三国志 (第四巻)

  • 文藝春秋 (2006年9月15日発売)
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本 ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784163252407

感想・レビュー・書評

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  • 未だ誰も書かなかった「史実に基づく三国志」に挑まれた著者であるだけに、恐らく膨大な史料を読まれ、史実を検証しつつ、歴史に忠実に筆を進められているのだと思う。

    幾つかの史書の記述に差異があったとき等には、著者が推量を働かせ正しいと思われる史実を選択しているというような記述も、時おり本文中に見受けられる。

    その執筆の忠実さによるものか、登場人物の多さと、表現の難解さ(特に漢字表現の難解さ)に、読者としては少々悩まされる(苦笑)。しかし、その個々の登場人物の心理の変化に伏線があり、後の物語の展開に結び付いていくため、細かな表現を疎かにすると、少しずつ物語の展開に落ちこぼれてしまうので気が抜けない。

    著者が大変な労力を注入して執筆されていることを思えば、読者としても多少は骨を折って読むことを覚悟せねばならいと思う。

    前巻(第3巻)では、中央政府を残虐で獰猛な董卓が乗っ取り、前帝を排し、自ら皇帝(献帝)を立てた。恐れなしの董卓にも、天敵と言える孫堅がおり、孫堅に惨敗した董卓は、洛陽を焼き払い長安へ逃げ込んだ。

    一方、周囲の展開としては、袁術と公孫瓚の勢力、袁紹と劉表の勢力があり、陶謙が新勢力として台頭しようとしていた。

    暴政の根源、董卓を抹殺したいという考えが中央の水面下に起こり、その計画、実行の立役者は王允。王允は、董卓配下の猛将呂布の手により、董卓を誅殺させることに成功した。

    董卓の死は、様々な影響を及ぼす。董卓の残留軍を構成する李傕、郭汜、張済らに、中央を乗っ取られた形となり、呂布は周囲の名士をもとめ彷徨うが真に受け入れららず、最終的に兗州を根拠地とする。

    この頃、黄巾退治で頭角を現してきたのが曹操だ。曹操は、戦って敗れた黄巾兵で望む者には軍への帰属を許し、徐々に軍事体制を強化し、また兵法を習得し、正攻法で強い軍を養成しつつあった。

    巻の前半では、曹操軍が、舐めてかかる袁術軍を撃破し、逃げる袁術を果てまで追跡する場面があり、父親を殺された憤怒の復讐戦で、陶謙軍を完膚なきまでに潰走させる場面ありと、すでに戦闘能力が格段に強化されている曹操軍の姿を見ることができる。

    しかし、そのような曹操軍も呂布のいる兗州が拠点であり、約80城あるうちの3城のみが曹操軍の拠点という劣勢であった。この時の曹操軍の戦いは、衰運の極致にあったと言える。

    「人にどうにもならぬ衰運のときがある。身動きさえできぬ困窮の時間をどうすごしたか、ということが人の成否に大いにかかわりがある」と著者に語らせている。

    曹操軍は長期にわたる呂布軍との膠着戦において、糊口をしのぎ、智慧の戦いが運にも恵まれ、この大ピンチを切り抜けたのである。

    董卓没後の中央では、悪政の残骸がくすぶり、皇帝を奪い合う李傕、郭汜の権力抗争で混乱状態にあった。政争に嫌気をさした献帝は、長安を脱出し、洛陽への逃亡を試みるが・・・。

  • 段々三国時代に突入していくことになりますが、いわゆる三国志と比べて、曹操の苦難時代、呂布の英雄っぽい感じ、袁紹の最低さが際立つ感じですね。

  • 曹操は黄巾軍を下し、兗州の統治を進める。一方、董卓は寵臣・呂布に殺され、都内は歓声に溢れた。袁術、陶謙…曹操の戦いは続く。
    <amazon商品詳細より>

    不慮の事故のような孫堅の死がもったいない。
    もっともっと孫堅の活躍が見たかったと思わせてくれたところでの突然の死。
    孫堅が亡くなったことで孫策が表に出るようになる。

    それにしても群雄割拠というか支離滅裂というか、
    カオスな状態が相変わらず続き、民衆にはたまったものではないだろう。
    袁紹、袁術の争いがくだらない。
    平時の名門意識なぞ戦時には何の役にもたたないことを理解していなかったのか。
    陶謙ももったいないことをする。
    曹操も父親の敵討ちのような戦で、反感をもたれ自身への脅威を招き、危ういところではあったが、程昱や荀彧の意見をきちんと受け入れることが出来てよかった。

    劉備もまだ、「知る人ぞ知る」的な存在。
    関羽と張飛は傍にいて大活躍をしているが、思想面や内政面で劉備を支える人がまだいない。

    一方で献帝のそばに董卓の後を継いだ形となった李傕と郭汜がおり、献帝の危機は去らない。

    権威もなければ武力もない王朝は、いつ滅んでもおかしくない。

  • 第四巻の主役は曹操、だんだん面白くなってきました。

  • 三国志だけど今の所は曹操が主人公
    一時期、孫堅が圧倒的な実力を示していたけど、運悪く落命して、どうする?孫家って感じ
    劉備は徐州の救援に行ったおかげで先が少しだけで見えた感じ
    相変わらず意外な武将が活躍していて、演義とはかなり違う

  • 長いなあ

  • 曹操の苦難と献帝の長安脱出
    面白くなってきた

  • この辺りは曹操が苦戦していて、頑張れ!って応援してます。やがては敵役になるんだけどなあ・・・

  • 吉川三国志では、呂布が董卓を裏切るきっかけになった美女・貂蝉が強烈な印象に残ったが、この本では全く登場せず!やはり史実に忠実に書くと、架空の女性なのか・・・少し寂しい。袁紹・袁術兄弟の醜い争いにより、孫堅が死に至り、そして孫策もまた袁術に愛想を尽かして・・・。一方で曹操の好男子ぶりがこの巻でも印象的。劉備の大人物を見抜く陶謙傘下の糜竺が目を引く。孫策が最高の美男子として書かれているのは、現代のアイドルを思い浮かべる。

  • 孫堅呆気ない……! 孫策は格好良い。関羽も格好良い。三つの国のどれにも寄らない書き手の態度が素敵。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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