凸凹デイズ

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 92
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163244303

感想・レビュー・書評

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  • 大学の寮に住んでいた若かりし日のこと。
    その頃おつきあいしていた美術学部デザイン科の彼が、就職の面接に
    こともあろうに、持っていくと約束していた作品を忘れ、
    一生のお願いだから、面接先まで持ってきてくれ!と涙声で頼まれたのですが。。。

    縦も横も1m以上あるパネルをレモン画翠の巨大なバッグに入れ、
    西武線と山手線を乗り継ぎ、銀座のビル風に煽られてふらついては
    街ゆく人たちに迷惑そうな目で見られながら歩いた、あの心細さ!
    (しかも彼は、その大手化粧品会社に受かったにも関わらず就職しなかった。。。きー!)

    というわけで、冒頭の風雨の中、大きなプレゼン用ボードを肩にさげ
    風に煽られながらカニ歩きでコンペ会場を目指す凪海(なみ)に、
    「ああ!わかるわ、その苦しさ!」と、いきなり感情移入したりして。

    バイト先で知り合った天才肌の黒川と、なんでも小器用にこなす大滝が立ち上げた
    小さなデザイン事務所凹組の新人 凪海が、風変りな先輩たちに振り回されながら
    凹組になくてはならない存在として成長していく物語です。

    なによりおもしろいのが、山本幸久さんらしいネーミングセンスで、
    まず、事務所の名前が「凹組」というところから始まって
    リニューアルを任される遊園地が「慈極園」(じごくえん!)、
    起用されるキャラクターは、凪海の描いたデビゾーとオニノスケ、
    普段持ち込まれる仕事は「月刊美少女だらけ」や「うっちゃり刑事」のレイアウト。

    ものが散乱するわずか1Kの事務所で、予想外に人が集まったりすると
    雑誌の上にホワイトボードを載せたのがテーブルがわりになる、
    そんな弱小デザイン事務所の独特の空気感が楽しい♪

    創立メンバーだったのに、大きな賞をとって凹組を離れ、
    今は自ら女社長となって華々しく活躍する醐宮のツンデレぶりも可愛らしく

    目を瞠るような作品を苦もなく生み出してしまう天才黒川と
    彼を間近で見ては焦燥に駆られながら、アイデアを捻り、コツコツ努力して
    丁寧な作品を積み上げて今日までやってきた大滝、ふたりの関係には
    大学時代、横目でちらちら見ていた美術学部の風景が重なって、ちょっと切なかったり。

    信頼できる仲間と創り上げる仕事のよろこびが爽やかな1冊です。
    それにしても、凪海の描いたデビゾーとオニノスケ、見てみたくてたまりません♪

  • うーん、まぁなんか正直微妙だったな。
    個性豊かな登場人物が面白くはあったのだけど、あんまり共感できずというか、あんまり好きになれなかったかなぁ。
    10年前の凹組結成当初の話はあんなにいらない気がする。

    凪海ちゃんががんばる話はよかったんだけど、なぜ彼女があんなに自分に自信がなくて受け身だったのかよく分かんなかったし、そっから変わっていく過程も見えにくかった。
    …から、あんまり感情移入ができなかったってことなんだろうね。
    黒川と大滝のキャラもいまいち定まらず。
    そもそもなんで黒川は才能あるのに凹組で引き籠ってんだろう?
    醐宮もかなりいやな女としての印象ばかりで、なんだかなーという感じ。

  • こういうお話が好き。

    弱小デザイン事務所:凹組で働く凪海は
    遊園地のリニューアルプランのコンペに
    渾身のキャラクターデザインで勝負をかける。
    このコンペには、かつて凹組を飛び出した醍醐が社長をつとめるQQQも参加する、いわば因縁の対決。
    そんな中、QQQから凪海に引き抜きの話が舞い込んで…。
    一生懸命頑張る人たちがたくさん出てくるお仕事小説。

    まず、登場人物がとっても濃くてユーモラス。
    章によっては過去に遡ったり、視点が変わったりするのですが、軽いタッチのせいなのか無理がなく、すいすい読み進められました。
    そして、重たいテーマはないけれども
    頑張っている人の背中を優しく支えるような
    一歩踏み出す人の背中をそっと押してくれるような
    そんな作品です。

    私は、みんなで協力して何か一つのことを成し遂げる、その過程に充実感を感じます。
    にも関わらず、今までの社会人生活は個人プレーな部分が多くて、そういった楽しさを少し忘れかけていますね。笑
    学生時代を思い出した次第です。

  • かつて緑の胃薬飲みながら出社した事や
    点滴打ちながら残業した日を思い出した。

    そうそう・・・
    社会ってけっこうキビシイ。
    で、案外ヤサシイ。

    何事も自分ひとりで勝ち取った手柄なんてないのよね。

    社員じゃないけどデザイン事務所を影ながらサポートするミナミコーポレーションのイワイダさんが最後泣かすんだよなあ。

  • とある遊園地のキャラクターとロゴのコンペで、2つのデザイン事務所が出てくるところから話は始まる。かつて小さなデザイン事務所で活躍していた3人が、ひょんなことから仲違いし、分裂して再会することになるのだが、

    成功、うらぎり、嫉妬など様々な感情が捩れたようにそれぞれに動き、最後にネジがバチッとハマる瞬間がとても気持ちいい。

    凸凹デイズというタイトルがぴったりのストーリーだった。

  • 夢を持つ若い女性デザイナーの卵
    才能ある売れないデザイナー
    才能ないと思ってるデザイナー
    野心家の女性デザイナー
    夢をどう形にしていくか
    なんか 20代の大学生に戻りたくなりました。
    ほろ苦くも感じながら
    まだ なんて思いながら 一気に読み終えました。

  • 久しぶりの再読。
    貧乏暇なしなデザイン事務所《凹組》の新人、凪海の成長と、《凹組》の転機を描く。
    律儀な大滝、天才肌の黒川、成長を予感させる凪海のトリオは良いと思っていたけど、時折、醐宮がいたころの過去パートが織り込まれてテンポを妨げられる。
    前半、後半に分けて書いてくれたらもっと良かった。
    磐井田くんがなかなか魅力的なキャラクター。
    《凹組》は今後の山本作品に何かと登場するので、楽しみ。

  • 凹組の仕事ぶりいい。イワイダさんがデザイナー側に立ってるのがすごくいい。デザインはチョチョイのチョイで出来ると思ってる輩多いから。どんなに精神や体力を摩耗してもあんまり稼げないんだなー。

  • 2017/1/21
    めちゃくちゃおもしろいじゃないの。
    何で平均☆3.16??
    この人の本好きだなぁ。
    前回凹組知らないで読んだからもう1回「展覧会~」読みたいなぁ。
    読もう。
    もがいてるけど笑ってるところが愛しい。

  • やりたい事を出来る仕事ができること。素敵だなと思った一冊。

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著者プロフィール

山本幸久
一九六六年、東京都生まれ。中央大学文学部卒業。編集プロダクション勤務などを経て、二〇〇三年『笑う招き猫』で第十六回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。ユーモア溢れる筆致と、魅力的な登場人物が読者の共感を呼び、幅広い世代から支持されている。主な著作に『ある日、アヒルバス』『店長がいっぱい』『大江戸あにまる』『花屋さんが言うことには』『人形姫』などがある。

「2023年 『あたしとママのファイトな日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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