少し変わった子あります

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163252001

感想・レビュー・書評

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  • 少し変わった子あります、
    もう少し変わった子あります、
    ほんの少し変わった子あります、
    また少し変わった子あります、
    さらに少し変わった子あります、
    ただ少し変わった子あります、
    あと少し変わった子あります、
    少し変わった子終わりました。

    訪れる度に変わる営業場所、店の雰囲気に合った上品な料理、整いすぎて記憶に残らない女将の顔、一度きり食事を共にして去っていく女性たち。

    最終章は予感していたけれど、ぞわりとした。どことなく、川端康成の「眠れる美女」を思い出した。
    食事の所作が美しい女性っていいよね、確かに。字の綺麗な女性とか姿勢の美しい女性に通じる上品さを感じます。

  • 毎回初めての場所で初めて会う女性と食事をするだけなのだが、不思議な魅力があり面白い。建物が毎回雰囲気良さそうで、ドラマとかで観てみたいなぁと思った。

    多少ミステリーだが特に波乱はなく、寝る前に読むとリラックス出来ていいのではないだろうか。

  • 荒木先生、小山先生、磯部先生…。

    私は一人微笑んだ。面白いものだなあ、人生とは……、少なくとも生きているうちは、止まることはない。戻ることも、繰り返すこともない。できないことばかりをいつも振り返って、しかたなく、前に進む仕組みなのか。

  • 世にも奇妙な物語のような面白さ。人間の、孤独の、その一瞬の美しさ。
    少し狂気を持っているような。

    不思議な感覚になり、もう一度読んでみたいと思った。


    「甘美な幻想」というフレーズはぴったりだと思う。

  • もう二度と味わえない空間に酔っているのだろうか。
    新しいもの好きというわけでもないのに。

    この機会は、普段の私生活を誇張しているだけなのかもしれない。
    どんな瞬間であれ、その空間は二度とない。
    移り変わらない同じ場所であっても、時刻、街行く人、気温、体調、精神によって、
    同じ機会は二度と味わえない。

    多くの男性は次を考えるはずだ。
    主人公が女性だったらどんな物語になっていただろうか。


    ※美しい女性がたくさん出てきます。小説なのに?なんて考えを捨てて読みなはれ。

  • これはもう、さすがの森博嗣!

    毎回場所を変えて営業するという不思議なお店に通う主人公の大学教授と、そのお店を教えた後行方不明になった友人の話。
    毎回違う「変わった子」が出てきて、色んな話をしたりしなかったりするんだけど、それが具体的なのに抽象的で、森博嗣の頭の良さを改めて感じました。
    するっと読んでしまうんだけどいつのまにかその世界にからめとられている感じです。

    そして最後の章の破壊力はやばかった。
    これぞ森博嗣!っていうひっくり返し方。
    読み終わった後鳥肌たった。
    これからしばらく森博嗣ブームがくる予感です。

  • 名前も知らない店で、名前も知らない女将のもてなしを受け、
    名前も知らない女性と食事をする。
    謎めいた料理店の“少し変わった”お話。

    久々に森博嗣の切れ味の鋭さを見たな、という感じ。
    こういったものを読むと、森博嗣の凄さを思い出す。

    なんといっても雰囲気が秀逸。
    いくつかの短編からなる作品なのだが、
    どの話も、前半部分の現実的な雰囲気から
    次第に幻想的な雰囲気に移ろっていくつくりになっていて、
    その連続的な変化が実に自然で素晴らしい。
    気づくと知らない場所に迷い込んでいるような感覚。
    だが、まったく知らない場所というわけではなく、
    「どこか違うな」と感じる程度。
    まさに「少し変わった」雰囲気なのだ。

    また、非常につかみどころのない作品で、
    「これは何なのだろう」
    と思い、つかみ取ろうと手を伸ばした途端、
    指先をすり抜けて消えていくような物語。

    つかみ取れないまま終わるのかと思えば、
    最後に、読者の手にふっと感触を残していく。
    その冷たさには少し驚いたし、
    何も残さず消えていくほうが綺麗な気もしたが、
    それでも圧倒的な余韻が残る。

    手にすることが難しいいくつものエッセンスが
    この本を開けばそこここに見つかる。
    森博嗣の思考の軌跡をわずかながら観察できる作品。

  •  
     
    訪れるたび場所が変わり
    食事を相判する「少し変わった子」も変わる。
    そんな謎めいた料理店での一期一会。
     
    淡々と流れ、重なる、ヒヤリな物語。
     
    事件が起こるわけでもなく
    謎が解けるわけでもなく
    「少し変わった子」が
    ものすごく変わったことをするわけでもなく
    食事をしつつ
    他愛のない会話をし
    その時間と空間を楽しむだけ。
     
    最初は少し退屈なくらい。
     
    でも読み進めていく内に
    いつの間にか共感したり、考えさせられたり、
    勝手に会話に参加。
    すっかり同席気分。
     
    そして
    どこまでも続くような
    プツリと途切れてしまったような
    そんなラストにヒヤリ。
     
    全てが何だったのか。
     
    何とも言えない余韻をくれる。
     

  • これぞ森博嗣と思える作品。
    謎の料亭で初対面の女性と2人で
    食事をするシュチュエーションが
    マニアックを超えてをフェッチっぽい。

  • 表紙デザインがとっても素敵な本です。

    推理小説を期待して購入したのですが、読み始めたら、推理小説というか心理学の本を読んでいるようでした。

    でも、文章が読みやすく、分かり易かったので、
    そんな小難しさは有りませんでした。

    ストーリーは、ある一人の大学教諭が主人公。主人公の後輩が行方不明になり、その行方を捜すために訪れた、後輩行きつけだった料亭を訪れます。

    その料亭は必ず一人で訪れなくてはならず、しかも場所が行く度にコロコロ変わります。一人で行く代わりとして、食事の際にはお供に女性がつくオプションサービス付。

    その女性とは、ただ食卓を共にするだけで、会話も少なめ。しかも、行く度に違う女性がお供になるので馴染みになる事さえない。

    そんな不思議なお店で食事をしていくに連れて、主人公の心が徐々に自分の心の闇に気がつき、行方不明となった後輩の心が理解されてゆきます。

    最後の最後でゾクッとしてしまいました(>o<")

    淡々としたストーリーですが、現代人の心の闇を上手く捉えた、奥の深いお話だと思います。読み返すと深みが増すかもしれません。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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