藤沢周平未刊行初期短篇

  • 文藝春秋 (2006年11月10日発売)
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感想 : 8
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784163255200

感想・レビュー・書評

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  • やや硬派

  • 「残照十五里ケ原」のみ読了。天野純希「北天に楽土あり」つながりで。北天...は最上氏の視点からだが、こちらは荘内に根を張る、前森蔵人改め東禅寺義長・幸長の視点で語られる。荘内の勢力からすれば、上杉も大宝寺も伊達も最上も所詮はよそ者。しかし、独力で独立できなければ、どこかの力を借りなければならず。最上の力を借りて、大宝寺を討った後は、後ろ盾を得つつも最大限の自治を得たが、上杉の侵攻に、次第に力を失い、最後は討ち滅ぼされてしまう。勝正が本庄繁長に大怪我を負わせ一矢報いたのを最後に。最上家の中山玄蕃が舌打ちしつつ最上領へ去っていくエンディング。北天...では有能な文官としてのみ描かれた東禅寺義長だが、本作では武将とし知略・胆力を持つ存在として描かれる。大宝寺義興は、北天…では兄に及ばずながらも粘り強くしたたかに統治を進める支配者として描かれるが、今作では無能で、無能すぎて上杉への依存を強めたと描かれる。

  • 10/05/27 周平節の片鱗が見られる。

  • 収録作品:

    暗闘風の陣 如月伊十郎 木地師宗吉 霧の壁 老彫刻師の死 木曾の旅人 残照十五里ケ原 忍者失格 空蝉の女 佐賀屋喜七 待っている 上意討 ひでこ節 無用の隠密

  • 06年3刷本 確保

  • これ去年の年末に出たばかりの新刊です。藤沢周平さんが、作家としてデビューを果たす以前に投稿して読みきり雑誌なんかに掲載されていた作品ばかりを集めた、40年の時を経て放たれるファン垂涎の短編集。14編おさめられています。私はまだ藤沢ファンとして新参なのですが、すごく楽しめました。藤沢作品の味わいどころであるらしい風景描写や 精細にして端正な剣闘の描写 などがまだ完成されてない、というような書評が巻末に載っていましたが、私としては読み応え充分だったなぁ。たしかに、つながりや展開がちょっとわかりづらかったり、余計な説明や筋がある感はあるのだけれど、、心に残る作品ばかりでした。忍者や隠密、元罪人、隠れキリシタンなど、影に生きる人間を題材にしたものが多かったかな。ひとつだけ、日本ではなく、古代エジプトを舞台にした話もあって異色なかんじでした。辛いラストのストーリーが多いなかで、 『木地師宗吉』  と 『ひでこ節』 の涙がでるような暖かいラストがとっても印象的。両方とも、愛すべき女性の存在に気づくとともに、人形づくりの新しい自分だけの道を見つけるかんじが似てるかな。 でも辛いラストは基本苦手なのに、 『空蝉の女』 と 『待っている』 の2編は深くえぐられましたね。 特に空蝉〜のほうは、読んだあと世界観から逃げられなくなって眠れなくなってしまった久々のヒットパンチャーでした。2編とも どうしようもなく、歯車が狂って不幸になっていく哀しい展開。なりたくて不幸になる人なんていないんだよね。抜殻のような空蝉の女の空虚に入り込んでしまいました。せつない。胸がいたい。

    文学に詳しい方なら荒削りに感じるかもしれないこちらの短編集ですが、きっと呑込まれてしまうとおもう。オススメです。

  • 海坂藩大全上下巻に続く短編集。藤沢周平氏が、時代小説を書き始めた頃の未刊行作品とはどんな内容なのか、これから楽しみだ。読み終わって、後期の作品と較べると、題材は極端な変更は無く庄内を舞台とした話が、多く、読み易かった。初期作品と云って拙さがあるかと思っていたけど、そんな心配は不要だった。

  • 11月15日購入。21日読了。文字が大きい割に意外とボリュームがありました。お得でした。これまで読んだ藤沢作品にない,いわゆるテレビ的な時代物の雰囲気が感じられていて新鮮でした。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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