- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163263502
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
2022/9/8
-
16年冬にWOWOWでドラマ化(豊川悦司主演)されて、見る気はないんだけど、とりあえず原作は読んでみた。う~ん、こういう話はとても苦手。登場人物たちがみんな耐えられないわ。で、読み終わってから知ったんだけど、実在の人物の実話の小説化なんだって。それもう~んって感じ。
-
詩人・北村太郎の話。実話。
家族の了承は得ているらしいです。
Amazonのレビューには受け入れられないという意見も割とありました。
フィクションだったら私も違った感想かもしれません。でも、これはノンフィクションであり、北村太郎という人間の話だと知って読んでいるので、私は読んでいる間じゅう胸が苦しくて胃が締め付けられる様に切なくて、最後は涙が止まらなくなりました。
若い人には受け入れられないだろうと思います。人生の終わりが見えるというか、長く生きないと分からないように思います。
それから真っ当な人にも分からないだろうと思います。精神を病んでいたり色々と抱えている人間でないときっと分からないんじゃないかと思います。
奥さんを捨てる北村の身勝手さに憤慨するレビューも多々ありました。けれども、私はあまりそうは思わず、逆に奥さんや家族や安定というこれまでの幸福すべてを捨てる潔さにただただ驚きました。私は潔く捨てれません。
北村さんは自分にも他人にもまっすぐ正直な人で、お人好しで、強い。
だいたいの人は北村さんみたいに生きられません。嘘つきで、自分勝手で、弱い。
心の病気はだいたいは分かってもらえません。
恋愛も本人にしか分かりません。
私はこの作品を不倫話と位置づけるのは間違っていると思います(私は人が人を愛するのに不倫という言葉を当てることにそもそも疑問を持っている人間なので)。
不倫話にこの本の本質があるわけではないと思うのです。
この本は北村太郎という人間の話です。そして彼の周りの人間の話です。「荒地」の詩人たちとの繋がりから見る北村太郎。
いいとか悪いとかではなく、北村太郎を知る本だと思います。
彼がどんな人であったのか、どんな人とどんな風に過したのか、彼がどんなことを考えていたのか。
私が泣けたのは彼のまっすぐな生き様が、彼のまっすぐな言葉が、あまりに心に深く刺さってどうにも堪えられなくて涙が溢れました。
「愛している」という言葉のまっすぐさ。
「愛した」ことへの責任。
すべてを正面から受け止めることのできる芯の強さ。
たとえば太宰治とは真逆で、北村太郎は生から逃げないのです。
これを読んでから太宰治を読むと、太宰治が女々しく感じてしまいます。
私はこの本を読んで、彼の眼差しや彼の人柄や彼の詩に触れて、北村太郎が大好きになりました。詩集を読んでみたくなりました。
そして、こんな風に書けるねじめさんはすごいと思いました。ねじめさんは初めて読んだのですが、有名なだけあってやっぱり巧い作家さんだと思いました。 -
2015/08/27 読了
-
詩人・北村太郎の後半生を、詩人として世に出たねじめ正一が描く本書。
最初の章は「終りのない始まり」と題され、その脇に「たしかに、それは、/スイートな、スイートな、終りのない始まりでした。」と引用されている。北村太郎が親友・田村隆一の妻である明子に「どうやら僕は、恋に落ちたようだ」と告白するこの章に、「終りのない始まり」とあるのはどういうことだろう、と思っていた。それで、このタイトルがとられたもとの詩の「終りのない始まり」にあたってみた。じつはこれは北村が最初の妻・和子(じつは、田村隆一の妻のほんとうの名前も和子)と息子・昭彦を海の事故でなくしたことをうたった詩だった。二人を荼毘に付したあとで、北村はこううたう。
====
電車の走る音がきこえます。たしかにこれで終りました。
何が? 生けるものと
生けるものとの関係が、です。そして
いまこの郊外の
晩夏の昼、もっとスイートな関係が、死せるものたちと
生けるものとの関係が、始まったのです。たしかに、それは、
スイートな、スイートな、終りのない始まりでした。
====
「終りのない始まり」とは、北村にとっては「死せるものたちと、生けるものとの関係」のはずだった。ねじめが最初の章に「終りのない始まり」と題したのは、たんに言葉としてちょうどいいから選んだというわけではないだろう。北村にとって、もうひとつの「終りのない始まり」は、たんに親友の妻に惚れたということではなく、中断していたに近かった「言葉との関係」=「詩を書くということ」が、ふたたび始まり、それが自分の死まで続いたということを指しているのだと思う。
じつは『荒地の恋』それほどおもしろい話とも、いい話とも思っていなかったんだが、北村太郎の詩と併せて読んでいくと、重層的というか、二階とか地下室ができる感覚というかが生まれてきて、おもしろくなった。 -
血がドクドク流れている迫力があり一気読みでした。
素晴らしい作品