- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163264301
作品紹介・あらすじ
優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る-。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂。
感想・レビュー・書評
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花の感情だけに入り込んでいけば、くらく沈みゆくような悲痛な恋の話。愛するおとこに、人生すべて与え、与え、奪われつくし、それでもその愛だけを頼りに立つ老女のような若い女。「離れなければならない」と、身を引きちぎる思いで光りのあたる人生に挑むが、失いきれず立ち尽くす。
読んでいて迫りくる、花のあまりの悲しみ。
これは女のひとのための物語と思う。男性はこんなものつきつけられたら嫌ではないだろうか。美郎は、ほのかにしかこの物語に気づけない。…おんなのこはみんな、過去の悲恋をかくして、あなたのまえで微笑んでいるのかもしれない。それがたとえこれほどおぞましいものでないとしても。
(なんて。
ところで作者が別の本にて、淳吾のビジュアルはオダジョー派とトヨエツ派がいて…という話をされていた。おもしろかったです。私、オダジョー派です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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2013/02/15
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>さおぴさん
エロいのと暗いのが平気であればお薦めです!読み終わった時の疲労感がなんともいえないw>さおぴさん
エロいのと暗いのが平気であればお薦めです!読み終わった時の疲労感がなんともいえないw2013/02/15
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冒頭が狡い。「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくり広げながら、こちらに歩いてきた。」なんて、文章に掴まれて引きずり込まれました。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な小説の冒頭に匹敵するくらい作者にしてやられたなーと思いました。
ただ内容は静かなのに激しい。決して気分の良い物語ではないです。
淳悟にとっても花が“私の女”なら良いのになと思いました。花が女としてなれる淳悟のすべてであったらなーと。花にとっては淳悟がすべてだという感じがしました。
でも、どんどん物語が過去に遡っていくから、まるで花に未来はないよ、あるのは過去だけだよ、と作者が言っているような気がしてならなかったです。花の前から姿を消した淳悟はどこへ向かったのでしょうか。
そういえば、花の「おとうさぁん」という呼び方や、大塩じいさんの「ヨォ」とか「ネェ」という語尾が、いい感じでイラッとさせてくれました。 -
こんなにも激しい父と娘の関係は許されるのだろうか。
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花と淳悟、二人の関係は読めば読むほど凄く痛々しかった。
私の男、、、、。
傷んで、貧乏くさくて、でもどこか優雅で落ちぶれた貴族の様な風貌。
雨のような匂いがする養父はまぎれもなく、私の男だった。
湿気を帯びて、むせかえる様な甘い匂いを放つ文章はとても気持ちがいいものではなかったけれど、でも読む手が止まらず一気に読んでしまった。
見てはいけないものから目が離せない、そんな感覚、、、。
血は水より濃い。
欠損してる何かを埋めあう様に求めあう二人は、獣でしかなかった。
世の中にはしてはならないことがある。
越えてはならない線を越えてしまった親子、、、
人間の弱さと強さ、美しさと汚さ、、、
合わせもつ両面を見事に書ききった作品だと思う。 -
表現力が凄すぎる。
しつこくないのに、ねばつく感じ。
愛の湿りを感じた。 -
濃厚すぎて胸焼けがする。歪な関係は甘い腐臭を放ち、そのせいで秘密は他人に嗅ぎつけられてしまう。
浅野忠信と二階堂ふみ、この二人であればきっとこの汚れた密事も美しい映像に成り得るだろう。 -
すっごくゾクゾクする本だった。気持ち悪いと思う人が多いのも分かる。だけど、父に対する恋に似た憧れ?ってちょっと分かる。
当たり前だけど、桜庭一樹、文章が上手すぎる。
分厚いし、文字も大きくはないのに、気付いたら読み切ってた。ほんとに「これで三分の一くらいかな」って本を閉じたら、7割くらい読んでた。
表現もすごく綺麗。「身内しか愛せない人間は、自分しか愛せない人間と同じ」とか、好き。それに、不気味な生々しさも好き。
最初「この人の考えてる事は理解出来ない」って思っても、主人公が変われば「ああ、そういう人か」って分かる。自分と相容れないタイプの人間でも、スッと理解させてしまうのが上手すぎる。 -
カテゴリ化するのは無粋な話だけれども、ヒロインは綾波レイ的な何かだよなぁ、という雑感。処女に母性を持たせる聖母性ほど淫心を擽られることはない。
エログロナンセンス三拍子揃えて勢いで読ませる筆力、薄い本と言われる界隈で好まれそうな題材を山盛りにし破綻させずに多視点(この辺りも薄い本らしさがある)及び逆順時系列を使い纏め上げる構成力、文章内の比喩表現が美しく湿度の高さを見事に表現していて、すばらしいと思う。
ところでナンセンスはどこにあるのかというと。
もうそもそも冒頭の結婚が成立してしまうところやら、押入れの中身の腐乱を考えないところやら、(能力についての言い訳はあるにせよ)「目を見ればわかる」やら。現実的に考えたらそこはどうなの? あ、でもこの物語にリアリティは必要ない部分なんで削ったんですねわかります、としか納得出来ない部分。無理やりそう自分に言い聞かせても、喉に刺さった魚の小骨のように、世界に浸る邪魔をしてくれたけれど。
全体的に文章がひどく官能的。男の手の乾燥した様や唾液の粘度の高さや乾燥した愛液など、水まわりの表現にくどいほど気を遣っているせいだろう。若干しつこく感じる程であるが、でもそこがまた滴るようですばらしい。エロスに湿り気は必須なのである。
でもこれだけエロ描写が卓絶していても、この小説は官能小説ではないのである……不思議だなぁ。
文庫版の表紙絵を見かけたけれど、"男"の両目は色のないマーガレットのような”花”で、干からびたような無骨な手だけが色を持っている。やはり男の手は強烈に意識に残るものとして作中に描かれているのだろう。 -
怖いもの見たさで何とか完読。
暗い、重い、気持ち悪いー。
若い頃のジュンゴは綾野剛、現在のジュンゴは豊川悦司、で脳内再生された。
自分がもし花だったら、ジュンゴのために、受け入れるのかなあ?
可哀相な人、という気持ちは湧くけれど。
怖いくらいの共依存ぶり。
現代版源氏物語だなーと思いながら読んだ。
花は結婚して幸せになれるのだろうか?
彼女の抱える闇が深過ぎて、幸せになる気がしないのだけれど。