閻魔ちゃんと再会できて嬉しかったです。
    「今はあの青年を、それこそ命がけで愛している最中なのだろう…。」当時を思い出す男。閻魔ちゃんと暮らしていた時の気持ちが、前作ではさっぱり伝わって来なかったのだけれど
    「愛せる人を愛そうとしない依怙地な自分に嫌気がさして逃げ出した」これでストンと収まった。
    愛してくれる人よりも自分自身が大事だったから。それって案外ふつうの事なのかもと思うのです。
    他人に無償の愛を与えられるのは奇跡に近いんじゃないかと思う。愛情も千差万別、難しい。

  • 最後のお話でもやっとする。
    あれは誰だ。何がどうしてそうなった。
    それぞれのお話のつながりがあいまいだけど、最後のお話だけはいったい誰なのか、どこのお話なのか、混乱したままこの本が終わってしまう。

    ネタバレと言えばネタバレだけど、これは感想文なので勘弁してください。

  • ずいぶん前に買った本ですが、日光の旅のお供に持って行きました。(東照宮と金谷ホテルが出てくる)
    夜、ホテルでどぶろくを飲みながら読む。

  • 閻魔ちゃんが相変わらずでなんか愛おしかったわ。
    幸せになってほしいけど、若い子に入れ込んで逃げられる体質は治らなそう。。。

    筒井と妻の何気ないゲームの話、結構怖いかも!
    そんなことやってはいけない。。。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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