刺繍天国

  • 文藝春秋 (2006年2月21日発売)
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本 ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784163247007

感想・レビュー・書評

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  • 『日曜農園』の空気感が良かったので、こちらも読んでみた。

    中篇と短編、それぞれ1作ずつ。 芥川賞候補になった中篇は、恋に縛られていく女性を蜘蛛の巣の中の蝶になぞらえて描かれている・・・と書くとシリアスに聞こえるが、大きな事件が起こることもなく静かにおだやかに話は進む。

    『日曜農園』を読んだときにも感じたけれど、どこか掴みどころのない、地上5センチくらい上をふわふわ浮いているような、リアルなんだけど現実からほんの少しずれているような感覚に陥る作品世界。

    ごく普通の男女の恋愛(もしくは恋愛一歩手前)が読みやすい文体で描かれてすいすい進んでいくのだけれど、実は濃密な、一度足をすくわれると逃れることができない粘着質な空気が一貫して流れている。気づいた時には蜘蛛の糸にがんじがらめになっている。それに気づかない主人公に少しホラーを感じる。

    • ぽにーさん
      読後の今感じている感覚が見事に表現されていて驚きました。まさにこんな感じです。そのホラー感がふわふわした読後感を生んでいたんですね。
      読後の今感じている感覚が見事に表現されていて驚きました。まさにこんな感じです。そのホラー感がふわふわした読後感を生んでいたんですね。
      2019/11/11
  • 職場にやってきたコージ君とどうにかなりたくて、意外にもあっさりコージ君は家にやってきたと思った日から、すべてが変わった。

    コージ君は会社に来なくなり、自分の店をといって、刺繍のオーダーをもらう仕事を始めた。
    朝晩関係なく、手作業で刺繍していくコージ君を応援しようと会社の備品すらも盗んで協力する私とコージ君の関係。

    他短編。
    電話で互いのことを話し続けてきたかつての同級生の男女が、大阪万博で再会を試みるまで。

    タイトルからもっと静かで優雅な生活が書かれているのかと思いきや、全然違ったw

  • メンヘラ女の話が2本。とても読みやすくて一気に読んでしまった。「恋蜘蛛」は、昔付き合っていた男に対する自分の病み具合を思い出さざるを得なかった(この物語のコージほどの素敵な男では全くなかったが)。やはりみんな通る道なのだろうか。当時の自分をなぞっているかのようだった。「愛・弾丸ツアー」の方が恋として成熟している、というより純粋で正しいものといえるだろう。会うまでの時間を指折り数える感じ、直前になって気が狂いそうになる感じ。携帯電話を持たない時代の、電話やデートの尊さを改めて噛み締めたい。

  • 理屈ではない、恋心に動かされる2人の女性のお話。
    スッキリしないけど、心地悪くはない不思議な読後感。
    文章が綺麗で読みやすく、あまり共感できないはずの主人公達になりきったような感覚で読めた。
    1つ目の話は特に、いろんな物がメタファーとして散りばめられていてとても面白かった。

    刺繍にのめり込んで主人公を置き去りにするコージくんにがんじがらめになるチエコ。でも初めにコージ君を狂わせたのは、下心からくるチエコの笑顔だったのでは。
    たぶん、コージ君も初めからチエコのことが好きだったんじゃないかなぁ。下手に画策しなくても手に入ったかもしれないのに、頑張り方を間違えて自分で狂わせちゃった感じだなぁと思うと、さらに切ない。

    2話目ははじめ別の物語だとわからず、しばらく頭にはてな浮かべながら焦ったく読み進めた。終わり方が少し物足りなかったが、二人の関係性や主人公の空想の描写が独特の世界を醸し出していて面白かった。
    2つとも続きを想像したくなる。

  • 中学を卒業して以来十数年一度も会っていないのに、誰よりも存在を近くに感じる男。
    恋心を抱いていたゆえ誘い込み致してみた結果、そのまま部屋に居ついてしまった男。
    ふたりの女が語る、ふたつの恋のお話。中編二編が収録された一冊です。

    「こんなに幸せでいいのかな…」涙ぐむ彼女に対して脳内でツッコミを入れてしまう。
    相手が変われば恋の中身も変わる。正解なんてどこにもなくて、端から見れば間違いにしか思えなくても、当の本人は何より幸せだったりする。第三者の意見なんていらないのです。
    恋は自分だけのもの。時には相手の想いすら関係なく独りよがりなものなのだと思う。

  • 15/04/11
    二つ目の『愛・弾丸ツアー』のホッチンとオカモン。35才のふたりの会話が学生時代に戻ってて幼くてかわいかった。ラストも甘酸っぱいです。意気地無し!と言いたい気持ちもあるけどこれで良かったともいえるのかな。


    P148-149
    「わたしはいちはやく天寿を全うするつもりよ。それで彼女たちが睡る北枕にいちばんにかけつけて、お迎えしてあげるんだから」
    「それじゃ、オカモンのことはオレが迎えにいってやるよ」

  • 漫画を読んでるような気分になった。
    共感も現実味も感じられないけど装丁がとても合ってると思った。

  • 装丁がとてもきれいな本。
    「恋蜘蛛」、とても良かった。
    自分から飛び込んで、蜘蛛の糸に絡み取られるようにずるずると彼という存在に縛られて逃げられなくなっていく。
    感情移入はできなかったけど、人間ってこうだなと思った。

  • 「恋蜘蛛」「愛❤︎弾丸ツアー」


    どちらの登場人物も常軌を逸脱している感じが堪らない。好きだなー。

    でもでもラストに物足りなさもあり。
    でも、しつこくぎっちり終わらせるのも違うと感じているので、こーゆー終わり方がいいのかなとも思う。

    漫画家さんである時を記憶出来ててちと嬉しい。

  • ■胸に蝶、プリズム・スパンコールとビーズの。こんどの恋は逃さない。恋のすべてが描かれたふたつの小さな物語。

    ■■正直、この恋はしんどい。読んでてそう思うんだから、やってる方だってしんどいに決まってる。でも、そうゆう恋ばかりしちゃう人もいるんだろう。男が悪いのか、本人がそんな体質なのか。自分には無理だ。心にも体にも悪そう。読みやすく、面白かったけど、ちょっと読後感は脱力かな。
    表紙が可愛い。

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