アンボス・ムンドス

  • 文藝春秋
3.20
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  • 本 ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163243801

感想・レビュー・書評

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  • ツマグロヒョウモンと
    いう蝶を知ってますか


    ちょうどいま我が家の
    花壇にその幼虫がいて、

    黒地に鮮やかな赤い線
    とトゲトゲしい威容で、

    「ボク毒ガアルヨ、
      食ベルナ危険」と、

    上空を飛交う鳥たちに
    警告のサインを発して
    ます。

    実のとこ彼は毒を持ち
    合わせてない。

    私はググってそのこと
    を知ってますが、

    鳥たちは毒を恐れ彼を
    食べようとしない。

    弱肉強食の世における
    一つの生存戦略ですね。

    人間の毒を扱う本作は、

    ツマグロヒョウモンと
    逆に、ぱっと見無害に
    見えて、

    その実、猛毒を有する
    ヒトという種を如実に
    描いてます。

    毒にも薬にもならない
    なんて言いますが、

    そんな関係性が理想的
    なのかもしれません。

    薬も過ぎれば毒となる
    と言いますが、

    居心地が良過ぎるその
    関係性は、

    遅効性の毒でじわじわ
    貴方を蝕んでるのかも
    しれません・・・

  •  なんというか、正直、宛てが外れた……という気持ちの方が大きかったです。

     基本的には短編集。
     主人公は男の人だったり、女の人だったりいろいろ。
     そして多分、テーマは男女の愛情……なのかな?

     それとも日常の中の非日常??

     自分にまったく自信がなくて、いじめられ続けた女の子が、ある過去を部分的に思い出したことにより、自分に自信を取り戻すけれど、すべてを思い出した後に、再び自信を失ってしまったり。
     不倫の果てに別れられないことにじれて、相手の奥さんのところに怒鳴り込みに行くが、結局太刀打ちできなくて、最後は死を選ぼうとする女の人とか。
     女三人での旅行の果てに、告げられる衝撃の真実、とか。

     なんかまぁ、いろいろ。
     はっきり言って、別に改めてこの作者さんが書かなくてもいいんじゃ……というか、似たような話、昔どっかで読んだよなー……というのが正直な感想。

     読みながらつまんないなー……と思ってしまいました。

     これを言ってしまうと失礼に当たるかもしれないんですが。
     個人的に、どうしてもこの作者さんの話って「OUT」の印象が強くて。
     どうしても、ああいう刺激的な話を求めてしまうんですが、残念ながらそんな刺激は得られませんでした。

     でも、「OUT」を知らなければ、また別の感想を抱くかもしれません。

  • 桐野さんが描く鬱屈した世界、人それぞれが抱く心の隙間に潜む闇。時に繊細で時に粗っぽく、女たちの複雑な心情を描く短編集。

  • 最後の短編が湊さんの「告白」みたいな感じで期待して読んだのですが、中途半端な感じで終わって気分的に不発。他の短編も少し胸糞悪くなるような感じが多かった。

  • 短編集。
    「植林」「ルビー」「怪物たちの夜会」「愛ランド」
    「浮島の森」「毒童」「アンボス・ムンドス」

    止めることが出来ない「桐野夏生」読み、少々自嘲気味なのだが。
    やはり、面白く楽しんだ。

    こういう新刊本の感想を書くとき困る。私みたいなタダの本好きが何か言っても素人の悲しさ、外れていることが多いのだろうと萎える。でもそうしていたらブログの意味がないと開き直る。

    やはり表題作「アンボス・ムンドス」がよかった。「桐野夏生」らしい。と言う評価は「一作ごとに自己模倣に陥らない」とする桐野夏生さんにはご不満かもしれないが。

    似通ったような事件をつい今年聞いた。

    内緒で海外に旅立った教師同士(ここでは不倫)が事件に遭遇する。夢のような時間を過ごして帰って来たら、教え子の死と不倫がばれて非難が待っていたのだった。しかも悪意ある、その悪意とは?というのがあらすじ。

    この短編が最初に書かれたのが2004年9月、現実の中東のニュースは今年。作家の明察。

    桐野夏生描くリアルはより現実に近く、リアルすぎて恐ろしいのか。所詮人間のやることは悪意にみちているのか、行為そのものが好まざる悪意になってしまうのか。

    結局私は息苦しい現実を逃避する目的でも本を読んでいるとして、それなのにやりきれないフィクションをどうして好むのかと考えさせられつつ、やはり惹きつけられて読んだ。

    要するに「癒し」ばかりでは嫌ということである。

    昔の曽野綾子の短編もこんな風だったなあーとなんとなく思い出したよ。後の作品は皮肉には満ちているが、怒りは静かに抑えられているのだから。

    桐野さん怒り全開ということか。私見である。

  • 2005年刊行。短編集。
    非常にインパクトのある話ばかりで、それが内容の好き嫌いを超えてた。
    (図書館)

  • あんまり進まず2個目までしか読めませんでした。

    どろどろしたの嫌いじゃないのに、なんかなー。
    好き嫌いがありそう。

  • 3.7 女の作家が書くと言うことで許される側面があるかも知れない。男が書けば非難されそうな内容ばかり。読後爽やかな話はひとつもない。だけど暗部から目を背けることができない人の習性を桐野夏生は知っている。

  • この数ヶ月、読み応えを求めて桐野夏生の長編ばかりをかなり続けたが、そろそろ短編もいいかなと手に取った1冊。
    7篇の短編はどれも秀逸で、どれにも長編小説に劣らない桐野作品特有の毒がふんだんに散りばめられている。
    特に愛ランドと、怪物たちの夜会が結構ぶっ飛んでてよかった。

  • 短編小説です。
    アンボス ムンドスはパナマのホテルの名前です。
    どの作品も人間の醜さを表しています。
    桐野の人間の汚さ、醜さの表現は時に怖くなるぐらいのものがあります。
    落ち込んでいるときは余り読みたくないですね。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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