- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163239804
感想・レビュー・書評
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「死神の千葉さん」にすっかり魅了されてしまいました。千葉さんと人間達の会話のズレ具合が面白くて、とっても楽しめました。個人的には「死神と藤田」と「吹雪に死神」が良かったです!
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死神が主人公のお話。
短編集だが、全て死神「千葉」が情報部から知らされた対象者を一週間調査し、「可」或いは「見送り」として生死を決める。たいていは「可」となり対象者は8日目には死を迎えるのだが・・・
タイトルやあらすじからは、シュールで冷酷な内容をイメージしたが、そこは流石の伊坂幸太郎さんだった。
まず死神である千葉のキャラクター設定が面白い。死神であるが故に人間とズレている部分もありながら、死神界?での同僚間でもキャラが立っていて憎めない。
短編の内容もそれぞれに際立っていて、更に対象者の何人かが伏線で繋がっているという構成。
特に印象に残ったのは以下後半の3遍。
「恋愛で死神」
「旅路を死神」
「死神対老女」
特に最終章で老女が話す死生観は、身近な人を次々と亡くした老女だからこそ導かれた考えで、千葉を目の当たりにしても微塵の動揺も無く清々しさすら感じた。
「長生きすればするほど、周りが死んでいく。だから、自分が死ぬことはあんまり怖くない。やり残したこともあるかもしれないけど、それも含めて納得かもしれない。」
「生きていると何が起きるか本当にわかんない。一喜一憂しても仕方がない。棺桶の釘を打たれるまで、何が起こるか分からないよ。」
寿命のない千葉にとっては、時間の感覚も全く異なる人間の話だから、「死ぬというのは、生まれる前の状態に戻るだけだ。怖くもないし、痛くもない。人の死には意味がなくて、価値もない。」ということになるのだが、やはり生きている人間にとっては、そうではない。
だからと言って、日々の暮らしの中でずっと死を意識しながら生きるなんて到底出来そうもない。
それでも、いつか必ず訪れる死と時折向き合うことで、変われたり気付いたりしながら生きていけるのも、限りある時間を生きる人間の尊さだろうと思った。
ちなみに、千葉の調査結果は殆どが「可」となる為、なんだか切なくなった。ネタバレになるので詳細は避けるが、唯一の「見送り」となった案件は、千葉が大好きな音楽に関する希望があったことがその理由となっている。
ところが、最終章は唯一千葉の判断結果が謎のまま終わっている。
この部分は読者に考察を任しているのが、伊坂さんの粋な所だなぁと思いつつ、私は老女が雨男である千葉に音楽以外の新たな感動を見せ、それを学ばせてくれた事から「見送り」になったのではないかなぁと希望的観測を抱きつつ読み終えた。ここは、読者其々に意見が分かれるのもまた面白いところだろう。
死神の精度を軸に置きながらも、やや哲学的な要素も感じつつ、推理を働かせる所もあったりと、短編らしからぬ濃厚さで十分楽しめた。
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続編がでたので慌てて読みました。
これは短編集かなあと思っていたら、最後につながりが。そういうところ、やはり伊坂さん。
タイトルどおり、主人公が死神。素手で人間を触れると、触れた人間は気絶する。味覚がない。毒は効かない。ミュージックを愛し、渋滞を憎む。
会話がチョッとずれる。
「晴れてたら星がすごいんだろうな」
「星がすごい?」
「いい大人が言うセリフじゃないですよ」
「悪い大人なら言っていいのか」
等々。
続編も楽しみ。早く読みたいです。伊坂さん、大好きです!! -
雨の降る日にCDショップの視聴コーナーで長いことミュージックを聞いている人を見かけたらそれは「死神」かもしれない
人間の死を判断するために死神の調査部が対象者と接触し「可」または「延期」を下す。って、死神にも調査部や情報部があるところが可笑しいが、対象とのやり取りがとてもユニークに書かれていてとても面白い。
古典落語にも「死神」があるけど、死神にとっては人間の死は必ずくるもので特別のことではない。だけど、人間にとっては命が誕生してから人生の物語が作られるわけで、それは特別なことなんだよね。
死神と人間をとても爽やかに描く伊坂さんは凄い!!
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伊坂幸太郎の名前を知ったのは、随分昔に韓国ドラマの中である若者が日本語を勉強してる設定で 好きな日本の作家がイサカコータローと喋った時 笑。韓国の脚本家にも知られる人気作家なんだ!と頭に残った次第。さて この死神が主役の6話の短編、ニヤニヤ クスクスの素がふんだんに散りばめられていて止められない止まらない 瞬く間に読了。死神たる彼が調査して対象者の死が予定通りでよいならば「可」まだならば「見送り」のジャッジを下す決まりで、概ね通過儀礼みたいなものなのだが6編の最初だけ「見送り」であとは「可」ばかり!
実はそれには意味があるのですが.....
ユーモラスで小洒落た楽しい作品でした。
2005.6 第1刷 -
2003年から2005年にかけて「オール読物」に連載された短編集。
伊坂幸太郎はこの「死神の精度」で、第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞しています。
直木賞の候補にもあがりました。
ところがなかなか波がなく退屈で、これは伊坂作品にしては始めての「ハズレ」かなと思っていました。
これが最終章のラスト数ページでひっくり返されます。
それも思わず「ああ~!」と声をあげてしまうような鮮やかな仕掛けです。
無彩色の絵に、一挙にパアッと豊かな色彩が塗られるような場面です。
「重力ピエロ」の主人公「春」も脇役で登場する章があり、そんな事とは知らずに読み始めたので、妙に得をした気分になりました。
「千葉」という名を人間界で名乗る死神。
彼の仕事は調査を依頼された人間の傍で7日間過ごし、その死が「可」が「見送り」かを決めること。
しかし、作品中では誰も死なないのです。
むしろクールでズレている死神が、案外人間の死をさほど望んでいないように見えてきます。
それは出逢う人々との間に交わされるものが、あまりに哀感にあふれているからでしょうか。
死に神が主役で語られる短編の中には「恋愛」があり「ハードボイルド」あり、閉塞空間での「推理小説風」のものもあり、実に多彩です。
特に「恋愛で死神」の章に登場した女性が、最終章では魅力的な老女になって登場します。
同一人物だと気づくときの死神の驚きはそのまま読み手のものになりますよ。
雨男のはずだった死神が、老女に出逢って始めて晴天を見ます。
きらめく海の前でまどろむ老女と死神の美しいラストは、映画のよう。
極力抑えた淡々とした描写でありながら、感動につつまれるラストまで持って行く。
しかも「死」というテーマでこれが出来るのだから、さすがです、伊坂幸太郎。
始めての伊坂作品は、これでも良いかもしれませんね。 -
苦手な短編集だったが、それぞれに繋がりがあったりしていたためか、まだ良かった。
もう少し伊坂幸太郎らしい、軽快なトークが欲しかった。 -
いまだに音楽配信には馴染めず
CDを買うことがあるので
音楽に向き合って新しい発見や
息抜きになるのが楽しい。
この死神の気持ちはわかる。
CDを買う人が少ないので
いつも店では私一人になることが多く、
死神というより
「いまだにCDを買ってる死人」に
なっている様な気分でこの物語を思い出す。
著者プロフィール
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