- Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163259307
感想・レビュー・書評
-
おもしろーい!今までどうして読んでいなかったのか、後悔。こんな感じ、好きだなあ。
「初子さん」時々挟まれる、大真面目なのかわざとなのかわからないとぼけた感じが何ともいえず、話自体は笑いが止められないような内容ではないのに、何回も吹き出してしまうところがあって、困った。あれ、ここは笑うところではないんじゃない、でも、笑っちゃうよ~と変に自問自答する始末。初子さんの母の心情が語られているところは、特によかった。迫るものがある。
「うつつ・うつら」変!これ、すごい変!出だしはあんまりおかしくて、くすくす笑いが止まらなかったのに、あれっという間にどんどん話がおかしな、ちょっと怖い方向に進んでいってしまった。最初の方と、うつつの漫談が、下から聞こえてくる映画のセリフのせいで同じ所で止まってしまうところと、最後の部分が好きだった。思いがけない終わり方だったけど、鶴子、生きろ、頑張れ!と読み終わってから応援した。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表題作「うつつ・うつら」ではなく、文學界新人賞受賞作の「初子さん」を読みたくて、図書館から借りてきました。
京都で暮らす主人公の初子さんは、妙齢の女性ですが、パン屋さんに下宿して、来る日も来る日もミシンの前に座って洋裁の仕事をしています。
この初子さんが、とにかくとぼけた味があって、私の心を最初から最後まで捉えて離しませんでした。
初子さんは、たまにパン屋の店番を頼まれる時があります。
店の籠に小銭が足りないと、初子さんが自分のポケットから小銭を出します。
ところが、客に手渡したのが、お金でなくボタンの時があるのです。
「わしゃ、狐に騙されとんのか」
と口に悪い客は云います。
町で自分の作った服を着た人に会うと、しげしげと見てしまいます。
見ているだけならまだしも、声を掛けることさえあります。
服地屋を通して依頼を受けた客には、初子さんが分かりません。
それでも、スカートの中心を少し横にずらしたまま穿いている人には
「ずれてはりますやんか!」
と駆け寄ってスカートを直す。
自分の作った洋服を着た子が滑り台を滑っているのを見つけると
「あかーん! 服が傷むやろー!」
雨の日に自分の作った服を着て、かまわず大股で歩く人を見ると
「泥、跳ねてますやん」
と思わずハンカチを持って駆け寄ります。
初子さんは、自他ともに認める「あほ」ですが、一途なところがあって、それがまた魅力的なんですね。
東京弁のような言葉を使う鼻持ちならない婦人が初子さんに仕事を頼みに来ます。
「私はねえ、華やかなあーのがいいの、ねっ」
そんなふうに話す婦人を、初子さんは好きになれません。
「夢だけ追っていてはだめよ」
という婦人に、初子さんはこう思います。
「こんな蒸し暑い夜に窓を開けただけの部屋で、体から湯気が出そうになりながら仕事をしている。これが現実以外の何であろうか。」
こんなふうに感じる初子さんが、私は愛おしくてなりません。
特にドラマチックな展開があるわけではありませんが、初子さんの一挙一動、心の動きを慈しむような気持ちで見守ってしまいます。
私は朝倉かすみの「コマドリさんのこと」のコマドリさんや、古くは織田作之助の「六白金星」の楢雄を思い出しました。
私の「ツボ」のキャラクターです。
文章も独特の滑稽味があり、油断していると何度も吹き出すこと請け合い。
場末の劇場で受けない漫談をしている「マドモアゼル鶴子」が主人公の表題作も愉快。
ほかにもたくさん読んでみたい作家さんですが、寡作なのが不満です。 -
赤染さん、「乙女の密告」を読んだときも奇妙な世界を作る人だなあと思ったけど(人にクセがありすぎる)、デビュー作の「初子さん」からしてそういう感じだったのね。その奇妙さというのもどこか懐かしいわかりやすい奇妙さで、町に一人はいそうだよねっていう可愛らしさもあったりする。「初子さん」と「うつつ・うつら」の2編入りで、「初子さん」は小さいころから洋裁が好きで、洋裁のことしか考えず、今期を逃そうとしている初子さんをはじめ、初子の母や初子にスカートを頼みに来る客などのそれぞれの女の生活や生き様が描かれている。お母さんしんどすぎ。
「うつつ・うつら」はマドモワゼル鶴子という漫談をやる芸人が主人公。場末の劇場で客もほとんど入らず、鶴子のファンは一人だけ。鶴子はもう若い芸人からみたら何考えてるのかわからない不気味なばばあ。それでもいつか自分はスカウトされて女優になれるんだみたいなよくわかんない夢を描いている痛い人。こちらは階下でかかっている時代劇映画の音、客が忘れて行った九官鳥、ちょっと足りない小夜子というお茶子(「ほっちっちー」とかしかほとんど言わない)など、それぞれの発する音や言葉について、音の呪詛って恐ろしいなと思わせる作品。ソシュールなんかをちょっと思い出す。 -
初子さん と 表題作の うつつ・うつらの二つのお話が書かれています。 『初子さん』 縫い子さんの初子さんが住む町は昭和50年代の京都 ゆうるりゆうるりとした人々が暮らす町。 どうしようもない焦燥感のようなものが じんわり伝わってきました。 『うつつ・うつら』 どういえばよいのか・・・言葉にされることによって消され言葉にされることによって生まれそこから世界が構成されてゆくことの不思議・こわさのようなものを感じました。
-
赤染先生は京都府宇治市出身の方。
登場人物の会話は関西弁でテンポ良く読めた。
内容はシビアと表現するのは違う気もするが、繰り返される日常生活の中で感じる、何かに対する執着心、他人の目、自分の中の葛藤を記していた。
「初子さん」も「マドモアゼル鶴子」も自分の譲れない物を持っていて、自問自答しながら日常生活を繰り返す。誰もがそうであると思うのに、読んでいて苦しかった。苦しかったけれど、彼女達が次はどう決断するのか気になって読み進めた。 -
初子さんは星4つ、表題作のうつつ・うつらは星2つというところでしょうか。
初子さんもうつつ・うつらも、テーマは似ているかなと思う。日常の中で疲れ果てて溺れていく人たちという。
うつつ・うつらは最初の方があまり楽しくなかった。
映画の世界がうんぬんというところ、あまりピンと来なかったし。
名前が奪われる下りも、まぁ分かるんだけど、でもそのあとどうなるの?死ぬの?はっきりとは分からないという印象。
著者プロフィール
赤染晶子の作品
この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。






うつつ・うつらを本棚に登録しているひと
-
- corrupted1979
- 2018年10月12日に登録
-
- 美希
- 2014年4月22日に登録
-
- h
- 2014年4月18日に登録
-
- murph
- 2011年11月19日に登録
-
- 珈琲好きの本棚
- 2011年5月15日に登録
-
- yuichi
- 2010年11月11日に登録
-
- daidainomi
- 2010年11月2日に登録
-
- midoriko
- 2010年11月2日に登録
-
- tool11
- 2010年10月24日に登録
-
- やんしょ
- 2020年6月14日に登録
-
- 実
- 2018年11月15日に登録
-
- chocosodapop
- 2018年10月21日に登録
-
- 増量
- 2017年9月27日に登録
-
- おこめ
- 2016年1月2日に登録
-
- hetarebooks
- 2014年9月4日に登録
-
- plugcity
- 2014年5月20日に登録
-
- ゆず
- 2014年4月28日に登録
-
- americaine88
- 2013年1月12日に登録