三国志 (第五巻)

  • 文藝春秋
3.66
  • (15)
  • (19)
  • (36)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 168
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163253305

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第5巻の最初の章は「孫策」だ。孫策は若く強い。周瑜の名前も登場する、孫策と周瑜は朋友であり、このタッグは無敵とさえ思える。また、その次の章「素志」においては、曹操が戦っている。

    このときの勢力図は、名門出身の袁紹と袁術が二強でああった。その周辺で曹操、劉表、劉備、孫策らがじわりじわりと勢力を拡大しつつあり、力のバランスに緊張が生まれつつあったが、それでも袁紹、袁術は一段格上の存在であった。

    従って、袁紹と曹操の勢力を比較してみても、圧倒的に袁紹のほうが巨大であり、曹操は実力つけつつも、まだまだ弱小軍団のイメージはぬぐえなかった。

    しかし、袁紹には「おごり」が見える。軍の戦略も、ほぼ袁紹の思いつき的なものであり、軍には優秀な参謀的存在がいたにも関わらず、その声にすなおに耳を傾けず、思いつきで戦いを進めていく感がある。おおざっぱなのである。そしてまた、肝心なときに優柔不断なのも袁紹の特徴だ。

    これに対し、曹操は、自身の実力の見方には謙虚さを備え、よい人材を歓待し、部下の声をよく聴き、自身でも戦略を熟考する。従って、曹操の軍は着実に実力をつけていくとともに、軍の統制がとれている。

    そして、皇帝(献帝)を自軍に迎え入れ、皇帝を守るために戦をするという、いわば官軍的な立場に徹しているのも曹操軍の大きな特徴だ。

    宮城谷氏は、本書の中で、袁紹のことを「百戦九十九勝の項羽」と似ているとして、その謙虚さに欠ける点も項羽と同様だと指摘していた。

    また、「大差が生じるのは決断においてである」とし、「人の和は作ることができる。地の利も得ることができる。だが、天の時は求めてもつかむことができず。与えられたときに受け止めるしかない。」等と、天の時をとらえることができない袁紹の優柔不断な点についても指摘を加えていた。

    この第5巻の最終部では、袁紹軍10万と、曹操軍5万の全面直接対決となる。いわゆる「官渡の戦い」である。勢力では圧倒的に袁紹軍が有利であったが、結果として曹操軍が大勝することとなる。

    この全面対決の序盤は袁紹軍の猛烈な射矢の攻撃で、曹操軍はかなりのダメージを受けてしまうが、粘りと知恵の曹操軍は、土壇場で発石車(石を飛ばすマシン、つまり大砲の元祖)を編み出し、大逆転劇を演じるのである。第5巻のもっとも痛快なシーンである。

    さらにここで関羽の「義」熱きドラマがみられる。
    劉備玄徳の有能な武将であった関羽だが、劉備が曹操に攻め込まれたときに、丸腰で袁紹のもとに逃げ込み、その際に関羽は曹操軍の捕虜として捕獲されてしまう。

    部下を捨てて逃げる情けない劉備。敵将であっても有能な人材であると判断すると優遇する曹操。捕虜になっても劉備への忠義を尽くす関羽。その心を理解する曹操。

    関羽は、曹操軍を去るには、曹操の敵将(顔良)の首をとることが必要と、数騎で敵陣に乗り込み、みごとに首を持ち帰る。そして、さっそうと曹操軍をを後にし劉備のもとへ向かうのである。関羽の惚れ惚れするシーンである。

    しかし、それを引き留めず、逃がす曹操もまたカッコイイのである。

    この後、あの孫策は、なんと流れ矢にあたってあっけなく命を落とし、その勢力は孫権に引き継がれる。袁紹とともに、袁術も姿を消す。勢力マップは大きく変化した。

  • ようやく官渡の戦い。史実を元にした小説、なので、どこまで本当なのか、ですが、そういうことではなく、著者から見た三国志、なんですね。

  • 曹操はついに立って天子を奉じることにし、洛陽に帰る。
    呂布、公孫瓚、袁術らが舞台から姿を消し、袁紹との官渡の戦いが始まる。
    <amazon商品詳細より>

    官渡の戦いで、曹操が袁紹を破る。
    曹操と袁紹の違いがくっきりと描かれている。
    人の才能を良く見極め、適材適所に使い、最大限の力を引き出す能力を持つ曹操。
    それに対し、人の話に耳を貸さず墓穴を掘る袁紹。

    一方で孫策は一気に勢力をに広げつつも
    非業の死を遂げることになり弟の孫権に引き継いで退場。


    これで三国志のメジャー級が一気に顔をそろえたという感じ。

  • この巻には官渡の戦いが含まれており、必然的に曹操の話が多く、袁紹の話も多く書かれている。
    ここでの2人の話は対比で書かれているように私は思う。
    策の使い方、決断の早さ、家臣からの進言の採用の仕方などで勝者である曹操が優秀に書かれているのは当然としても、公孫?と戦っている間は袁紹もうまく戦っていたのに、自分の望む未来に足がかかったことで、侮りが起きてしまったのだろうか?
    劉備に関しては登場回数が増え、これから活躍が見れるようになると思うが、決断の早さだけはこの時点でも曹操に劣らないように私は感じた。
    孫策は一気に勢力をに広げ、弟の孫権に引き継いで退場してしまった。
    呂布は確固たる目的なしに合同している間に曹操に敗れた。

    段々とピックアップされる人物が一定になり、三国志時代の訪れを示唆しているようだ

  • 官渡の戦い終了
    袁紹死亡
    ちょくちょく知らない名前が出てくる

  • 官渡の戦いまで来ましたが、なんかすごくあっさりと云うか淡々と進んでて、これまで読んだ三国志に比べて盛り上がらない。関羽が劉備と分かれ曹操に仕え、そして再び劉備の元に戻るのもムチャクチャあっさり。ちと物足りない感じ。

  • いよいよ袁紹と曹操の対決へ向け、盛り上がりを見せていく。曹操に出会った郭嘉が「学問しているので愉快」と感じたり、徐晃が多くの捕虜の中から見出された人材発掘の神力など誉め言葉がちりばめられている。郭嘉も徐晃も吉川三国志では端役だったが!曹操が嫡男・曹昴を喪った戦いの場面、そして曹昴から曹丕への後継変更による2人の夫人の間の譲り合い、曹昴の養母・丁夫人を曹丕の実母・卞夫人が四季折々に見舞ったというのは美しい後日談も美しい。

  • 一つ一つの戦いをあまり掘り下げることがない分、流れがよく分かる。ただあまり中心にいない人物が誰だったか分からなく……。「仁の人」ではない劉備の人物像が良い。

  • 曹操が天子(献帝)を奉じる。呂布、袁術、袁紹。劉備の存在。

  • 呉の孫家が不良集団にみえてきました。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮城谷昌光の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×