褐色の文豪

  • 文藝春秋 (2006年1月27日発売)
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本 ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784163246109

感想・レビュー・書評

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  • 三部作か。知らんやった。

  • デュマ、パリ分文壇を征服す!
    「黒い悪魔」ことデュマ将軍の息子、アレクサンドル・デュマは、
    父親譲りの豪胆さ、集中力を武器にパリで劇作家への道を歩みだし、
    ついには大傑作『三銃士』を著すが・・・

    父が大好きで、常に父を意識しながら生きていた主人公。
    ふとした契機から劇作家をめざして成功した、破天荒な主人公の生き方が面白いです。
    傑作を生み出した背景にあったもの、人の思惑と主人公の才能、自分の息子に残したもの。
    遠い時代の遠い場所であった出来事の物語なのですが、とても身近に感じられて親近感を覚えたりします。
    この本だけでも十分面白いのですが、「黒い悪魔」を読んでからこちらを読む方が、
    より楽しみは増すでしょうね。

  • 三銃士を書いたデュマの話。

  • 子供の頃から慣れ親しみ、映画やドラマなどが放映されると欠かさず観ていた【三銃士】の著者がこういう方だったとは…。
    幾ばくかの驚きとともに納得できる人生。

    偉大なる父を無邪気に信仰し、波乱万丈に憧れ、憧れるとともにいささか行動もし、そんな自分を蔑み続けたかもしれない彼の人だからこそ書けた物語だったのだろうな…と感じる。

    また【三銃士】を読んでみたくなった。

  • 2010.09.19

  • デュマ親子三代の二部。買ってはくれず,借りてくれた。それも迅速に~ヴィレル・コトレでアレクサンドルは敗走するナポレオンを見て軍人の道を捨てた。同郷の親友ルーヴァンに誘われて見たサワソンでのハムレットの焼き直しを見て,劇作家を志すが母と仕事を捨ててパリに行く気にはなれない。故郷で失恋し,先に上京したルーヴァンに誘われて花の都に上りオルレアン公の秘書の職を得て,演劇を見た劇場でアメリカ人と蔑まれても,めげないアレックスはノディエとの知遇を得,隣に住んでいた年上の女性のアパートに転がり込んだが,息子を一人設けて母を住まわせたアパートと愛人のアパートの三重生活を送る内,フランセ座の審査に通り掛けて運が開け,詩人ヴィクトル・ユーゴとも知り合いとなる。「アンリ3世とその宮廷」で大当たりをとった時,シャルル10世が憲章を認めぬ反動政治に走ったため,オルレアン公を建てるしかないと思いこんだアレックスは革命の主人公に踊り出すため,王党派のサワソンで火薬を接収するが,それはせいぜい裏方の仕事であったとと思い知らされた。自分と同じ名を付けた息子の認知を巡る話し合いでは書店を開く約束で親権まで手に入れた。マルセイユの図書館で「ダルタニャン氏の回顧録」を見て,父や自分の生涯に似ているという理由で「三銃士」を新聞に連載し,ルイ・ナポレオンと交わした約束を果たして「モンテクリスト伯」も書き,巨万の冨はパリ郊外に建てたモンテクリスト城建設に消えたが,小説工房というシステムも構築して,歴史劇場も順調であったところに,2月革命が起こり,劇場の経営破綻から破産宣告を受けるが,それでめげることなく,ベルギーに逃げるも政治亡命にすり替え,新しい執筆契約で再び金を稼ぐようなると,大規模な旅行に出掛け,自らのヨットも手にするが,イタリア統一を目指すガリバルディを支援するためであった。晩年は長男デュマ・フィスに世話になるが68歳の人生を終えて遺言により埋葬されたのは両親の墓の右隣であった。フィスは幸せな人生だったのだろうかと父の生涯を振り返る~ナポレオンの立場から書いたり,愛人の立場で述べさせたり,ユゴーの思惑を書いたり,勿論本人の気持ちを書いたりで,ちょっと疲れるが,彼の一生は纏められているな。象牙色の賢者のすべて一人称語りよりも良いかも知れないけど・・・。これでデュマ三部作「黒い悪魔」「褐色の文豪」「象牙色の賢者」は終わり,ちょいと疲れた。「象牙色」を先に読んでなければ,波瀾万丈を楽しめたかも知れないが,「褐色」の後半は特に疲れる。それにしても大デュマの生きた時代は,ナポレオン・復古王政・七月王政・2月革命・ナポレオン三世・普仏戦争(・イタリア独立・ドイツ独立)・第三共和制・パリコミューンと忙しいだった

  • 日本で知名度の高いフランス人と言えば誰が思いつくだろう? 全世代的にはナポレオン・ボナパルト、マリー・アントワネット、ジャンヌ・ダルク、それにダルタニャンあたりがランクインするのではないだろうか。西洋史を題材とした歴史小説を手がける佐藤賢一にとってもおそらくはフランス史への興味の原点はそのあたりにあるらしく、ジャンヌ・ダルクについては『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』、『傭兵ピエール』を。そして『三銃士』の主人公たるダルタニャンについては『二人のガスコン』、『黒い悪魔』、『褐色の文豪』とそれぞれ多数の作品を発表している。


    この中で『黒い悪魔』は小説中のダルタニャンのモデルとされたと言われているアレクサンドル・デュマ将軍を主人公としたものだ。デュマ将軍は『三銃士』の作者であるアレクサンドル・デュマの同名の父親であるが、恥ずかしながら私はその事実を知らなかったために、読みながら「この無敗の将軍はいつ文学に目覚めるのだろう?」と首をひねったものだった。ちなみにこのデュマ将軍の息子の文豪デュマの息子もまたアレクサンドル・デュマという名でこちらは『椿姫』の作者である。オマエらいい加減にせえよ。

    (日本では共通の漢字を一字つけるという形式があったためか、まったくの同名をわが子につけるってパターンは歴史上ほとんど見ないですね)


    で、この『褐色の文豪』は将軍デュマの息子たる文豪デュマを主人公とした物語で、一応は『黒い悪魔』の続編にあたる。黒人奴隷とのハーフであった将軍デュマが「黒い悪魔」であったのに対し、クォーターである文豪デュマは「褐色」というわけだ。佐藤賢一が描く主人公像はかなりシンプルな行動原理や思考の核たる部分を持っている場合が多いが、本作の文豪デュマにおいては、幼い頃に亡くした偉大なる父親への憧憬と、父親から受け継いだ肉体への自信、自分は父親よりも薄い「褐色」に過ぎぬという劣等感などがそれにあたる。それらを真ん中に据えれば、文学への目覚め、革命への参加、盗作疑惑、政治進出の敗退、破産、ナポリ解放といった波乱の人生がブレることなく一つの流れの中で生き生きと紡ぎ出されるという寸法だ。まさに佐藤賢一節の真骨頂ともいう内容。


    シンプルな行動原理をもった(それ故に理屈よりも実践が先に立つ行動的な)いわゆる天然タイプの主人公を描くにあたって欠かせないのが、それを効果的に際立たせるサブキャラクターである。多くは「その才能と行動力に嫉妬。キーッ!」という、『アマデウス』におけるサリエリのような役所になるわけだが、本作ではその役にヴィクトル・ユゴーが配置され、良い味を出している。


    佐藤賢一はナポレオンを題材とした小説は書かないのかな? 
    なんかすごいの温めてそうなんだけど。

  • ●『黒い悪魔』に続く、アレクサンドル・デュマ一族の歴史第二弾。
    前章はナポレオンと同時代を生きたハイチ生まれの“黒い悪魔”デュマ将軍の物語でしたが、今回はその息子であり、「血湧き肉躍るとはこのことだ!」=『三銃士』『モンテ・クリスト伯』を後世の我々の為にモノしてくれた“褐色の文豪”デュマのお話。
    けっこう楽しみにしてたんですよっ。  

    ●・・・・・・・・・・・『カポネ』よりは面白い。でも、『黒い悪魔』ほどは面白くない。
    どうしちゃったんだ佐藤さん。
    なんだか、かつての作品ほど勢いがないような気がするぞ。
    私が、記憶を美化しすぎなのかもしれないけど、でも、『王妃の離婚』にせよ『オクシタニア』にせよ『二人のガスコン』にせよ、もっとカタルシスがあったような。
    だいたいが小心なくせに、絶妙のタイミングで爆発的に行動する主人公のハチャメチャっぷり(・・・)が、以前にくらべると抑えられ気味。うーん・・・。 

    ●私が佐藤作品に勝手に抱いてたイメージは、「世間知らずの主人公が若さに任せて野心を抱く(少年期)」⇒「ちょっと失敗する」⇒「その失敗を生かして大成功!(青年期)」⇒「さらに成功!!」⇒「なんだか周囲にも祭り上げられて大騒ぎ!!!??(壮年期)」⇒「でもなんだか徐々に落ち目に」⇒「さらにかつての反動のようにズンドコへ」⇒「さらにいろいろあるけど、最終的には満足できる人生でした。(老年期)」(大団円)
    なんですが、今回は青年期からいまいち世間と折り合いをつけすぎって言うか、くたびれた大人感が漂ってるとでも言いましょうか・・・。
    そりゃ私もトシくったし、いつまでも若さに任せて無茶ばっかしする連中に肩入れしてる気分でもないですよ。
    そんな世の中都合よく行くかい、ってよくツッコむし。
    でも、ねえ・・・大志を抱けとは言わんが、うーん・・・。 

    ●冒険歴史小説として閉塞感なく行っといてほしかったです。残念。

  • いつもの読ませる勢いがなかったのが意外。冒険活劇みたいなところがなくて、作風が変わったのかなと思った。でも、彼の文章がやっぱり私は好きみたいです。

  • いや、出だしと中盤と終わりに掛けての速度がだいぶ違う。
    最後のほうは正直つらかった。
    ダラダラ感が正直否めなかった


    何を隠そう、
    「三銃士」は好きな本三本の指に入るというデュマ好き。
    「二人のガスコン」が面白くって一日で読み終えてしまったためにその勢いで着手しただけにとっても残念でした。
    デュマの人生はよくわかりましたが小説としてはイマイチ面白みにかけるところがあるな、
    でもいちよう史実なのかな?
    では仕方ないか、


    天才だが破天荒。
    なんとなく「二人のガスコン」を思い出しダルタニアンとか出てくるとか勝手な期待を持ってしまったぶん………うむ、


    作者のデュマへの思いはわかりましたが
    新書とかで出せばよかったのかなって思います

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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