- Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163263601
感想・レビュー・書評
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この小説で宮部みゆきさんが私の好きな小説家に確定しました。
この小説は単行本では上下巻でおおよそ700ページ。文字は標準の大きさ、余白も普通なので、ちょうど良くたっぷりしています。
複雑なプロットの上手さ、人の心の奥底の描写の深さ、残酷な事件を扱ったにもかかわらず、そのに流れる人を見る目の温かさ、読後の残る余韻と満足感。感動しました。
どの登場人物の心情の表現も素晴らしかった。
たとえば『愛情を注いで、懸命に育ててきた我が子が、自分の手から離れ、親の目には見えない流れにすくいとられて、みるみるうちに遠ざかっていく。手が届かない。声が届かない。振り返ってくれた子供と目があっても、そこには理解しがたい暗い色が見えるだけだ。』では、子供の反抗期を思い出した。
同じ作者の古いものを20冊ほど買い込んだので、しばらく宮部みゆきさんにハマろうと思います。
代表作『模倣犯』はタイトルが残酷なイメージで手に取りませんでしたが、これから読もうと思います。
小説から少し気持ちが離れて実用書に傾いていたところを引き戻されました。あとがきがまたとても良いです。
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「模倣犯」から9年後の別の事件、ルポライター前畑滋子がまた関わってしまった。出だしは超常現象の解明風に始まったため著者の「おそろし」の現代版みたいになるのかと思っていたら、やはり難解な事件に突入し、また著者のテーマとも思われる、悪は感染するのごとく事件はつながっていく。一般家庭でもちょっと間違えば起こりかねない事件であり、その時家族はどうすればいいのだろうかという問いかけだけが残ったが、最後に敏子さんに幸せの兆しが見えたところで救われた感じだ。
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面白いです。
息もつかずに読んでしまいます。
次から次に明らかになる秘密、オトナ社会のウヤムヤ。
放置される性犯罪者、子の言いなりの親。甘えるだけの子供。保守に走るばかりの学校。
現代の社会問題をふんだんに取り入れて、異能という部分も加え、
愛情、渇望、断絶、利己主義、母性等々、もうてんこもり。
主人公の察しがいいのと行動力(と嘘)で、物語の展開がまことにスピーディ。
飽きることを知らず上下巻読み終えてしまいます。 -
宮部みゆきさんでいちばん好きな作品。
模倣犯の続きの前畑滋子さんのお話。
人の心を読める等くん…等くんのお母さん。
聖子ちゃんに茜さん。
過去の事件の中でいろんな事件や感情が分かってくるような
物語。
前畑滋子さんが、等くん。分かったよ。って語りかけるところがめっちゃ好きです。 -
2014年1月26日読了。
「模倣犯」の前畑滋子を主人公に据えた作品。
ラストに、大きな大きな感動を覚えた作品でした。
上・下巻とあって長いですが、私は、このラストを
読めただけでも、読む価値があると思います。
ずっと、萩谷敏子には幸せになってほしい、これ以上
悲しみを背負わないで欲しいと思いながら読んで
たので、本当に救われた想いでした。
良い作品です。ラストは、思い出すだけでも涙が
出てきます。 -
ラストが温かくて、ほろりとくる。
上下通して読んでいくと、「きょうだい」というものの理不尽さが心に残る。
誠子は確かにいい子だったのだろう。茜は確かに強情でひねくれた子だったのだろう。でもそれは生まれた時からそうだっただけでなく、その後の生育環境による部分も大きく影響するのだ。
もともときょうだいというのは親の愛を奪い合う存在である。血を分けたことがプラスに働くこともあるが、幼い頃はまず親の愛を奪う敵なのである。
下巻の後半に出てくるくだりが胸に刺さる。
もし家族の中に良くない者がいた場合に、いったいどうすることが正しいのかという問いだ。茜は殺されてしまった。三和明夫は温情をかけ続けてもらったあげくに逮捕された。
荒井事務局長はいう。「それならどうすればよろしいというのでしょう」と。
切り捨てればいいのか。放り出してしまえばいいのか。
だからといって殺してはいけない、というのはあくまでも第三者の意見だ。
切り捨てられない関係の中で、どうしようもない存在が生まれてしまったときに、いったいどうすればいいというのだろうか、という問いは、なんだか悲鳴のように感じられた。
さらに、最後のほうに出てくる「楽園」に関する記述も胸をうつ。
楽園は予め失われている。それでも人は楽園を求めてしまう。どんなものであろうとも、その楽園は求めた者の楽園であるのだ、と。
人の業というものをつくづく考えさせられる物語である。 -
「模倣犯」事件から9年。フリーライター・前畑滋子のその後のお話。
彼女の元に12歳の息子を亡くした荻谷敏子が訪ねてくる。滋子は彼女の不思議な依頼を調べ始める。 -
家族を殺してしまった後、自分たちの罪を隠すというより、他の家族を守ること、さらに続く卑劣な人間との対峙、そしてそれに負けてしまったこととの葛藤
一体どうすれば良かったんだ、あなたならどうする?
軽重はあってもともすれば、普通に陥ってしまう状況に私なら結局同じことをするかもしれないとも思った。
さらにいくつかの親子のかたち、親になれなかった夫婦、親を捨ててしまった親
せつない。 -
ちょっと不思議な力に不思議な話とサスペンス.ぽろぽろと,ちょっと心を打つシーン.こう書くと小粒に聞こえるけど,正反対で,色々なものがちゃんとつながっていてとても面白い.子をなくす親の,様々な心が描かれていて,どれ一つとっても心が揺さぶられるのに,それがたくさんとなると...
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私が子供に接するときに、気をつけてはいても時々できないことを突かれて、寒気がした。
その点はきれいに回収されていたのだけれど、バブルの方はどうしたものかという気持ちが残った。
他作品でもそうだけれど、絶対的な悪ではなく、こちらが同情してしまう登場人物が出てきて、やるせなさでいっぱいになる。
その裏には、どうしようもない絶対的な悪人がいるからこそ、対比で引き立つのだろう。