私の男

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163264301

感想・レビュー・書評

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  • 花の感情だけに入り込んでいけば、くらく沈みゆくような悲痛な恋の話。愛するおとこに、人生すべて与え、与え、奪われつくし、それでもその愛だけを頼りに立つ老女のような若い女。「離れなければならない」と、身を引きちぎる思いで光りのあたる人生に挑むが、失いきれず立ち尽くす。
    読んでいて迫りくる、花のあまりの悲しみ。

    これは女のひとのための物語と思う。男性はこんなものつきつけられたら嫌ではないだろうか。美郎は、ほのかにしかこの物語に気づけない。…おんなのこはみんな、過去の悲恋をかくして、あなたのまえで微笑んでいるのかもしれない。それがたとえこれほどおぞましいものでないとしても。
    (なんて。
    ところで作者が別の本にて、淳吾のビジュアルはオダジョー派とトヨエツ派がいて…という話をされていた。おもしろかったです。私、オダジョー派です。

  • 表現力が凄すぎる。
    しつこくないのに、ねばつく感じ。
    愛の湿りを感じた。

  • いつまでも心に引っかかって消えていかない作品。
    おとなから子供へと遡っていく過程で見えるふたりの犯罪のかけらが見えていくにつれて胸が苦しくなります。あの流氷のシーンは鳥肌。
    桜庭さんのひらがなを使った文体がすきだなぁ・・・。ずっと「わたし」「わたしは」と言っていた花が
    「わたしの父」
    「私の男だ――」となる文に惚れ惚れとします。
    あと冒頭の「ぬすんだ傘を」も好き。
    もやもやして、薄気味悪くて、湿ってて、でもなんだか泣いてしまいそうな話でした。ああこの気持ちを伝えたいのに語彙が足りない。
    みんなに「読んで!」と言いながらもひとりっきりで味わいたい気もする作品。

  • 私はこういう話が大好きなので、この本に出会えてよかった。
    万人受けするかどうかは別としてね。
    人物や情景の描写、お話の組み方が非常にうまい。
    はまってしまう人は引きずり込まれてしまう、お話。

  • 桜庭一樹の著作は読んだことがなかったので、
    どれか借りてみようと思い手に取った一冊。
    ちょうど直木賞受賞作品があったので、これを借りました。
    何の気なしに読んでみたが、
    頭をがつんと殴られたかのようなショックを受けた。

    恋人とか夫婦って結局は他人だけど、
    血のつながった、それも兄弟とかではなく親子。
    ダイレクト、これ以上ないくらいダイレクトな繋がり。
    究極の愛が、そこにはある。

    保護者としての、子の幸せを思い導いていく責任からは大きく外れていて
    子にとっては究極の愛とは言い切れないゆがんだ愛。
    でも、彼にとってはベスト
    これ以上ない、切ない、愛の形

    どうせ他人だし・・・なんて男と女について悶々しているわたし、
    こんな風に愛されたいと思ってしまった
    歪んでいるけど、歪まずにはいられないくらい愛されたい。
    こんなわたしも歪んでる?

    お話の組み方もうまい。ひきこまれる
    時系列順に記されていたら、こんなにはまらなかった


    究極の愛のおはなし


    こどもにとって、幸せなのかはわからないけど。

  • しんどい話だった
    でもあれが時系列順になってたらもっと鬱になってたと思う

  • 私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。〈本文より〉

    この冒頭の一文で一気に引き込まれた。
    さらにその後明かされる主人公とその養父の名前。
    腐野(くさりの)て。
    思わず笑ってしまった。
    『砂糖菓子〜』の海野藻屑といい、桜庭一樹のネーミングセンスは毒が効いてて本当に面白い。

    読み始めてからはあっという間だった。
    見てはいけないものを見ているような後ろめたい気分になるけれど、それでもページを捲る手を止めることができない。
    凄いものを読んでしまったと思った。
    ここまで心の奥底を鷲掴みにされて揺さぶられるような感覚を味わったのは、初めてかもしれない。

    現在から過去へ、徐々に明かされていく花と淳悟の背徳的な関係と、彼らの犯した罪。
    狂信的なまでに求め合う二人の姿からは、鳥肌が立つような不快感と共に、お互いの存在以外何もいらないという壮絶な絆を感じた。

    9歳の実の娘と肉体関係を結んでしまうという、あまりに異常な父親であるはずの淳悟が物凄く魅力的に書かれていることに驚き。
    こんなに格好良い男が父親だったらあり得ない話でもないのかも‥‥なんて思ってしまうのが恐ろしいところ。

    彼らの過去を知った上でもう一度第一章を読み返すと、自分の娘であり母であり女である花の花嫁姿を見つめる淳悟と、自分の父であり息子であり男である淳悟との別れを決意した花の心情があまりにも切なくて苦しくて、涙が出た。
    花はエリート会社員の美郎との結婚で世間的には勝ち組になったのかもしれないけれど、彼女の幸せはやっぱり淳悟なくしてあり得ないと思う。
    淳悟はあの後どうなったのだろうか‥‥。

    どうでもいい話になるけれど、個人的に淳悟のビジュアルイメージはチバユウスケしか考えられない。

  • 「愛」は、親や恋人など、向ける人によって表現方法が異なるけど、淳吾と花には「愛」を向ける対象がお互いしか居なかったため、あらゆる「愛」の表現方法の全てを、お互いに対して行っていたように感じた。

    奇妙さとエロさが常に漂う、本当に大好きな作品。

  • 読了日2010/08
    第138回直木賞受賞作品。この本を手にするまでに9カ月待ちました!
    やっとやっと図書館の予約が回ってきて、2日で読み終わっちゃった。
    なんとも気が長い・・・買えばいいんだけど(笑)

    震災で家族を亡くした9歳の少女。その子を引き取った天涯孤独の25歳の親戚の男。
    少女、花が9歳から結婚する24歳までの、この2人の絡みつくような濃厚な関係と血への執着を描いた物語。
    内容が重たく、その上、背景がオホーツクに面した北海道紋別の黒い海と東京の場末の古びた汚いアパートとすごく暗い。
    内容が内容だけに、嫌悪する読者も大勢いると思うけど、「あぁわかるわかる」という所が全くないだけに、すごく興味をそそられる。
    もう一度、読み返してみたくなる。

    それに、個人的に、このどうしようもない暗い穴に落ちて行く一方みたいな物語好きです。

  • 歪んでいてどうしようもないけど
    純愛だと思った。
    文章のねっとりした感じが好き。
    薄暗いけど透明な話。

著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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