私の男

  • 文藝春秋 (2007年10月30日発売)
3.55
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784163264301

感想・レビュー・書評

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  • 個人的な好みや信条から言って、本書に星5の評価を付けざるを得ないことは甚だ心外である。私は近親相姦というものが大層嫌いであるし、幼い子供と大人の肉親であるならば虐待だと考えるし、そのような関係性に特別な価値など無いと思うからである。しかしながら本書はとてつもないエネルギーを秘めた作品であり、読後の感触から言っても一級品であると感じた。甚だ心外なのであるが、総合して満点の評価を付けざるを得ないのである。
    本書が社会的な評判を得たのは10年か15年ほど前のことであるように記憶しており、その時期は身の回りで本書を推す声が強かったように思うが、私はあまのじゃくなのでおすすめされればされるほど読むまいと身を固くしていた。結果として十数年の間読むことがなく、ようやく最近になり「そういえば……」と手に取ったのであるが、おそらく十数年前に周囲から勧められるままに本書を読んだとて、得られるのは嫌悪感だけであったであろう。当時の私の価値観は非常に硬直していたからである。十数年の歳月が功を成し、大人となり価値観が醸成された今読んだことで、幸か不幸か、私は本書のもつ深い味わいに触れたように思う。この作品は人を選ぶが、同じ一個の人間であっても、どのタイミングで読むかによって得られる感触は異なってくるだろう。これから本書に出会う人々が、それぞれに最も良いタイミングで本書を手にできることを願ってやまない。

  • 花の感情だけに入り込んでいけば、くらく沈みゆくような悲痛な恋の話。愛するおとこに、人生すべて与え、与え、奪われつくし、それでもその愛だけを頼りに立つ老女のような若い女。「離れなければならない」と、身を引きちぎる思いで光りのあたる人生に挑むが、失いきれず立ち尽くす。
    読んでいて迫りくる、花のあまりの悲しみ。

    これは女のひとのための物語と思う。男性はこんなものつきつけられたら嫌ではないだろうか。美郎は、ほのかにしかこの物語に気づけない。…おんなのこはみんな、過去の悲恋をかくして、あなたのまえで微笑んでいるのかもしれない。それがたとえこれほどおぞましいものでないとしても。
    (なんて。
    ところで作者が別の本にて、淳吾のビジュアルはオダジョー派とトヨエツ派がいて…という話をされていた。おもしろかったです。私、オダジョー派です。

  • とにかく強烈だった。
    桜庭さんの作品はかなり読んだけどこれは次元が違うくらい強烈に印象が残ってる。

    禁断の父娘(花と淳悟)の恋愛関係について書かれた本。
    仄暗いストーリーだけどものすごくパワーを感じて、
    読みだすと止まりませんでした。強烈な引力に引き寄せられているような。
    また、過去に遡っていくストーリー展開も効果的だった。
    各章ごとに語り手が変わる芥川スタイルはもうトレンドですね。

    流氷のシーンは鳥肌が立ちました。
    流氷を見送る花の壮絶とも言える表情が不思議と鮮明に思い浮かんだ。

    男性には受け入れがたい話かもしれないけど、
    この本を評価する女性は多いのではないでしょうか。
    あと、物語に整合性を求める方には向かないですね。
    でも人間に整合性を求めるなんてナンセンスな気もします。

    他人には理解できない感情はあって当然。
    支離滅裂な展開だってこの世の中には一杯ありますから。

    読み終わって釈然としない方もいらっしゃるかもしれないけれど、
    私はこの物語に流れてる雰囲気とその時々の感情の描写を評価したいです。
    物語を通しで捉えるとうーんと思うかもしれないけど、
    登場してくるシーンを一つ一つ切り取るととても秀逸。
    そんな「私の男」とってもいいと思います。

    淳吾のビジュアルはオダジョー派かトヨエツ派か。
    私は断然、トヨエツ派。
    ろくでも無いけどかっこいい。
    こういうキャラクターに私は弱いんですよね。

    • さおぴさん
      うおぉこれ読みたいけど躊躇してました・・・・・・!気になる。。。
      うおぉこれ読みたいけど躊躇してました・・・・・・!気になる。。。
      2013/02/15
    • cecilさん
      >さおぴさん
      エロいのと暗いのが平気であればお薦めです!読み終わった時の疲労感がなんともいえないw
      >さおぴさん
      エロいのと暗いのが平気であればお薦めです!読み終わった時の疲労感がなんともいえないw
      2013/02/15
  • 冒頭が狡い。「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくり広げながら、こちらに歩いてきた。」なんて、文章に掴まれて引きずり込まれました。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な小説の冒頭に匹敵するくらい作者にしてやられたなーと思いました。
    ただ内容は静かなのに激しい。決して気分の良い物語ではないです。
    淳悟にとっても花が“私の女”なら良いのになと思いました。花が女としてなれる淳悟のすべてであったらなーと。花にとっては淳悟がすべてだという感じがしました。
    でも、どんどん物語が過去に遡っていくから、まるで花に未来はないよ、あるのは過去だけだよ、と作者が言っているような気がしてならなかったです。花の前から姿を消した淳悟はどこへ向かったのでしょうか。

    そういえば、花の「おとうさぁん」という呼び方や、大塩じいさんの「ヨォ」とか「ネェ」という語尾が、いい感じでイラッとさせてくれました。

  • こんなにも激しい父と娘の関係は許されるのだろうか。

  • 花と淳悟、二人の関係は読めば読むほど凄く痛々しかった。

    私の男、、、、。


    傷んで、貧乏くさくて、でもどこか優雅で落ちぶれた貴族の様な風貌。
    雨のような匂いがする養父はまぎれもなく、私の男だった。


    湿気を帯びて、むせかえる様な甘い匂いを放つ文章はとても気持ちがいいものではなかったけれど、でも読む手が止まらず一気に読んでしまった。



    見てはいけないものから目が離せない、そんな感覚、、、。




    血は水より濃い。




    欠損してる何かを埋めあう様に求めあう二人は、獣でしかなかった。



    世の中にはしてはならないことがある。
    越えてはならない線を越えてしまった親子、、、




    人間の弱さと強さ、美しさと汚さ、、、



    合わせもつ両面を見事に書ききった作品だと思う。

  • 表現力が凄すぎる。
    しつこくないのに、ねばつく感じ。
    愛の湿りを感じた。

  • 濃厚すぎて胸焼けがする。歪な関係は甘い腐臭を放ち、そのせいで秘密は他人に嗅ぎつけられてしまう。

    浅野忠信と二階堂ふみ、この二人であればきっとこの汚れた密事も美しい映像に成り得るだろう。

  • 理解できなかった。登場人物のすべてが気持ち悪かった。

  • すっごくゾクゾクする本だった。気持ち悪いと思う人が多いのも分かる。だけど、父に対する恋に似た憧れ?ってちょっと分かる。

    当たり前だけど、桜庭一樹、文章が上手すぎる。
    分厚いし、文字も大きくはないのに、気付いたら読み切ってた。ほんとに「これで三分の一くらいかな」って本を閉じたら、7割くらい読んでた。
    表現もすごく綺麗。「身内しか愛せない人間は、自分しか愛せない人間と同じ」とか、好き。それに、不気味な生々しさも好き。

    最初「この人の考えてる事は理解出来ない」って思っても、主人公が変われば「ああ、そういう人か」って分かる。自分と相容れないタイプの人間でも、スッと理解させてしまうのが上手すぎる。

  • クズな大人のせいで、不条理な人生を送る事になった女性の話。読み進めるのが辛かった。親からの性虐待を自分の中で肯定しなければ、自殺しかなかったんだろうな。作者はなんでこんな話を書いたのだろう。自分のように怒りしか感じないなら、書いて正解だが、児童性虐待の加害者や被害者がこの作品で救われたりする人がいたり、主人公の男に共感するような人がいたなら、作者や出版社や芥川賞選定委員は罪である。こういう犯罪はまだ続いているんだから。

  • カテゴリ化するのは無粋な話だけれども、ヒロインは綾波レイ的な何かだよなぁ、という雑感。処女に母性を持たせる聖母性ほど淫心を擽られることはない。
    エログロナンセンス三拍子揃えて勢いで読ませる筆力、薄い本と言われる界隈で好まれそうな題材を山盛りにし破綻させずに多視点(この辺りも薄い本らしさがある)及び逆順時系列を使い纏め上げる構成力、文章内の比喩表現が美しく湿度の高さを見事に表現していて、すばらしいと思う。

    ところでナンセンスはどこにあるのかというと。
    もうそもそも冒頭の結婚が成立してしまうところやら、押入れの中身の腐乱を考えないところやら、(能力についての言い訳はあるにせよ)「目を見ればわかる」やら。現実的に考えたらそこはどうなの? あ、でもこの物語にリアリティは必要ない部分なんで削ったんですねわかります、としか納得出来ない部分。無理やりそう自分に言い聞かせても、喉に刺さった魚の小骨のように、世界に浸る邪魔をしてくれたけれど。

    全体的に文章がひどく官能的。男の手の乾燥した様や唾液の粘度の高さや乾燥した愛液など、水まわりの表現にくどいほど気を遣っているせいだろう。若干しつこく感じる程であるが、でもそこがまた滴るようですばらしい。エロスに湿り気は必須なのである。
    でもこれだけエロ描写が卓絶していても、この小説は官能小説ではないのである……不思議だなぁ。

    文庫版の表紙絵を見かけたけれど、"男"の両目は色のないマーガレットのような”花”で、干からびたような無骨な手だけが色を持っている。やはり男の手は強烈に意識に残るものとして作中に描かれているのだろう。

  • 怖いもの見たさで何とか完読。
    暗い、重い、気持ち悪いー。
    若い頃のジュンゴは綾野剛、現在のジュンゴは豊川悦司、で脳内再生された。

    自分がもし花だったら、ジュンゴのために、受け入れるのかなあ?
    可哀相な人、という気持ちは湧くけれど。
    怖いくらいの共依存ぶり。

    現代版源氏物語だなーと思いながら読んだ。

    花は結婚して幸せになれるのだろうか?
    彼女の抱える闇が深過ぎて、幸せになる気がしないのだけれど。

  • ふたりの心情はどこか現実離れしてるにも関わらず、引き込まれる。ふたりには、暗く深い海のような未来しか見えないのが、また辛くなる。

  • イヤな小説である。近親姦に殺人まで絡むのだから当たり前だ。だが、うなるほど上手い。
    冒頭のシーンで鮮やかな花柄の傘をさして銀座を歩く2人は、印象的ではあっても、まだ作り物めいたキャラクターだ。それが、荒川の拘置所近くの安アパート、黒い海を望む紋別の町に舞台を移したとたんに、肉の重さや匂いをまとわりつかせて動きはじめる。
    時間をさかのぼる叙述形式によって、あまりにありえなさそうな花と淳悟の関係に得心がいくようになるというわけでもない。ただ、その土地の濃厚な気配とともに、2人の肉の交わりが、実体のある重みとして感じられ始める。
    氷原の上で、花にこんこんと語りかける「大塩さん」、荒川のアパートの2人にとりついている田岡、結婚式の会場で、いい気になるなよ、小娘・・・という気配をのこして動く中年のウェイターなど、脇役たちが放つ存在感も強烈だ。
    主人公に「腐野」なんて名前をつけるあたりがどうも軽い印象だったのだが、先入観を裏切るどっしりした作家ぶりで、これから読む機会が増えそうだ。

  • いつまでも心に引っかかって消えていかない作品。
    おとなから子供へと遡っていく過程で見えるふたりの犯罪のかけらが見えていくにつれて胸が苦しくなります。あの流氷のシーンは鳥肌。
    桜庭さんのひらがなを使った文体がすきだなぁ・・・。ずっと「わたし」「わたしは」と言っていた花が
    「わたしの父」
    「私の男だ――」となる文に惚れ惚れとします。
    あと冒頭の「ぬすんだ傘を」も好き。
    もやもやして、薄気味悪くて、湿ってて、でもなんだか泣いてしまいそうな話でした。ああこの気持ちを伝えたいのに語彙が足りない。
    みんなに「読んで!」と言いながらもひとりっきりで味わいたい気もする作品。

  • 桜庭 一樹 『私の男』 ★★★
    (2007年10月・文藝春秋)

    狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。
    暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂。
    【第138回直木賞受賞作】 (文藝春秋HPより)

    『赤朽葉家の伝説』では物語を創造する力を見せつけられ、魅入られるようにページを繰った。
    『少女には向かない職業』を読み終えたときは、二人の少女のあまりにも痛々しい青春の苦味に、また同時に併せ持つ美しさに、ため息が漏れた。
    まだ2作しか読んでいないがそのいずれもが確実に読んだ者の心に何かを残していく。
    桜庭一樹は私にとってそんな作家であった。

    その桜庭さんが今度は近親相姦を描くという。

    少なからぬ期待を胸に本作を読んだが、読後、得体の知れない虚脱感に襲われた。

    物語全篇を侵食し、痛みにも似た感情を伴って繰り返される特異な文章表現。
    それは古き良き日本語の持つ枠から少しづつはみ出し、それでいて不思議な統一性を持っている。
    桜庭さん自身がいったいどれほどの時間を、愛情を、苦しみを注いだのか想像もつかない。

    先に現在を描き過去へと遡る構成により、楽観や希望が入り込む余地は排除されている。
    結果は明示されている。その過程を、その刹那を受けとめよと読者に迫る。
    唯一残されるのは2008年以降の未来。
    二人の物語の最期を描かないことで、本を閉じた全ての者に問いかけてくる。
     これでよかったのか。
     これしかなかったのか。
     これで終わりなのか、と。

    父・淳悟の心象風景を排除し、その眼の奥に宿るものを読者の心に喚起させていく。
    暗く深く、冷たいそれに触れたとき、ぞっとさせられる恐怖を感じた。
    しかしそれによってこの物語は二人の物語ではなく、花の物語へと変貌する。
    二人に当たっていると思っていたスポットライトは、一人の少女のほうへ収束していくのだ。

    『赤朽葉家の伝説』『少女には向かない職業』『私の男』と読んで、この3作に連なるものが、抗いきれない運命に立ち向かう少女、だと知れる。
    桜庭さんの手にかかると、彼女たちが果たして立ち向かっているのか、それともただただ翻弄されているだけなのかは定かではないのだが…。
    この「少女性」こそが桜庭さんの描きたいテーマだとすれば、なるほど年代順に作品を見れば、作家としての著しい成長の跡が見てとれる。
    しかしこの『私の男』がその答えだとするならば桜庭さんの出した答えはあまりに酷ではないのか。
    花が淳悟を受け入れたとき、そこに諦観はなく、受容と寛容が描かれていた。
    母性という後ろ盾こそあったが、私にとってはおよそ理解しがたい心根であった。

    この作品の評価を★3つなんていう低評価にしたのは、桜庭さんへのささやかな抵抗である。
    これほどまでに心をざわつかせ、絡めとるような作品ならば★5つが妥当なのだろうが、
    さらなる高みに用意された桜庭さんの答えを見たときに、これまでに読んだ作品が昇華されるのではないのか。
    そんな気がする。

    65点(100点満点)。

  • 私はこういう話が大好きなので、この本に出会えてよかった。
    万人受けするかどうかは別としてね。
    人物や情景の描写、お話の組み方が非常にうまい。
    はまってしまう人は引きずり込まれてしまう、お話。

  • 桜庭一樹の著作は読んだことがなかったので、
    どれか借りてみようと思い手に取った一冊。
    ちょうど直木賞受賞作品があったので、これを借りました。
    何の気なしに読んでみたが、
    頭をがつんと殴られたかのようなショックを受けた。

    恋人とか夫婦って結局は他人だけど、
    血のつながった、それも兄弟とかではなく親子。
    ダイレクト、これ以上ないくらいダイレクトな繋がり。
    究極の愛が、そこにはある。

    保護者としての、子の幸せを思い導いていく責任からは大きく外れていて
    子にとっては究極の愛とは言い切れないゆがんだ愛。
    でも、彼にとってはベスト
    これ以上ない、切ない、愛の形

    どうせ他人だし・・・なんて男と女について悶々しているわたし、
    こんな風に愛されたいと思ってしまった
    歪んでいるけど、歪まずにはいられないくらい愛されたい。
    こんなわたしも歪んでる?

    お話の組み方もうまい。ひきこまれる
    時系列順に記されていたら、こんなにはまらなかった


    究極の愛のおはなし


    こどもにとって、幸せなのかはわからないけど。

  • しんどい話だった
    でもあれが時系列順になってたらもっと鬱になってたと思う

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著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば・かずき):1971年鳥取県出身、小説家。1999年、「夜空に、満天の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞し、翌年デビュー。『GOSICK』シリーズが注目され、さらに04年発表の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。07年に『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞を、翌08年に『私の男』で第138回直木賞を受賞。おもな著書に『少女を埋める』『紅だ!』『彼女が言わなかったすべてのこと』『名探偵の有害性』など、またエッセイ集に〈桜庭一樹読書日記〉シリーズや『東京ディストピア日記』などがある。

「2025年 『読まれる覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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