父の感触

  • 文藝春秋 (2007年8月27日発売)
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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163262109

感想・レビュー・書評

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  • 「人生とは何か」なんて今どき手垢に塗れてカッコ悪いテーマだ。だが、小林紀晴という書き手は911の記憶と父の死の体験を入れ子式に語る過程でどうしてもこの問いと向き合わざるをえなかったはずなので、その真摯な態度に胸打たれる。今でも生々しく当時のことが蘇るNYCの日記形式の記録も、父をめぐる記憶も(個人的にはポール・オースターすら彷彿とさせられ)実に感動的だ。だが、両者は噛み合うようで噛み合っておらず、どこか思い出話を2本読んだ後のような尻すぼみな感触を覚える。しかし、この「続き」を期待したくもなり困ってしまう

  • 9.11のテロという突然の喪失と末期癌を患った父親の死という緩慢なる喪失を交互に描いています。著者は写真家だけあってか瞬間の情景を切り取るような文体が独特です。「失うものなど何もない」と思っていたのですが、この本を読んでそれは何も失ったことのない者の傲慢だった、と思うようになりました。心にヒリヒリしたものが残りました。

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著者プロフィール

1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。新聞社カメラマンを経て1991年独立。アジアを多く旅して作品を制作する。また近年は日本国内の祭祀、自らの故郷である諏訪地域などを撮影している。紀行、ノンフィクション、小説なども執筆。近著に『まばゆい残像』『孵化する夜の啼き声』『深い沈黙』など。1997年『DAYS ASIA』で日本写真協会新人賞、2013年『遠くから来た舟』で第22回林忠彦賞を受賞。2021年に初監督映画作品『トオイと正人』で国際ニューヨーク映画祭、南京国際映画祭入賞。東京工芸大学芸術学部写真学科教授。

「2021年 『深い沈黙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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