容疑者Xの献身

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 9150
レビュー : 1698
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163238609

作品紹介・あらすじ

これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。いやそもそも、この世に存在することさえ知らなかった。運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。

感想・レビュー・書評

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  • うっすらネタバレあります。未読の方はご注意を。

    ようやく、「私が挫折した本」から掬い上げることができました。
    昔読んだとき、数学者を徐々に追い詰めていく、嫌味でヘンテコリンな物理学者・湯川が好きになれなくて、石神さんの自首を待たずにパタリと閉じてしまっていたこの本。
    でも、何でもうちょっと我慢しなかったのかな!バカバカ私!もっと早くに最後まで読めばよかった!
    湯川さん、確かに嫌味でヘンテコリンだけれど、この本では、好敵手とこういう形で相対しなければならなくなった苦悩、真相に辿りついてしまった衝撃の方が重かった。
    完璧な計算に裏付けられた偽装工作も見破られ、真相が判明して終わりなんだと思っていたけれど、予想は全く違う方向から裏切られ…。ある意味その通りだけれど、このドンデンには本当に驚きました。
    納得の直木賞受賞作です。

    娘の美里と二人で暮らす靖子のもとに、ろくでなしの元夫・富樫が訪ねてくる。
    靖子から金を受け取って帰ろうとした富樫は、美里に殴られたことで逆上して美里に襲いかかり、靖子と美里は二人で富樫で絞殺する。
    富樫の死体を前に茫然とし、自首するしかないと思っていた矢先に現れたのは隣に住む高校教師の石神だった。
    石神は、二人に「私に任せてください」と言い、富樫の死体の処分を引き受け、警察の追及を逃れさせるため、詳細な指示を与える。
    容疑者を絞り切れず捜査は難航。しかし、旧友の湯川との再会で、石神の計算は次第に狂い始める。

    この本で描かれるのは数学者の愛情の形。
    数学に魅了され、5年10年に1人の逸材と言われても、大学に居続けることもできなかった。親しい友人も家族もいない、やる気のない生徒を指導する、学校と家との往復だけの孤独な日々。
    暗闇の中、彼は一筋の光をみる。引っ越しのあいさつに訪れた隣人の母子。

    …でも、石神は論理的な思考でほぼ漏れのない計画を立てることはできても、およそ倫理的でない部分で足を掬われることになる。
    自分の恋心が他人に気づかれているかどうか、自分の愛した人が、他人の犠牲の上に笑って過ごせる人かどうか、という点で。
    『献身』は貴いけれど、一身にそれを受ける立場からすれば、相応の覚悟と度量、ある意味の無神経さも必要とするのだなと。
    身も蓋もない言い方になるけれど、相手が受け止めきれない『献身』は、自己満足にすらなってしまう、なんという皮肉だろう。

    あれ?と思う点もないでもないけれど(どちらかに前科があったら一発でアウトだったんじゃ、とか、最初に自首していたら正当防衛だったのに、とか)、そういう邪念は「も~どうでもいいことだ!」と開き直れるくらい、よくできていて面白かった。

    • マリモさん
      たかぴょんさん

      初めまして、コメントありがとうございます。
      あ、ネタバレあっても大丈夫でしたか^^;
      大事な部分は何とか伏せてありますし、...
      たかぴょんさん

      初めまして、コメントありがとうございます。
      あ、ネタバレあっても大丈夫でしたか^^;
      大事な部分は何とか伏せてありますし、読み応えたっぷりなので、ぜひぜひ読んでみてください♪
      2013/01/29
  • 東野圭吾作品は初めて。おもしろくてどんどん読み進められました。
    物語のヒントにもなる視点を変えないと解けないという話が興味深かった。物語の端々に違和感を感じさせながら、それが意図的な誘導であるとして、最後まで進んでいく。全て論理的に進めたはずの犯人の誤算が人の心であったと思うと、犯人の人物像の造形もよかったと思う。

  • さて、これを「純愛ゆえの献身」と絶賛すべきか。
    以前読んだ時も、本を閉じるまでは石神の思いの深さに心を打たれていたのだが、ラストを読んで本を閉じた瞬間に浮かぶ思いは「結局、彼女の行動ですべて台無しじゃないか」という感情と、同時に「しかし、彼女の立場にたてば、とうてい受け入れられるような行為ではないよなあ」という同情。
    湯川がいう「その素晴らしい頭脳を、そんなことに使わねばならなかったのは、とても残念だ。非常に悲しい。この世に二人といない、僕の好敵手を永遠に失ったことも」というセリフにすべてが込められているような気がする。
    しかしそれでもなお、石神にとって、一連の行動は「生きている意味」を実感させてくれるものであったのだろう、とも思う。だからこそ、いっそう切ない。
    まったく、なんという救いのない物語であろうか。

    そう思って最初に戻ると、発端があまりにも身勝手で、みみっちい自己保身であることが腹立たしくさえなってくる。

    それにしても、こういう形の「愛」は、いかにも男性的だな、と思う。
    相手がどう思うか、という発想が決定的に欠落しているのだから。
    凄まじい愛の献身である、と頭では理解できるけれども、感覚としては「冗談じゃない」と思ってしまう。
    数学的発想としては完璧だったが、予想不可能な変数によって数式が崩壊した、ということかもしれない。

  • 映画を見ずに読んだ。
    トリック、話のうまさに驚いた。
    タイトルの意味も最後には理解できた。
    とても切ない、、、

  • 最高でした。映画より原作の方が断然好き!

    ガリレオ湯川とダルマの石神…天才二人の静かな対決。
    淡々とした流れで、最後まで不思議なジグソーパズル。
    完成しそうで完成しないパズル。

    18章からは一気に急展開して、目が離せない…心臓の鼓動が
    止まりそうになり、全身が凍りついた。

    石神の“無償の愛”胸が苦しくなった。
    こんなに人を愛せる人がいるなんて…涙がぼろぼろ。

  • ガリレオシリーズ。湯浅先生vs石神。大学二年か三年のときに読んで以来の再読。
    犯行トリックを覚えていたにも関わらず、終盤はページをめくりながら震えた。死体の殺害時刻をずらすため、ぜんぜん関係のないホームレスを殺して死体をすり替えちゃう、石神先生はまさに天才だった。その上、罪を被って自首してまで母娘を守ろうとする石神先生はとても尊い存在に思えて、応援せずにはいられなかった。

    ちょっとだけ思うのは、花岡母娘が富樫を殺したのは不可抗力みたいなものだったから、うまく口裏を合わせて正当防衛、もしくは情状酌量を狙う方向で話を進めてもよかったんじゃないかな、ということ。
    そうすれば関係のないホームレスを殺す必要もなかったし……。

  • ラスト

    靖子の心が変化した部分は何度読んでも泣きそうです。

    天才は3人で、石神、湯川、東野圭吾です

  • ストーリーの面白さ、展開の上手さ、人物の魅力、いくつもポイントはあるけれど、なにより情感に触れる表現がいい。物悲しさもやりきれなさも激しくはないのに、読み手の中に滲むように伝えてくる。何度読み返しても、気持ちが揺れる。

  • ガリレオシリーズの中ではやっぱりこれ!
    好きな作品すぎて、映画の評価はちょっと辛くなってしまった。
    東野圭吾の書く登場人物の中で、石神さんが一番好きかも。

  • 初めて読む東野圭吾の作品。有名で人気の作品という事は分かっていたけれど、ちょっとだけ「もしかしたら私は面白いと思わなかったりして」という不安もあった。でも、実際読んでみて確かに面白かった。ミステリーは特別好きでは無い、という人でも案外楽しめる作品なのではと思う。 続編については好きな人と嫌いな人に分かれている様子。これくらいの長編だと読みたいけれど、短編はどうかなー、と思う。短編ミステリーだと、事件やトリックが主で、登場人物についてあまり深く組み立てられない・描かれないと思う。そういうミステリーは、個人的にあまり好きでないのだ。

    私は犯罪トリックとかについてはそんなに気にする方では無い。最後の種明かしは「ほー!」と思ったけれど、特別にそれで「素晴らしい!」と思うタイプではない。それよりも、2人のライバル、湯川と石神の描写が面白く興味深く、それがこの作品を素晴らしいものにしていたと思う。あぁ、草薙さんもなかなかいい味を出してはいた。一番つまらなかったのは、石神が愛した靖子だったと思う。

    読者レビューを読んでいると、純愛だという声が多いが、私はそうは思わない。今までに他人に対して特別な愛情を感じなかった石神が、その極端な性格ゆえ、その不器用さ故にこういう形になった。石神のとった行動は、そう容易くできるものでない。それは彼の感情が究極の純愛だったからでなく、彼の性格の極端さゆえだと思う。実際に誰かが自分のために似たような行動を取ったとしたら、『あぁ、この人はそこまで激しく私の事を愛してくれてたのね』なんて思わない。思いっきり引いちゃって、そういうとんでもない人に出会った事と関った事を後悔する。また『なんで私、見抜けなかったんだろう』と思い、自分の軽率さを責めると思うな。

    だいたい靖子の方も最後で足掻くのが正直なところ気に入らない。私だって幸せになりたい、その気持ちは分からなくは無い。でも最初に事件が起こった時点で彼女は隠蔽するという決断をしているのだ。なんだかんだ言っても、人一人の命が消えたというのに、その見返りが、代償が辛いと嘆くのは間違っているというもの。悲劇、とは思うが、純愛は感じない。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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