風に舞いあがるビニールシート

著者 :
  • 文藝春秋
3.58
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本棚登録 : 2624
レビュー : 554
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163249209

作品紹介・あらすじ

愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、今日も思っている。大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。どの話が良かった?と聞かれても正直どれもあまり印象に残らなかった。ただ、それが悪い印象かといえば違う。どちらかと聞かれれば間違いなく、良かったよーと答えると思います。こんな読後感は初めてかも。うーん、なんだろう。無色透明、無味無臭な感じ?

    話の内容は、先が気になって止まらないとかワクワクしたりなんて無かったのですが、最後の何行かでとても良い終わり方になっていると思います。渇いた身体に水がすーっと染み渡る様なスッキリ感がありました。

    森絵都さん、物語のラストの締めくくり方がとてもうまいです。

    器を探して/犬の散歩/守護神/鐘の音/ジェネレーションX/風に舞いあがるビニールシート

  • 森絵都さんってこの表題作で直木賞をとっていたんですね。
    この本は短編集だけど、表題作は彼女の作品の中でもそんなによかったかなぁ?という印象です。自分は断然、仏像修復師の「鐘の音」がよかったです。

    という個人の好みはさておき。
    すべて「働く」ということについて模索・葛藤・邁進する様子を描いた短編集で、さまざまな仕事が垣間見れて愉しかったです。

    「器を探して」は、人気パティシエの秘書として無理難題をこなす女性の話。パティシエ本人は難ありだけど、作り出すケーキがすばらしいという。わかるわ〜としみじみ。笑 これだ!という美濃焼に出合うところがドラマティックでよいです。

    「犬の散歩」は、殺処分されるわんこのボランディアをするためにスナックで働く女性の話。牛丼で価値観をはかる先輩を思い出して、わんこのエサで価値観をはかるのがわかりやすくて参考になりました。笑

    「守護神」は、文学の勉強に励む勤労大学生の話。これだけ勉強することが仕事の学生ですね。主人公は勤労といってもアルバイトなので片身が狭く、一見ちゃらそうなのだけども、『伊勢物語』や『徒然草』を独自の視点から読み解く姿がかっこうよかった。それを考察する働く大学生の守護神、ニシマミユキさんも素敵でした。

    「鐘の音」は、自己顕示欲の強い芸術家肌の仏像修復師の物語。若さ故に師匠とぶつかったり他人を見下す描写などが、中島敦の作品を思わせる渋さがありました。最後の吾郎は子どもを授からなかったというのは、人生の対比としてわかりやす過ぎて不要のような気もしましたが。しかし、この中では一番好きな作品ですね!

    「ジェネレーションX」は何歳になっても、結婚しても、子どもができてもバカができるような大人でありたい、という男の子の夢ですね。高校時代の野球部で10年後に集まろうという約束を果たす前日の話。みんながさまざまな人生を歩んでいて、その姿を年上の主人公が眺めているのだけど、最初は諦めに似た感情を抱いていた中年会社員が、取引先の今ドキの社員を見て奮起するみたいな。気持ちのよい作品で、セリフでの話の進め方とかが「守護神」に似ているかな。

    で、表題作は、難民を救うために国連で働く夫婦(というか元夫婦?)の話なんだけども……。ちょっと短編で扱うには感情移入しにくいなあ、というのが本音です。二人の結びつきがよくわからなかった。物語的に破綻しているわけではないですし、むしろよくできているけれども。自分が平和ぼけしているせいですかね。

  • 初読

    森絵都作品二作目。
    やっぱりこの人の作品好みーっ!

    甘辛のバランス良く読み易い。
    特にこの短編集は題材のバリエーションが豊か。

    天才女性パティシエの秘書の『器を探して』
    社会人学生専門論文請負人の『守護神』
    難民支援機関職員の表題『風に舞いあがるビニールシート』
    が特に気に入ったけど

    犬の保護活動の『犬の散歩』はあらあら綺麗ないいお話?と感じたけど
    (それだって犬好きの私は絶対嫌いじゃないのだけど)
    ギリギリでそれだけに傾かないバランス、
    仏像修復士の『鐘の音』の精神状況、密室劇のような『ジェネレーションx』、
    外れゼロ!

    私にはまだ森絵都さんがどういう人なのかわからない。
    作家の主張、本人が作品に出ずにはいられない(それがその人を作家たらしめているのだが)
    特に女性作家はそれが一度鼻につくとそのまま受け入れ難くなってしまうので
    そうはならずゆっくりと読んでいきたいなぁー

  • あまりにもつまらないので、途中でやめた。これが直木賞?

  • この風変わりなタイトルが直木賞受賞作
    わたしは受賞作・作家だからと言ってことさら読まない主義
    というか興味わかない、へそまがり

    しかし
    話題になったときから読んでおくんだったなあ、という作品は多々ある
    その範囲に入る作家さんの作品であった

    なるほどね
    今に読み継がれる不変の真理を抉る作品群
    短編の名手
    現代版日本の「O・ヘンリー」かもしれない

    わたしの好みで言えばこの6短編収録中「守護神」が一番好き

    大学の第二学部に入学してくる学生たち
    なぜ、働きながらの通学するのか
    さまざまな事情を抱えた学生群像の事情もよく描けているが

    「代返屋」ではなくて「レポート代筆屋」との本気対決が
    学問ならぬ人生を真剣に考えさせてくれる

    働きながらの勉学に時間は無い
    膨大なレポート提出、試験を乗り越えるには
    お手軽な手も使いたくなる

    けれどもこの主人公はお手軽とは程遠くいまじめ学生で
    「レポート代筆屋」に注文しに行くも
    すでに確固たる自説のレポート内容に到達しているのだ
    それを滔々と述べてしまうおろかしさ

    「なら、じぶんで書きなさい!」と「レポート代筆屋」に突っぱねられる
    「あなたは代筆がして欲しいのではない、愚痴をこぼす相手が欲しいのだ」
    とせなかを押されていまや「守護神」になった「レポート代筆屋」のもとを去るのであった

    すべては自分に還るのだとしみじみ思う
    誰かがやってくれるのではない
    全部自分がやらなければ何事も進まない

    なかなかの筆力の作家とみた
    他作品も読もうと思う

  • 素晴らしい短編集。
    森絵都さんの多岐にわたる関心と好奇心の程が伺えた。
    そして一つ一つの短編に、前を向こうと頑張る者に向けた暖かい眼差しと、人間の可能性を祝福する姿勢が表れている。
    とくに仏像の修復師の物語『鐘の音』と、本書タイトルの『風に舞いあがるビニールシート』が好き。

  • 市井に生きる普通の暮らしをする人、国際機関で働く非凡な暮らしをする人…様々な人の心模様を森絵都さんならではの視点で描いている。
    大人向けの本だが、何故これが中学校の図書館にあったのだろうか。

  • 一つ一つの話は面白いと思ったが、全部読み終えてみるとあまり記憶に残っていない。

  • 6つの物語集、私にいちばん響いたのは仏師にならず修復師にもなれず家具職人の道を歩く男の話 「鐘の音」。直木賞受賞の「風に舞い上がるビニールシート」よりも沁みました。

  • 才能あるパティシエについていく秘書、動物愛護のために身を削る主婦、学業と仕事との両立に根を上げそうになる大学生、ある仏像の虜になった職人、10年来の約束を果たすべく奔走する若者、悲しみを背負いながら難民問題に立ち向かう職員、総じて言えるのは皆、「一途」であることでしょうか。

    「一途」には他を省みない危うさがあります。それは、その物事に躓いた時や、その人がいなくなった時に訪れる虚無感とでも言えばいいでしょうか。

    自らのリスク回避的な性格を考えると、「一途」という言葉には縁遠いものを感じます。常に、心の中に何らかの保険を抱えている感覚を持ち合わせています。一方で、「人生何があるか分からないから万事に備えておく必要がある」では、余りに肩身の狭い生き方かもしれません。

    要は、何事もバランスなのでしょう。しかし、現実問題としてニュートラルであることなど不可能です、なので、せいぜい「一途」を敬遠せずに向き合いながら、自分にすり合わせていくことぐらいが現状の最適解であると思います。

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著者プロフィール

森 絵都(もり えと)
1968年、東京都生まれの小説家、翻訳家。早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。
1990年、『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞し、同作は2008年に映画化もされた。2006年、短編集『風に舞いあがるビニールシート』で、第135回直木賞を受賞。
その後も活躍を続けており、2017年『みかづき』で第12回中央公論文芸賞を受賞、2017年本屋大賞2位。同作は2019年にNHKでドラマ化された。それ以外にも、多数の文学賞を受賞している。

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