まほろ駅前多田便利軒

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163246703

作品紹介・あらすじ

東京のはずれに位置する"まほろ市"。この街の駅前でひっそり営まれる便利屋稼業。今日の依頼人は何をもちこんでくるのか。痛快無比。開巷有益。やがて切ない便利屋物語。

感想・レビュー・書評

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  • 今年最後の一冊になりました。

    ドラマや漫画になっているのは知ってましたけど
    いや中々良い話じゃないですか。

    ちょっと「傷だらけの天使」を思い出しました。


    今年一年たくさん読みました。
    来年も楽しいレビューでみなさんと語り合えるのを楽しみにしています(^ ^)

    あら?年明けちゃった笑
    今年もよろしくです♪

  • 便利屋を営む多田の元に、高校の同級生・行天が転がり込んできて・・。
    仕事を通じて、困難に直面しつつも再生し自分を取り戻す作業を続ける2人。
    持ち込まれた仕事の面倒な状況に首を突っ込み、面倒な人間関係に関わるうちに、
    結局、多田は自分の内面にしまっておいた、封印しておきたい過去の出来事に
    向き合わざるをえなくなる。


    さて、2人(行天は気が向いたときに、ポイントを押さえた仕事をする程度なのだが)が
    扱った仕事の内容は、

    ペットの世話
    犬の引き取り先探し
    塾の送り迎え
    恋人のふり
    高校生の身辺警護
    納屋の整理

    様々な仕事内容もさることながら、仕事の依頼人もずいぶん変わっている。
    娼婦のルルとハイシー。(なんだかかわいい。ビブリアにも、似た雰囲気を持つ人が
    いたような。)
    小学生の由良公
    クスリの売人・星くんと高校生の清海
    木村さんと北村君

    そして、同級生の行天。
    謎の多いこの人は、痛めつけられたことで言うことを聞かなくなってしまった
    獰猛な犬のようでもあり、
    人の好さやためらわずに人の懐へぽんと飛び込める人懐っこさも併せ持つ。
    身近にいれば、近づき難い雰囲気を持っている人なのだろうが、
    本で読み、第3者として眺めていれば魅力のある気になる人だ。


    行天の元妻の凪子がいう。
    「愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを
    相手からもらうことをいうのだと」(P191)


    最近聞いたんだよね、こういう言葉。誰からだったろう・・・。
    そうだ、言ったのは年下の友達だった。
    「『幸せになる』って人はすぐ言うけどさ、幸せは『なる』ものじゃなくて、
    『感じる』ものなのにね。」
    「なるほど。メモしておかなきゃね」と私は笑いながらも、とても感心したのだった。

    どちらも能動的な自分の態度や積極性が生み出すものではなく、
    太陽の陽射しを浴びて、じんわりとした温かみが伝わってくるように、
    相手によってもたらされるものなのだ。
    対象となる人がいても、必ず与えられるものではないだけに、
    もたらされたとき、そこに喜びと感謝の気持ちが生まれるのである。

    • kwosaさん
      nico314さん!

      nico314さんのレビューの素晴らしさもさることながら、

      >「『幸せになる』って人はすぐ言うけどさ、幸せは『なる...
      nico314さん!

      nico314さんのレビューの素晴らしさもさることながら、

      >「『幸せになる』って人はすぐ言うけどさ、幸せは『なる』ものじゃなくて、
      『感じる』ものなのにね。」

      名言じゃないですか!
      その「年下の友達」さん、ただ者じゃないですね。
      いかん、メモ、メモっと......

      あっ、もしかしてこの方が「かなわない」お友達ですか?
      2013/05/20
    • nico314さん
      kwosaさん、コメントありがとうございます!

      そうなんです!
      旅行先で同室になり、夜遅くまで話し込んで眠る時に、
      布団の中でそっ...
      kwosaさん、コメントありがとうございます!

      そうなんです!
      旅行先で同室になり、夜遅くまで話し込んで眠る時に、
      布団の中でそっと手を合わせて「よい1日をありがとうございました!」と
      心の中で感謝している気配をお互いに感じて、
      距離がぐっと近づいてまたまた話し込んだのが、
      親しくなったきっかけだったんですけどね。

      愛情にあふれ、懐の深い人で、魅力的な人なんですよ!
      仲良くなれて、いやいや、出会えて本当に良かった!!
      そういう気持ちを抱かせてくれた人です。
      2013/05/20
  • 心に傷を抱えた男2人。でも2人でいることでお互い救われているのかも。
    物語は淡々とした表現で進んでいくが、物語の内容はドラッグがあったり、DVがあったり、ネグレクトに近いものがあったり…。
    多田が抱えた心の傷は、重かった。
    チワワのハナちゃん、コロンビア人のおねえさんに渡して大丈夫?なんて思ったけど、行天の『誰かに必要とされるってことは、だれかの希望になるってことだ』って言葉に納得だった。

    番外地、狂騒曲とあと2作あるようなので、ぜひ読んでみたい!

  • 不器用な男たちが、辛い過去を背負いながらも、前向きに生きていく姿は美しい。
    「まほろ市」はマボロシか。

  • 東京の外れにあるまほろ市の駅前にある多田便利軒

    引っ越しの手伝い、犬の散歩、車での送迎から庭の草引きまで何でも請け負う便利屋を営む多田の所へ転がり込み居候を決め込む高校時代の同級生行天

    二人といろんな仕事を持ち込む依頼人との悲喜こもごもの物語 依頼人のキャラもバラエティーに富んでいて愉快だ

    二人の会話はとてもお気楽そうなのに、それぞれが心に深く暗い闇を抱え固く閉ざして、入り込むことを拒絶している
    仕事はとても丁寧だけど、顧客とはそれ以上でもそれ以下でもない 誰も寄せ付けずいつも孤独な多田

    無気力で勝手、他人も自分の存在すら認めてない行天

    まだ若いのに一体何があったのだろうと気になりながら読み進めた

    いろんな事件や仕事をこなしながら、お互いがなくてはならない存在になっていく過程は、読者にとってもうれしい

    「だれかに必要とされるってことは、だれかの希望になるってことだ」

    「いくら期待してもおまえの親が、おまえの望む形で愛してくれることはないだろう。だけど、まだだれかを愛するチャンスはある。与えられなかったものを、今度はちゃんと望んだ形でおまえはだれかに与えることができるんだ」

    二人の口から発せられる言葉もかっこいい

    少しはお互いの存在を認めあうことができた二人の今後は、次巻のお楽しみということで

  • 久しぶりの再読。
    やっぱりこのシリーズは好き。
    刹那的に生きる行天と過去の傷を引きずる多田。
    二人のアンバランスなようでピッタリのコンビが良いし、脇役キャラも良し。
    娼婦の二人や闇の男・星や、バスの間引き運転摘発に燃える岡など、これからの絡みも楽しみ。
    ハードボイルドなところや人情めいたところ、センチメンタルやコミカルなど様々な雰囲気が楽しめる。
    続編も読んでいこう。

  • 再読。三浦しをん氏の小説の中でもお気に入りの一冊です。と、いいつつも、内容はうろ覚えでしたが…。
    何かを背負っている多田と行天。二人の関係は友情なのかなんなのか、とても良いです。しをん氏の小説は、なんかバックグラウンドに暗いものがあって、その暗さがなんとも言えず、私は好きなんですが。
    シリーズ、もう一回、読みたくなってきました。

  • 映画のチラシを見て、気になり読んでみました。 かなり、面白かった! 主人公(多田)と転がり込んできた(行天)のコンビ。 個性的で性格の違う2人。 共に闇や秘密を抱えた者同士、お互いの個性で少しずつ傷を癒やしていく。 お互いを必要とする。 そんな微妙な関係が好き。 明け方、少し太陽が出てきて、まだ薄暗いような、この物語にしかない空気感がすごく好き。 私も一緒に働きたいと思いました。 番外編も読んでみよう!

  • まほろ駅前番外地がドラマ化されたので今頃だけど原作を読んでみた。
    仕事は一生懸命なんだけどどこか飄々としている多田と
    多田の元に突然転がり込んできたかつてのクラスメイト・行天。
    この行天が多田に輪をかけて変人で 始めは二人のキャラに馴染めなかったけど
    様々な客からの依頼をこなすうちに 多田と行天の二人の過去が分かって来て 決して仲良くはない二人なんだけど絶妙なコンビに見えてきて
    笑いさえ生まれてくるから不思議だ。
    客との依頼にまつわる悲喜こもごもかと思いきや 結構危ない場面が多くて流血沙汰も@@
    後ろ暗い過去を持ち自分は孤独だと思う二人も次第に人の輪の中で生きてるのだと思えたラストはちょっと励まされた。
    サブキャラですが施設に入ってる曾根田のおばあちゃんの予言や路線バスが間引き運転しているに違いないと言って聞かない岡さん。面白い。
    番外地にも出てくるのかなあ。続編早く読みたい。

  • 便利屋を営む多田と高校時代の不思議な同級生・行天が、様々な依頼を請け負いつつ自身の過去を明らかにしていくストーリー。
    過去に色々抱えていても、その傷は癒えなくても、生きている限り新たな幸福を見つけることはできる。そんなことを不器用な愛情で二人が示している。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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