名残り火

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163249605

感想・レビュー・書評

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  • 「てのひらの闇」の続編。世界がつながってるとかじゃなくてガチ続編だったのでビックリ。

    前作で堀江の友人として登場した柿島が不慮の死を遂げるところから始まる今作。亡くなってからの方が「堀江にとっての柿島」がどれだけ大きな存在だったのか思い知らされてひたすらしんどかった。
    それにしても、人物描写のひとつだと思ってた大原→奈穂子の「絶世の美女」発言が単なるお世辞じゃなく何もかもの発端であり元凶だったとは…どんな伏線やねん…

    柿島奈穂子、薄幸の美女と呼ぶにはラストがとんでもなさすぎるので人物評に困る。ただ、柿島のことを心底好きだったってことは結果が示しているので(柿島はおそらく望んでないだろうけど)しんどいな。
    何もかもが炎に包まれる終わりで、ナミちゃんの結婚という明るいニュースがあって本当に良かった。三上社長頼みますよ!
    ナミちゃん結婚があるかないかで読後感かなり変わったと思うので(堀江大原は現状で進展しようがないし)本当に良かった〜。

    それにしても堀江、今回も闇討ち上等だった上に相手はカタギ奈の最悪だよ!!(笑)
    坂崎の心、堀江知らず。坂崎泣いてますよ。
    というか序盤で奈穂子が言ってた、「堀江は柿島を神聖視しすぎ」ってのはなんだったんだろう。本来なら回収される伏線だったんだろうか。


    実は今作が藤原伊織の遺作だと知らなくて、「てのひらの闇面白かったー!続編あんの?読む読む!」のノリで手にしてしまってちょっと…いやかなり衝撃を受けた。亡くなってることは当然知ってたから遺作があることも把握してたんだけど、その上で覚悟ゼロで読むことになるとは予想外だった。
    今更ながらご冥福をお祈りします。もっとたくさん藤原作品を読みたかったな。

  • 独立系広告代理店を営むの主人公堀江の親友柿島が何もかに襲われ命を落とす。死の真相に不信感を持った堀江は独自に調査に乗り出す。堀江/柿島が前職場タイケイ飲料を舞台にした名作「てのひらの闇」の続編。本作のみでも十分成立する話であるが、前作の主要登場人物がそこここに登場するので、人物描写の厚味という点では前作から読んだ方が楽しめるであろう。アウトロー気味だが義理堅い主人公が過去のしがらみを暴き出す構成は筆者得意のもの。残念ながら本作が遺作となってしまったが、今回も期待通りの水準である。

  • 「てのひらの闇」の続編。前編だけでも十分に楽しめて、特に後編の必要性は感じなかったけど、後編も見事なストーリー展開。ハードボイルド的でありながら、繊細な描写が素晴らしい。この本を出版するにあたり構成等を見直しているときに逝去されたようです。惜しい才能を失った。
    ドラマ化とかされると、いかにも安っぽくなりそうなので、このまま活字で楽しむのが一番かな。

  •  え、星が一つ多い?、そんなことに文句がある人はとにかく本書を読んでからにしてほしい。
     ぼくはこれまで何千冊本を読んだかわからないけれど、どんなに数多くの本を読んだとしても、藤原伊織に巡り合わなかったら、その読書人生は何の価値があるだろうと思う。藤原伊織を読める幸せ、そしてもう読めない悲しみ。それを何といって表現したらいいだろう。遺作とはなんとむごいものか。彼の死の4ヶ月後、2007年9月に刊行された本をすぐに買って、読んでしまうのがもったいなくてもったいなくて、今までじっとしまっておいたのがこれ。もうこれっきりだ。
     この著者の作品に出てくる男は、いや男も女もだ、どうしてこんなにもカッコいいんだろう。「てのひらの闇」の書評に書かれた文章、『「てのひら闇」に出てくる男は皆美しい。呑んだくれでも、エリート社員でも、昔かたぎの極道でも、社会の暗部の泥さらいをしているような敵役でも。それは彼らが皆譲れないものを大切に抱えて生きているからだ。』がすべてを語っている。「テロリストのパラソル」、「ひまわりの祝祭」、「てのひらの闇」、そのどれでもいい、読んだことのある人ならきっとうんうんわかるわかるとうなずくに違いない。彼らの生き方に心を動かされない人がいるとしたら、そんな人とはぼくは永久に他人だとさえ思う。男としていや人間として譲れないもの、ときには法を犯してさえ守らねばならないもの、そのために生きるのでなければ何のための人生か。生きるということは、飯食って糞して寝ることの繰り返しではけっしてない。くっそぉ~オレだって負けないぞ、と生きる勇気が湧いてくる。
     男として、なんていうと怒られるよな。本作の主人公はあの「手のひらの闇」の堀江雅之、そして死んだ盟友柿島隆志。だけど、この物語の最後の壮絶な終幕を演じ切ったのは、ひとりの女性なのだから。心に熱い思いを抱いて生きているのは男も女も変わらないのだろう。ここに登場する三上照和、関根新吉、柿島奈穂子、大原真理、ナミちゃん、それぞれがみんな圧倒的な存在感でそれぞれの人生を生きている。そのひとりに自分も混ぜてほしい、自分の存在もカウントしてほしい、と切に思う。そうでなくて生きる価値などない。

  • 専門的で最初は入りにくかったが中盤から面白くなる。
    堀江のニヒルな弁の立つ会話。
    会社経営で味を出す三上。
    登場人物がとても興味深い。
    特に親友の謎の死を追う堀江を「あんた」呼ばわりした時の
    刑事相手の語りは圧巻だ。

  • あー、もう堀江と大原って、なんていう距離感なんだ〜

    真相やそれに付随する結果は、
    もしかしたら説得力が理屈が弱いのかも。
    でもあまりある程の、キャラクターの魅力で
    先が読みたくて仕方ない。

    特に、堀江・大原のさざ波は、
    立っては消え、生まれそうで生まれない、絶妙なもどかしさ。

    本文に関係ないけど、私の家のすぐ近くに彼らが住んでいる。
    あの商店街で、二人が並んで歩いていたら嬉しいんだけど。

  • てのひらの闇が大変素晴らしかったので購入。

    ハードボイルド作品を読んで、泣きそうになったのは初めて。

    てのひらの闇を読んでから読むほうが楽しいのですが
    たとえ読まなかったとしても、途中途中説明がはいるのでこれだけでも読むことができます。
    …が、多分前作を読んでからのほうがより楽しく読めるかと。
    (しかもあまり間を置かずに…当方は間をあけたため途中「えーと」ってなりました

    この手のハードボイルドものは女性陣がうざったいものが多いのですが
    藤原伊織さんの作品は、比較的うざったい女性が出てこないのが良いです。
    (大原さんは少しだけウザったいですが、腹がたつほどではないですし、ナミちゃんは素敵だし、奈緒子さんは素晴らしい)

    ミステリ的な部分においては
    「うーん」という箇所も数点あるのですが、この作品はハードボイルド物で、さらに人物が大変魅力的であることですべてを昇華できているきがします。

    スカっとさわやか系(?)のハードボイルドじゃないですが
    かなりお気に入りの作品です。


    本当に、藤原伊織さんがすでに亡くなられている事が惜しまれてしかたありません。
    この方の書く作品をもっともっと読みたかったです。

  • 「てのひらの闇」の続編。主人公はもちろん、脇役陣も揃っている。ただし、いきなり柿島が殺されようとは、、、(驚)
    前作から続けて読んだので、登場人物の関係性もすんなり入ってきて読み易かった。単独でも読めないわけではないが、前作から入った方が断然に面白いと思う。新たなキャラ、三上がまたいい味を出していて、堀江と大原の関係の今後の行方など、更なる続編に期待したいところだったのだが、これが作者の遺作だったとは残念。
    最後の菜穂子の心情は分からないわけではないが、切な過ぎるなぁ、、、。

  • てのひらの闇」の続編として、最高に楽しめる作品。

    読みながら、魅力的な登場人物達と一緒に過ごせる時間が幸せ。

  • 遺作。もう藤原伊織の作品は増えないんだ、残念、と思わせる作品。
    「ミュスカデ」飲んでみたくなりました。

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著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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