私の男

著者 :
  • 文藝春秋
3.56
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本棚登録 : 4618
レビュー : 984
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163264301

作品紹介・あらすじ

優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る-。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂。

感想・レビュー・書評

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  • 花の感情だけに入り込んでいけば、くらく沈みゆくような悲痛な恋の話。愛するおとこに、人生すべて与え、与え、奪われつくし、それでもその愛だけを頼りに立つ老女のような若い女。「離れなければならない」と、身を引きちぎる思いで光りのあたる人生に挑むが、失いきれず立ち尽くす。
    読んでいて迫りくる、花のあまりの悲しみ。

    これは女のひとのための物語と思う。男性はこんなものつきつけられたら嫌ではないだろうか。美郎は、ほのかにしかこの物語に気づけない。…おんなのこはみんな、過去の悲恋をかくして、あなたのまえで微笑んでいるのかもしれない。それがたとえこれほどおぞましいものでないとしても。
    (なんて。
    ところで作者が別の本にて、淳吾のビジュアルはオダジョー派とトヨエツ派がいて…という話をされていた。おもしろかったです。私、オダジョー派です。

  • とにかく強烈だった。
    桜庭さんの作品はかなり読んだけどこれは次元が違うくらい強烈に印象が残ってる。

    禁断の父娘(花と淳悟)の恋愛関係について書かれた本。
    仄暗いストーリーだけどものすごくパワーを感じて、
    読みだすと止まりませんでした。強烈な引力に引き寄せられているような。
    また、過去に遡っていくストーリー展開も効果的だった。
    各章ごとに語り手が変わる芥川スタイルはもうトレンドですね。

    流氷のシーンは鳥肌が立ちました。
    流氷を見送る花の壮絶とも言える表情が不思議と鮮明に思い浮かんだ。

    男性には受け入れがたい話かもしれないけど、
    この本を評価する女性は多いのではないでしょうか。
    あと、物語に整合性を求める方には向かないですね。
    でも人間に整合性を求めるなんてナンセンスな気もします。

    他人には理解できない感情はあって当然。
    支離滅裂な展開だってこの世の中には一杯ありますから。

    読み終わって釈然としない方もいらっしゃるかもしれないけれど、
    私はこの物語に流れてる雰囲気とその時々の感情の描写を評価したいです。
    物語を通しで捉えるとうーんと思うかもしれないけど、
    登場してくるシーンを一つ一つ切り取るととても秀逸。
    そんな「私の男」とってもいいと思います。

    淳吾のビジュアルはオダジョー派かトヨエツ派か。
    私は断然、トヨエツ派。
    ろくでも無いけどかっこいい。
    こういうキャラクターに私は弱いんですよね。

    • さおぴさん
      うおぉこれ読みたいけど躊躇してました・・・・・・!気になる。。。
      うおぉこれ読みたいけど躊躇してました・・・・・・!気になる。。。
      2013/02/15
    • cecilさん
      >さおぴさん
      エロいのと暗いのが平気であればお薦めです!読み終わった時の疲労感がなんともいえないw
      >さおぴさん
      エロいのと暗いのが平気であればお薦めです!読み終わった時の疲労感がなんともいえないw
      2013/02/15
  • 冒頭が狡い。「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくり広げながら、こちらに歩いてきた。」なんて、文章に掴まれて引きずり込まれました。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な小説の冒頭に匹敵するくらい作者にしてやられたなーと思いました。
    ただ内容は静かなのに激しい。決して気分の良い物語ではないです。
    淳悟にとっても花が“私の女”なら良いのになと思いました。花が女としてなれる淳悟のすべてであったらなーと。花にとっては淳悟がすべてだという感じがしました。
    でも、どんどん物語が過去に遡っていくから、まるで花に未来はないよ、あるのは過去だけだよ、と作者が言っているような気がしてならなかったです。花の前から姿を消した淳悟はどこへ向かったのでしょうか。

    そういえば、花の「おとうさぁん」という呼び方や、大塩じいさんの「ヨォ」とか「ネェ」という語尾が、いい感じでイラッとさせてくれました。

  • 花と淳悟、二人の関係は読めば読むほど凄く痛々しかった。

    私の男、、、、。


    傷んで、貧乏くさくて、でもどこか優雅で落ちぶれた貴族の様な風貌。
    雨のような匂いがする養父はまぎれもなく、私の男だった。


    湿気を帯びて、むせかえる様な甘い匂いを放つ文章はとても気持ちがいいものではなかったけれど、でも読む手が止まらず一気に読んでしまった。



    見てはいけないものから目が離せない、そんな感覚、、、。




    血は水より濃い。




    欠損してる何かを埋めあう様に求めあう二人は、獣でしかなかった。



    世の中にはしてはならないことがある。
    越えてはならない線を越えてしまった親子、、、




    人間の弱さと強さ、美しさと汚さ、、、



    合わせもつ両面を見事に書ききった作品だと思う。

  • 濃厚すぎて胸焼けがする。歪な関係は甘い腐臭を放ち、そのせいで秘密は他人に嗅ぎつけられてしまう。

    浅野忠信と二階堂ふみ、この二人であればきっとこの汚れた密事も美しい映像に成り得るだろう。

  • カテゴリ化するのは無粋な話だけれども、ヒロインは綾波レイ的な何かだよなぁ、という雑感。処女に母性を持たせる聖母性ほど淫心を擽られることはない。
    エログロナンセンス三拍子揃えて勢いで読ませる筆力、薄い本と言われる界隈で好まれそうな題材を山盛りにし破綻させずに多視点(この辺りも薄い本らしさがある)及び逆順時系列を使い纏め上げる構成力、文章内の比喩表現が美しく湿度の高さを見事に表現していて、すばらしいと思う。

    ところでナンセンスはどこにあるのかというと。
    もうそもそも冒頭の結婚が成立してしまうところやら、押入れの中身の腐乱を考えないところやら、(能力についての言い訳はあるにせよ)「目を見ればわかる」やら。現実的に考えたらそこはどうなの? あ、でもこの物語にリアリティは必要ない部分なんで削ったんですねわかります、としか納得出来ない部分。無理やりそう自分に言い聞かせても、喉に刺さった魚の小骨のように、世界に浸る邪魔をしてくれたけれど。

    全体的に文章がひどく官能的。男の手の乾燥した様や唾液の粘度の高さや乾燥した愛液など、水まわりの表現にくどいほど気を遣っているせいだろう。若干しつこく感じる程であるが、でもそこがまた滴るようですばらしい。エロスに湿り気は必須なのである。
    でもこれだけエロ描写が卓絶していても、この小説は官能小説ではないのである……不思議だなぁ。

    文庫版の表紙絵を見かけたけれど、"男"の両目は色のないマーガレットのような”花”で、干からびたような無骨な手だけが色を持っている。やはり男の手は強烈に意識に残るものとして作中に描かれているのだろう。

  • 怖いもの見たさで何とか完読。
    暗い、重い、気持ち悪いー。
    若い頃のジュンゴは綾野剛、現在のジュンゴは豊川悦司、で脳内再生された。

    自分がもし花だったら、ジュンゴのために、受け入れるのかなあ?
    可哀相な人、という気持ちは湧くけれど。
    怖いくらいの共依存ぶり。

    現代版源氏物語だなーと思いながら読んだ。

    花は結婚して幸せになれるのだろうか?
    彼女の抱える闇が深過ぎて、幸せになる気がしないのだけれど。

  • ふたりの心情はどこか現実離れしてるにも関わらず、引き込まれる。ふたりには、暗く深い海のような未来しか見えないのが、また辛くなる。

  • イヤな小説である。近親姦に殺人まで絡むのだから当たり前だ。だが、うなるほど上手い。
    冒頭のシーンで鮮やかな花柄の傘をさして銀座を歩く2人は、印象的ではあっても、まだ作り物めいたキャラクターだ。それが、荒川の拘置所近くの安アパート、黒い海を望む紋別の町に舞台を移したとたんに、肉の重さや匂いをまとわりつかせて動きはじめる。
    時間をさかのぼる叙述形式によって、あまりにありえなさそうな花と淳悟の関係に得心がいくようになるというわけでもない。ただ、その土地の濃厚な気配とともに、2人の肉の交わりが、実体のある重みとして感じられ始める。
    氷原の上で、花にこんこんと語りかける「大塩さん」、荒川のアパートの2人にとりついている田岡、結婚式の会場で、いい気になるなよ、小娘・・・という気配をのこして動く中年のウェイターなど、脇役たちが放つ存在感も強烈だ。
    主人公に「腐野」なんて名前をつけるあたりがどうも軽い印象だったのだが、先入観を裏切るどっしりした作家ぶりで、これから読む機会が増えそうだ。

  • いつまでも心に引っかかって消えていかない作品。
    おとなから子供へと遡っていく過程で見えるふたりの犯罪のかけらが見えていくにつれて胸が苦しくなります。あの流氷のシーンは鳥肌。
    桜庭さんのひらがなを使った文体がすきだなぁ・・・。ずっと「わたし」「わたしは」と言っていた花が
    「わたしの父」
    「私の男だ――」となる文に惚れ惚れとします。
    あと冒頭の「ぬすんだ傘を」も好き。
    もやもやして、薄気味悪くて、湿ってて、でもなんだか泣いてしまいそうな話でした。ああこの気持ちを伝えたいのに語彙が足りない。
    みんなに「読んで!」と言いながらもひとりっきりで味わいたい気もする作品。

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著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば かずき)
1971年、島根県生まれの小説家。
1999年「夜空に、満点の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。
『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)、『私の男』で直木賞を受賞。他の代表作に『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『赤朽葉家の伝説』などがある。
ゲームのノベライズやライトノベル作品や、山田桜丸名義でゲームシナリオを手がけるなど幅広く活躍している。

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