風に舞いあがるビニールシート

  • 文藝春秋 (2006年5月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784163249209

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの森絵都さん。宇宙のみなしご以来、約一ヶ月ぶりです。久しぶりに読んだことない森絵都さんの本を見つけたのでついつい吸い込まれるように手に取っていました。
    風に舞い上がるビニールシートというタイトルも気になりました。読んでみると六編の短編集でそれぞれの世界観どれも良いもので面白かった。

  • 男性が少女に覆いかぶさって息絶える画が、脳裏に焼きついている。森絵都の名前をふと目にしたときにその情景がよみがえり、学生時代ぶりにふたたび手に取ってみた本作。
    DIVE!の他、児童文学の印象が強い森絵都さんだが、この短編集の主人公は三十代が多い(今思えばよくこの本を学生時代に読んだな)。捻りの効いた着地あり、温かみを感じる結末あり、すべて短編なのだがどれも長編を読んだような満足感がある。文章も上手い。少し堅い言い回しを使い、読みやすい。こんなに上手な方だったのかと再発見。好みの作品を挙げたいところだが、どの作品もそれぞれ味があって甲乙つけ難い。けれどその中でもやはり表題作は飛び抜けて強烈な印象を残す。二十年前の作品とは思えない、古さを感じさせない作品。むしろ今の時代にこそ、改めて多くの人に読まれてほしい。

  • 短編6つのお話でした。
    どのお話も終盤で、見方がガラッと変わる感じがありました。守護神とジェネレーションXと風に舞いあがるビニールシートが良かったです。

  • 短編集。最後の表題作が一番好きかなぁ。
    なにかに入れこんだり、夢中になったり、愛したりっていう行為は、客観的にみると一般的なことからズレた場所を、まっすぐ進んでいるようなものなのかもしれないと、この短編集を読んで思った。
    このままどうなってしまうのか、読んでいると不安になるくらい、真っ直ぐに、人も物語も突っ走っていくけれど、落ち着くところにおさまる。

  • 素晴らしい短編集。
    森絵都さんの多岐にわたる関心と好奇心の程が伺えた。
    そして一つ一つの短編に、前を向こうと頑張る者に向けた暖かい眼差しと、人間の可能性を祝福する姿勢が表れている。
    とくに仏像の修復師の物語『鐘の音』と、本書タイトルの『風に舞いあがるビニールシート』が好き。

  • 森絵都さんの短編が6つ収められた作品。

    どの話も決して明るくはない話題を重すぎない筆致で綴られ、
    最終的には少し光が差し込む感じにまとめられているので、読後感がよい。

    どの話の主人公も、
    情熱、というと大袈裟かもしれないけど、それを傾けられる何かがあって、
    そこへのアプローチは様々だけど、
    等身大の愛すべき人々でした。

    かつての私も、夢中になって追いかけるものがあって、
    でも、1つかけ違えたボタンによって、
    夢中が故に自分を傷つける結果になりました。
    今は方向転換をし始めるタイミングにいるので、
    「鐘の音」には他の話とは違う共感と希望を抱きました。



    でもやっぱり一番ぐっと来たのは風に舞うビニールシート。
    国連難民高等弁務官事務所という、もはや一般企業の常識の範疇を超えた、
    ある種の使命感なくしてはできない仕事をとりまく家族の感情が、どんどん心のなかに入ってきました。
    当人が言ってる意味は頭ではわかる。でも、家族の立場で、心からの納得は簡単にはできない。
    そこから、物語のゴールに向かっていくときの心の機微がとても自然でした。

    中学生以来に久々に森さんの小説を読みましたが、やはり好きな作家さんです。

  • 少し内容が難しいなと感じるものもあったが、
    「器を探して」は続きが読みたいと思う短編だった
    ⭐︎⭐︎⭐︎
    あまりにおいしいものと出会うと、弥生は泣きたくなる。
    生まれてきてよかった。

  •  森絵都さん3冊目。いや2冊目だ。2冊目だと思って読んだのは1冊目の再読だった。途中で既視感に“もしや”と思ったら1年前に読んでいたという情けない状況だった。
     この本は6つの短編集。前2章は少し面倒くさかった。自分に興味のない話題で展開する話だったから。
     3章で少し面白いと思い。この作者のうまさを感じた。そして後半3章は圧倒された。
     「ジェネレーションX」は前半イラつく内容ながらだんだんと引き込まれ、訳が分かってくるにつれてすっかり話の中に入り込んでしまった。主人公の経歴が出来過ぎていて少し鼻白むけれど、まそれでも読み終わると余韻が残り、その余韻を楽しむために次の章を読むのがためらわれた。
     そして最後のこの本の表題にもなった「風に舞あがるビニールシート」もいい話だった。最後の主人公の決断に拍手喝采!
     紛争最中にある危険地帯に赴いていく主人公の夫君。主人公は平和で仲睦まじく暮らす生活を望む。誰だってそうだ。でも、訴える彼女を置いて彼はまた出かけてゆく。
     日本人は平和ボケしてしまい、世界で困窮している人たちの実情に目を向けず、耳を傾けないでいる。そんな私たちにそれでいいの?と問題を投げかけているのかもしれない。
     前三章はしんどかったけれど、それでもよく調べているなぁと感心することしきりではありました。あらためて素晴らしい作家さんです。ハイ。
     えっ?直木賞受賞なんだ。

  • 6編の短編からなる短編集。最初の「器を探して」「犬の散歩」を呼んだ後、「風に舞いあがるビニールシート」までとばしてしまった(正直あまり刺さらなかったので)。
    ただ、「風に舞いあがるビニールシート」には考えさせられた。難民問題に向き合う夫とその夫を心配し、2人で平和に暮らしたいと願う妻。
    『私は富める国に生まれた大多数の人たちと同様、貧しい国の惨状から目を背けているだけだ。』
    『ああ、やはりこの国は平和でいい。平和ボケ万歳だ、望むところだ。平和ボケは美しい。ボケでもなんでもすばらしい。どうかこの美しさが、すばらしさが永久に続きますように。』
    日本で暮らしている自分も当然「富める国に生まれた大多数の人」。教科書やテレビなんかでは見るけど、本当は見ようともしていない貧しい国の惨状。そんな平和ボケしたすばらしい世界…。
    最後の最後で、妻は夫が死んだアフガンへ行きたいと志願する。夫の人格を形成した幼少期の環境や、それを知らずにおり、死後に知った妻にどんな心情の変化があったのか、思わず考えてしまう。

    想像以上に惨い苦しい世界があることを知った上で、日本にいる私たちはしっかりと平和ボケして、平和ボケした世界をちゃんと「すばらしい」って言っていかなきゃいけないな、と思った。

  • 6つの短編小説から成る物語

     ひとつひとつの作品が短編とはいえ 十分な読み応えを感じさせるのは 著者の森さんが持つ深い知識と作品を書くにあたって調べ上げたであろう情報量の多さに他ならない

     6話はどれをとっても面白く読後感が良い

    ◯『器を探して』の作中に『釣具小鳥将棋碁麻雀』というのが出てくるが こういう発想に感心する

     『一口含んで、泣きたくなった。昔から、あまりにもおいしいものと出会うと、弥生は泣きたくなる。生まれてきてよかった。そうつぶやくと周囲は大袈裟と笑うけれど、「食」とは人類に最も手短な、そして平等な満足と幸福をもたらす賜りものであると信じている。』
        (器を探して の文中より)

     同感!
    そうだ そうだ!
    『衣食住』というが 『食』は人の体ばかりか心もつくりあげる

    ◯『だから、私の中にいつもあるのは、自分はこの犬たちの一割を救っているんだって思いじゃなくて、ここにいる九割を見捨ててるんだって思いなの』
       (犬の散歩 の文中より)

     ボランティアをするにあたって してあげているという優越感ではなく これしかできないけど自分のできることはしっかりさせていただくという使命感がある人間がいることが素晴らしい
    ボランティアの真髄を問う物語でもある

    ◯『守護神』では 「伊勢物語」や「徒然草」の解釈や考察が面白すぎだった

    ◯『鐘の音』は仏像の話が大変興味深かった
    私の父は丸太の木から仏を彫り起こす作業を趣味にしているからなおさらだ
    仏を彫るも 修繕するも 仏の御魂を移す儀式も 全てが厳かでドラマチックだった 
    だからこそ プラモデル用の接着剤や 最後の鐘の音のくだりはクスクスっと笑えて楽しかった

    ◯『ジェネレーションX』ではオチがあるに違いないと
    想像力を駆使して読書を楽しんだが 私の想像力を超える明るいオチが待っていた

    ◯『風に舞いあがるビニールシート』は 表題作なだけあって 濃厚なメッセージ性をはらんだ物語だった
     
    『もう君は聞き飽きたと思うけど、僕はいろんな国の難民キャンプで、ビニールシートみたいに軽々とばされていくものたちを見てきたんだ。人の命も、尊厳も、ささやかな幸福も、ビニールシートみたいに簡単に舞いあがり、もみくしゃになって飛ばされていくところを、さ。』
      (風に舞いあがるビニールシート の文中より)

     『誰かを助けたい』って思いがあっても 自分の身に危険を呈しても行動に移すっていうのは 誰にでもできることじゃないよなって思う
     『助けたい』と思っただけでもすごい
     『それについて知ろうと学ぶこと』…それもすごい
     でも そこに体ごと突っ込むっていうのは 死ぬかも知れないけどそれでもいいって覚悟で 
    私はそういう人間を 本当に尊敬する
    作中の彼女が最後にそう決断した全ては 最高の愛情を
    得たからに違いないと思う

     やはり 『愛情』を受けた人は 強くもなり 優しくもなれるのだと思う


     短編はあまり好き好んで読まないけど 今回この本は出会ってよかった
    朝 仕事にいく前の数分間ができた日に ちょっとずつちょっとずつ読み進めるのが楽しかったな

     

  • 市井に生きる普通の暮らしをする人、国際機関で働く非凡な暮らしをする人…様々な人の心模様を森絵都さんならではの視点で描いている。
    大人向けの本だが、何故これが中学校の図書館にあったのだろうか。

  • 図書館で気になる題名と思って、手に取ってみた。
    短編集で、どの作品もいろんな立場の方の話で興味深く読み進められた。
    友人にも勧めたい。
    森さんの作品をまた読んでみたいと思った。

  • 『器を探して』
    憧れてたはずの人から逆に、あなたについていけるか不安だよ…と言われてしまいはっとするくらい真っ直ぐで本気度が強すぎる主人公に共感、というかなんというか。

    『犬の散歩』
    “午後三時。傾きだした陽が分刻みで万物の色を移ろわせていくその時間帯”
    なんて綺麗な文章。なんて綺麗な描写。

    『守護神』
    これ大好き!

    『鐘の音』

    『ジェネレーションX』

    『風に舞いあがるビニールシート』
    愛する人と結ばれたのにどうしようもなくて別れることになってしまったとき、、、
    エドの「悲しくない悲しくない」とワニ人形と共に言うシーン、悲しかったよー

  • すごく頭がいい人だと思う。どの作品も専門知識がしっかり調べられていて、知識の羅列にならずにしっかり物語の核に絡められている。ただ、その頭のよさ、隙のなさが圧となって息苦しさを感じることもあり。

  • 短編集。どの話が良かった?と聞かれても正直どれもあまり印象に残らなかった。ただ、それが悪い印象かといえば違う。どちらかと聞かれれば間違いなく、良かったよーと答えると思います。こんな読後感は初めてかも。うーん、なんだろう。無色透明、無味無臭な感じ?

    話の内容は、先が気になって止まらないとかワクワクしたりなんて無かったのですが、最後の何行かでとても良い終わり方になっていると思います。渇いた身体に水がすーっと染み渡る様なスッキリ感がありました。

    森絵都さん、物語のラストの締めくくり方がとてもうまいです。

    器を探して/犬の散歩/守護神/鐘の音/ジェネレーションX/風に舞いあがるビニールシート

  • 森絵都さんってこの表題作で直木賞をとっていたんですね。
    この本は短編集だけど、表題作は彼女の作品の中でもそんなによかったかなぁ?という印象です。自分は断然、仏像修復師の「鐘の音」がよかったです。

    という個人の好みはさておき。
    すべて「働く」ということについて模索・葛藤・邁進する様子を描いた短編集で、さまざまな仕事が垣間見れて愉しかったです。

    「器を探して」は、人気パティシエの秘書として無理難題をこなす女性の話。パティシエ本人は難ありだけど、作り出すケーキがすばらしいという。わかるわ〜としみじみ。笑 これだ!という美濃焼に出合うところがドラマティックでよいです。

    「犬の散歩」は、殺処分されるわんこのボランディアをするためにスナックで働く女性の話。牛丼で価値観をはかる先輩を思い出して、わんこのエサで価値観をはかるのがわかりやすくて参考になりました。笑

    「守護神」は、文学の勉強に励む勤労大学生の話。これだけ勉強することが仕事の学生ですね。主人公は勤労といってもアルバイトなので片身が狭く、一見ちゃらそうなのだけども、『伊勢物語』や『徒然草』を独自の視点から読み解く姿がかっこうよかった。それを考察する働く大学生の守護神、ニシマミユキさんも素敵でした。

    「鐘の音」は、自己顕示欲の強い芸術家肌の仏像修復師の物語。若さ故に師匠とぶつかったり他人を見下す描写などが、中島敦の作品を思わせる渋さがありました。最後の吾郎は子どもを授からなかったというのは、人生の対比としてわかりやす過ぎて不要のような気もしましたが。しかし、この中では一番好きな作品ですね!

    「ジェネレーションX」は何歳になっても、結婚しても、子どもができてもバカができるような大人でありたい、という男の子の夢ですね。高校時代の野球部で10年後に集まろうという約束を果たす前日の話。みんながさまざまな人生を歩んでいて、その姿を年上の主人公が眺めているのだけど、最初は諦めに似た感情を抱いていた中年会社員が、取引先の今ドキの社員を見て奮起するみたいな。気持ちのよい作品で、セリフでの話の進め方とかが「守護神」に似ているかな。

    で、表題作は、難民を救うために国連で働く夫婦(というか元夫婦?)の話なんだけども……。ちょっと短編で扱うには感情移入しにくいなあ、というのが本音です。二人の結びつきがよくわからなかった。物語的に破綻しているわけではないですし、むしろよくできているけれども。自分が平和ぼけしているせいですかね。

  • 初読

    森絵都作品二作目。
    やっぱりこの人の作品好みーっ!

    甘辛のバランス良く読み易い。
    特にこの短編集は題材のバリエーションが豊か。

    天才女性パティシエの秘書の『器を探して』
    社会人学生専門論文請負人の『守護神』
    難民支援機関職員の表題『風に舞いあがるビニールシート』
    が特に気に入ったけど

    犬の保護活動の『犬の散歩』はあらあら綺麗ないいお話?と感じたけど
    (それだって犬好きの私は絶対嫌いじゃないのだけど)
    ギリギリでそれだけに傾かないバランス、
    仏像修復士の『鐘の音』の精神状況、密室劇のような『ジェネレーションx』、
    外れゼロ!

    私にはまだ森絵都さんがどういう人なのかわからない。
    作家の主張、本人が作品に出ずにはいられない(それがその人を作家たらしめているのだが)
    特に女性作家はそれが一度鼻につくとそのまま受け入れ難くなってしまうので
    そうはならずゆっくりと読んでいきたいなぁー

  • あまりにもつまらないので、途中でやめた。これが直木賞?

  • 大人向きに書かれるとこうなるのかという森絵都の世界。大人って色んな細かな事実を知っていて気がついちゃう、更に知らない世界を知りたいとも思う、情報の渦の中にいるんだねえ…と改めて感じました。役に立つ物ばかりではないんだけど!最初のうちは森絵都らしさが薄いかなとも思いましたが、そんなことはありませんでした。大切な物にこだわって生きる大人達。子供よりも長い年月こだわり続けることもあるから奇妙に逸脱してしまうこともあるのですね。それでも新たな方向へ向かっていく勇気。この暖かさと強さ。痛む傷口を洗って風に当てて自然に乾かすような穏やかな視線。さすがです。

  • どこに進んでいるか分からなくても、一歩さえ踏み出せば自ずと道は決まっていくし周りも助けてくれる。決断をすることは難しいけれど、まずは自分を信じて自分の進みたい方に向かってなにか行動を起こしてみることが大事だと思った。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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