ベルカ、吠えないのか?

  • 文藝春秋 (2005年4月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784163239101

みんなの感想まとめ

テーマは犬と人間の関係を通じた物語の深淵であり、感情豊かな語りが印象的です。古川日出男の独特な文体は、音楽的なリズムを持ち、読み進めるうちに心をトランス状態に導きます。犬の系図を通じて描かれる歴史的な...

感想・レビュー・書評

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  • 1942年、ミッドウェイ作戦の一部として行われた作戦により、アリューシャン列島に属するアッツ島とキスカ島が日本軍に攻略された。しかし、翌43年、アッツ島はアメリカ軍により奪還。これを受け、日本軍はキスカ島から撤退した。人間の兵士は一人残らず引き上げたが、残されたものがいた。
    犬だ。
    軍用犬は後に残されたのだ。
    彼らのうち、あるものは上陸してきた米軍相手に「玉砕」し、あるものは島に残り、あるものは米本土に連れていかれた。

    タイトルの「ベルカ」とは何ものか。
    地球軌道を初めて周回した動物は犬のライカ(スプートニク2号;1957年)である。当時は生還させるすべがなかったため、その死は最初から規定事項だった。犬が生還に成功するのはその3年後の1960年。その犬、ベルカとストレルカ(スプートニク5号)は、ウサギ、ネズミ、ラット、ハエ、沢山の植物や菌類とともに、初めて軌道周回から生きて帰還した生物となった。
    「ベルカ」は、この宇宙犬の子孫である。

    物語は戦中・戦後と1990年代を行き来する。
    それをつなぐ糸は犬たちの系譜だ。
    軍用犬も宇宙犬もそれぞれの伴侶と番い、子孫を残した。
    見えざる手に導かれ、彼らの運命は交錯する。
    犬たちそれぞれの運命がどこでどのように交わるのか、それがどう現在へとつながっていくのか、それが物語を牽引する。

    著者は本作を「想像力の圧縮された爆弾」と呼んでいる。
    物語は疾走する。語り手(≒著者)は、折に触れ、語り掛ける。
    イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?
    犬たちは答える。
    うぉん。うぉん。うぉん。
    彼らは時に洋上に、時に戦場に、時にブリーダーの犬舎にいる。その運命は必ずしも薔薇色ではない。しかし彼らは生を全うしようとする。番い、子を産み、育てる。
    現在形を多用して綴られる彼らの見事な生(時にあっけない死)は、不思議な高揚感を誘う。
    そして物語は1990年代へと収束する。

    91年に起こること。
    それはソ連の崩壊である。
    物語はそこに犬たちの叙事詩を結び付けようとしているのだが。

    個人的には、この試みがうまく行っているのか、よくわからずに終わった。
    序盤から中盤は非常に引き込まれて読んだのだが、90年代部分には終始ピンとこなかった。あるいはロシア史をよりよく知ればもう少し乗れたのかもしれないが。謎の老人には若干の魅力を感じる一方、ヤクザの娘やその父親、ロシアマフィアとのあれこれには魅かれる点が少ない。好き嫌いで物を言っても仕方がないが、理屈でどうにかできないのが好き嫌いでもある。
    そう言ってしまっては身も蓋もないが、そもそも軍用犬の生き残りと、宇宙犬、ひいてはロシア史を結びつけるところにやや無理があったのではないかという気もしてきてしまう。いや、着眼点はすごいと思うのだが。
    途中までは熱中していたので、絶賛のレビューが書けずに残念である。

  • タイトルが刺さってとてもすき。
    内容は最後まで掴むことができず、入り込めなかった。

  • 野生どうぶつ小説の趣は欠片ほどあります。古川氏の小説には『これを語っているのは誰か?』という疑念が付き物で、たとえばLOVEでは時刻、本作は概ね西暦年つきで追われますが『その事実を一体誰が目撃していたのか』のような。目撃不能な事柄を報告する得体のしれない語り手、結局作者お手製、お伽話なのか?……「フィクションである」とは言ってる。この世にフィクションでないものがあるのか?とも言う。不遜です。不遜? イヌ族の系統史とも嘯くが、この語りが歴史学の態度でないのは確かだからです。イヌ族のサーガと呼ぶものでしょう。

  • 1943年、アリューシャン諸島に置き去りにされた日本の軍用犬からはじまり、イヌの目線から近代の戦争史を描いた本。ロシアパートはかなり引き込まれたものの、世界に散らばったイヌの系譜たちのパートはうまく集中して読むことができなかった……。読み返す機会があれば、イヌ系図が追加されているらしい文庫版にしてみようと思う。

  • 戦後の混沌とした時代に犬の系譜を辿る旅である。犬に絡めてアリューシャンやらメキシコやらハワイやら、色んなところをウロウロしては、それなりに魅力的なメンバーが出てきてそれはそれで楽しい。ヤクザの娘なんかツンデレっていうか攻撃的な肥満ってヤダ何それ怖い。でも悪くない。
    んだけどもね、いやイチイチ歴史的背景というかアカやらアメリカやらで説明が長いんだよね。なんかそれでお腹いっぱいになってどうも煮えきらんかったのよ。

  • ひさしぶりの古川日出男さん。文章が音として心地よくテンポよく目で追っているだけでトランスしていくみたい。歴史は苦手だけど、古川さん語りなら読めた。イヌの系図がつなぐ一本の糸でとてもわかりやすく、エモーショナルに。読中、読後、なんか、飼い犬のチワワのおでこの匂いすら、すごく愛おしく尊いものみたいに思えたね。古川さんのご友人のシンガーソングライター小島ケイタニーラブさんが作った「ベルカ」という曲もとても好きです。うぉん!

  • 2011.02.第2次世界大戦中、日本が占領したアッツ島に4頭の軍用犬が残された.北、正友、勝、エクスプロ―ジョン.これらの子供たちが世界に広がる.犬橇の話、日本のやくざとチェチェンとロシアのマフィア、メキシコの麻薬密売、ベトナム戦争、ドッグショウ、ロシアのロケットに乗せられた犬、カヌーによる太平洋横断、アフガニスタン紛争と様々な話にイヌが絡む.とりとめもなく、よく分からんし面白くもない.

  •  ロシアのことは私の守備範囲ではないので、冒頭の献辞に「え?」とざわついて、語り口に「ええ?」と混乱し、独特の語り口と文体で一気呵成に書き上げた感はありながらかなりシツコイものでもあった。盛りだくさんの犬の歴史?はたぶん、全部、ロシアの事。
     そして、全部ロシアのことなんだけど、読んでいると北海道犬が出てきて、ヤクザの娘が日本語で語るから、うっかり舞台が日本のような気がしてくる。だって、日本人が日本語で書いてるわけで、歴史もほぼ知らないロシアに翻訳でもないのに、ボルシチやピロシキの匂いを感じ取ることのできないわたし。でも、男たちが戦争好きなのはわかった。革命は自由と平等とか愛とか平和のためになされたんではない感が満載で自由じゃないロシアの風土は革命前も後も同じってもとだろうか。
     ペレストロイカは絵に描いた餅? ゴルバチョフは出てきたけど、エリツィンは結局最後まで出てこない。エリツィンの秘密が「S」と言うことなんですか?
     でも、私は思ったのだった。この小説の大事なところはフレーズに挙げた325ページの大量に廃棄された肉や野菜のことである。ロシアにはこの現代に配給なんてやってるんだろう?物がないってなんでだろうと思っていたけど、ホントはあったんだ!?ってこと。
     それは翻って昨今のコメ不足やナフサがなくて経済が停滞してるの図と同じに感じられてくる。

     この作家の宮沢賢治の「永訣の朝」の朗読が斬新でこの本を手に取ってみたけど、こちらもとても独特な表現方法で、ノンフィクションのような気分にも包まれたけれど、やはりこれだけの長い文章。書下ろしじゃなくて、編集者にいろいろ指摘されてスッキリしてたらもっとよかったけどな、と思った。でも、ロシアのことは知らんので☆4つです。

  • 4頭の犬から始まり、その血が、運命がどんどん展開していくので読み応えがあった。

    人間に振り回される犬たち。哀れな最期を遂げるものも多いけれど、「可哀想」という言葉より、その「気高さ」や獣としての「逞しさ」が似合うなと思った。

  • 「人が死んでも犬は死なない映画」みたいなコピペにすっかり慣れた状態で読むと仰け反るほど呆気なく犬がたくさん死ぬ小説です。犬と聞くと無条件に愛おしくなる人にはツラい。
    あと、腹の立つ馬鹿が出てくると漏れなく壮絶な目に遭って死ぬか、かなり残酷な仕打ちで成敗されるので、ちょっと震え気味にではありますがだいたいスカッとします。
    太古より犬の賢さ、忠誠心、学習能力は、同じだけ歴史の長い人の業に裏打ちされているのかもしれない。

  • 「2006本屋大賞 8位」
    九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/688388

  • 帯に釣られて借りてみたけど・・・・読みづらかっただけ

  • 2018.3.17
    292pでギブアップ。
    発想はすごいんだけど
    文体がアツくてアツくて…
    苦しすぎた。
    視点がたくさん変わる本は相性が合わないと辛いんだなぁ

  • 犬目線での独特な語り口調がとても新鮮。
    ただ、歴史、地理の苦手な私には辛かった。

  • 犬の運命人に翻弄され過ぎ。

  • 今までに読んだことのない文体。
    「犬よ、おまえたちはどこにいる」
    すごく印象に残るフレーズ。
    物語的にはいまいちよくわからなかったけど、その独特の文体が妙に頭に残る本だった。

  • 2016/01/25 読了

  • なんか読書する気がない時期だったから、すごく時間をかけてだらだら読んだけど、たぶんそういうタイプのほんじゃない。でも、めちゃくちゃよむきなかったのに、だらだらでも読めたのは、それなりに面白かったからだと思うけど、本当に退屈だった。でも、読書において、退屈という言葉はけなし言葉ではなく、そもそも一面退屈なものであるがゆえに、それでも読ませるのですごいのです。

  • うぉん
    戦争のこともっと分かってれば
    もっとおもしろい

    でもどきどきした
    犬がしんでうまれる
    人間はもういらないや

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著者プロフィール

1966年生まれ。著作に『13』『沈黙』『アビシニアン』『アラビアの夜の種族』『中国行きのスロウ・ボートRMX』『サウンドトラック』『ボディ・アンド・ソウル』『gift』『ベルカ、吠えないのか?』『LOVE』『ロックンロール七部作』『ルート350』『僕たちは歩かない』『サマーバケーションEP』『ハル、ハル、ハル』『ゴッドスター』『聖家族』『MUSIC』『4444』『ノン+フィクション』『TYOゴシック』。対談集に『フルカワヒデオスピークス!』。CD作品にフルカワヒデオプラス『MUSIC:無謀の季節』the coffee group『ワンコインからワンドリップ』がある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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