私の男

著者 :
  • 文藝春秋
3.56
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  • (59)
本棚登録 : 4616
レビュー : 984
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163264301

作品紹介・あらすじ

優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか?この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る-。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂。

感想・レビュー・書評

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  • 花の感情だけに入り込んでいけば、くらく沈みゆくような悲痛な恋の話。愛するおとこに、人生すべて与え、与え、奪われつくし、それでもその愛だけを頼りに立つ老女のような若い女。「離れなければならない」と、身を引きちぎる思いで光りのあたる人生に挑むが、失いきれず立ち尽くす。
    読んでいて迫りくる、花のあまりの悲しみ。

    これは女のひとのための物語と思う。男性はこんなものつきつけられたら嫌ではないだろうか。美郎は、ほのかにしかこの物語に気づけない。…おんなのこはみんな、過去の悲恋をかくして、あなたのまえで微笑んでいるのかもしれない。それがたとえこれほどおぞましいものでないとしても。
    (なんて。
    ところで作者が別の本にて、淳吾のビジュアルはオダジョー派とトヨエツ派がいて…という話をされていた。おもしろかったです。私、オダジョー派です。

  • とにかく強烈だった。
    桜庭さんの作品はかなり読んだけどこれは次元が違うくらい強烈に印象が残ってる。

    禁断の父娘(花と淳悟)の恋愛関係について書かれた本。
    仄暗いストーリーだけどものすごくパワーを感じて、
    読みだすと止まりませんでした。強烈な引力に引き寄せられているような。
    また、過去に遡っていくストーリー展開も効果的だった。
    各章ごとに語り手が変わる芥川スタイルはもうトレンドですね。

    流氷のシーンは鳥肌が立ちました。
    流氷を見送る花の壮絶とも言える表情が不思議と鮮明に思い浮かんだ。

    男性には受け入れがたい話かもしれないけど、
    この本を評価する女性は多いのではないでしょうか。
    あと、物語に整合性を求める方には向かないですね。
    でも人間に整合性を求めるなんてナンセンスな気もします。

    他人には理解できない感情はあって当然。
    支離滅裂な展開だってこの世の中には一杯ありますから。

    読み終わって釈然としない方もいらっしゃるかもしれないけれど、
    私はこの物語に流れてる雰囲気とその時々の感情の描写を評価したいです。
    物語を通しで捉えるとうーんと思うかもしれないけど、
    登場してくるシーンを一つ一つ切り取るととても秀逸。
    そんな「私の男」とってもいいと思います。

    淳吾のビジュアルはオダジョー派かトヨエツ派か。
    私は断然、トヨエツ派。
    ろくでも無いけどかっこいい。
    こういうキャラクターに私は弱いんですよね。

    • さおぴさん
      うおぉこれ読みたいけど躊躇してました・・・・・・!気になる。。。
      うおぉこれ読みたいけど躊躇してました・・・・・・!気になる。。。
      2013/02/15
    • cecilさん
      >さおぴさん
      エロいのと暗いのが平気であればお薦めです!読み終わった時の疲労感がなんともいえないw
      >さおぴさん
      エロいのと暗いのが平気であればお薦めです!読み終わった時の疲労感がなんともいえないw
      2013/02/15
  • 冒頭が狡い。「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくり広げながら、こちらに歩いてきた。」なんて、文章に掴まれて引きずり込まれました。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という有名な小説の冒頭に匹敵するくらい作者にしてやられたなーと思いました。
    ただ内容は静かなのに激しい。決して気分の良い物語ではないです。
    淳悟にとっても花が“私の女”なら良いのになと思いました。花が女としてなれる淳悟のすべてであったらなーと。花にとっては淳悟がすべてだという感じがしました。
    でも、どんどん物語が過去に遡っていくから、まるで花に未来はないよ、あるのは過去だけだよ、と作者が言っているような気がしてならなかったです。花の前から姿を消した淳悟はどこへ向かったのでしょうか。

    そういえば、花の「おとうさぁん」という呼び方や、大塩じいさんの「ヨォ」とか「ネェ」という語尾が、いい感じでイラッとさせてくれました。

  • 花と淳悟、二人の関係は読めば読むほど凄く痛々しかった。

    私の男、、、、。


    傷んで、貧乏くさくて、でもどこか優雅で落ちぶれた貴族の様な風貌。
    雨のような匂いがする養父はまぎれもなく、私の男だった。


    湿気を帯びて、むせかえる様な甘い匂いを放つ文章はとても気持ちがいいものではなかったけれど、でも読む手が止まらず一気に読んでしまった。



    見てはいけないものから目が離せない、そんな感覚、、、。




    血は水より濃い。




    欠損してる何かを埋めあう様に求めあう二人は、獣でしかなかった。



    世の中にはしてはならないことがある。
    越えてはならない線を越えてしまった親子、、、




    人間の弱さと強さ、美しさと汚さ、、、



    合わせもつ両面を見事に書ききった作品だと思う。

  • 濃厚すぎて胸焼けがする。歪な関係は甘い腐臭を放ち、そのせいで秘密は他人に嗅ぎつけられてしまう。

    浅野忠信と二階堂ふみ、この二人であればきっとこの汚れた密事も美しい映像に成り得るだろう。

  • カテゴリ化するのは無粋な話だけれども、ヒロインは綾波レイ的な何かだよなぁ、という雑感。処女に母性を持たせる聖母性ほど淫心を擽られることはない。
    エログロナンセンス三拍子揃えて勢いで読ませる筆力、薄い本と言われる界隈で好まれそうな題材を山盛りにし破綻させずに多視点(この辺りも薄い本らしさがある)及び逆順時系列を使い纏め上げる構成力、文章内の比喩表現が美しく湿度の高さを見事に表現していて、すばらしいと思う。

    ところでナンセンスはどこにあるのかというと。
    もうそもそも冒頭の結婚が成立してしまうところやら、押入れの中身の腐乱を考えないところやら、(能力についての言い訳はあるにせよ)「目を見ればわかる」やら。現実的に考えたらそこはどうなの? あ、でもこの物語にリアリティは必要ない部分なんで削ったんですねわかります、としか納得出来ない部分。無理やりそう自分に言い聞かせても、喉に刺さった魚の小骨のように、世界に浸る邪魔をしてくれたけれど。

    全体的に文章がひどく官能的。男の手の乾燥した様や唾液の粘度の高さや乾燥した愛液など、水まわりの表現にくどいほど気を遣っているせいだろう。若干しつこく感じる程であるが、でもそこがまた滴るようですばらしい。エロスに湿り気は必須なのである。
    でもこれだけエロ描写が卓絶していても、この小説は官能小説ではないのである……不思議だなぁ。

    文庫版の表紙絵を見かけたけれど、"男"の両目は色のないマーガレットのような”花”で、干からびたような無骨な手だけが色を持っている。やはり男の手は強烈に意識に残るものとして作中に描かれているのだろう。

  • 怖いもの見たさで何とか完読。
    暗い、重い、気持ち悪いー。
    若い頃のジュンゴは綾野剛、現在のジュンゴは豊川悦司、で脳内再生された。

    自分がもし花だったら、ジュンゴのために、受け入れるのかなあ?
    可哀相な人、という気持ちは湧くけれど。
    怖いくらいの共依存ぶり。

    現代版源氏物語だなーと思いながら読んだ。

    花は結婚して幸せになれるのだろうか?
    彼女の抱える闇が深過ぎて、幸せになる気がしないのだけれど。

  • ふたりの心情はどこか現実離れしてるにも関わらず、引き込まれる。ふたりには、暗く深い海のような未来しか見えないのが、また辛くなる。

  • イヤな小説である。近親姦に殺人まで絡むのだから当たり前だ。だが、うなるほど上手い。
    冒頭のシーンで鮮やかな花柄の傘をさして銀座を歩く2人は、印象的ではあっても、まだ作り物めいたキャラクターだ。それが、荒川の拘置所近くの安アパート、黒い海を望む紋別の町に舞台を移したとたんに、肉の重さや匂いをまとわりつかせて動きはじめる。
    時間をさかのぼる叙述形式によって、あまりにありえなさそうな花と淳悟の関係に得心がいくようになるというわけでもない。ただ、その土地の濃厚な気配とともに、2人の肉の交わりが、実体のある重みとして感じられ始める。
    氷原の上で、花にこんこんと語りかける「大塩さん」、荒川のアパートの2人にとりついている田岡、結婚式の会場で、いい気になるなよ、小娘・・・という気配をのこして動く中年のウェイターなど、脇役たちが放つ存在感も強烈だ。
    主人公に「腐野」なんて名前をつけるあたりがどうも軽い印象だったのだが、先入観を裏切るどっしりした作家ぶりで、これから読む機会が増えそうだ。

  • いつまでも心に引っかかって消えていかない作品。
    おとなから子供へと遡っていく過程で見えるふたりの犯罪のかけらが見えていくにつれて胸が苦しくなります。あの流氷のシーンは鳥肌。
    桜庭さんのひらがなを使った文体がすきだなぁ・・・。ずっと「わたし」「わたしは」と言っていた花が
    「わたしの父」
    「私の男だ――」となる文に惚れ惚れとします。
    あと冒頭の「ぬすんだ傘を」も好き。
    もやもやして、薄気味悪くて、湿ってて、でもなんだか泣いてしまいそうな話でした。ああこの気持ちを伝えたいのに語彙が足りない。
    みんなに「読んで!」と言いながらもひとりっきりで味わいたい気もする作品。

  • 桜庭 一樹 『私の男』 ★★★
    (2007年10月・文藝春秋)

    狂気にみちた愛のもとでは善と悪の境もない。
    暗い北の海から逃げてきた父と娘の過去を、美しく力強い筆致で抉りだす著者の真骨頂。
    【第138回直木賞受賞作】 (文藝春秋HPより)

    『赤朽葉家の伝説』では物語を創造する力を見せつけられ、魅入られるようにページを繰った。
    『少女には向かない職業』を読み終えたときは、二人の少女のあまりにも痛々しい青春の苦味に、また同時に併せ持つ美しさに、ため息が漏れた。
    まだ2作しか読んでいないがそのいずれもが確実に読んだ者の心に何かを残していく。
    桜庭一樹は私にとってそんな作家であった。

    その桜庭さんが今度は近親相姦を描くという。

    少なからぬ期待を胸に本作を読んだが、読後、得体の知れない虚脱感に襲われた。

    物語全篇を侵食し、痛みにも似た感情を伴って繰り返される特異な文章表現。
    それは古き良き日本語の持つ枠から少しづつはみ出し、それでいて不思議な統一性を持っている。
    桜庭さん自身がいったいどれほどの時間を、愛情を、苦しみを注いだのか想像もつかない。

    先に現在を描き過去へと遡る構成により、楽観や希望が入り込む余地は排除されている。
    結果は明示されている。その過程を、その刹那を受けとめよと読者に迫る。
    唯一残されるのは2008年以降の未来。
    二人の物語の最期を描かないことで、本を閉じた全ての者に問いかけてくる。
     これでよかったのか。
     これしかなかったのか。
     これで終わりなのか、と。

    父・淳悟の心象風景を排除し、その眼の奥に宿るものを読者の心に喚起させていく。
    暗く深く、冷たいそれに触れたとき、ぞっとさせられる恐怖を感じた。
    しかしそれによってこの物語は二人の物語ではなく、花の物語へと変貌する。
    二人に当たっていると思っていたスポットライトは、一人の少女のほうへ収束していくのだ。

    『赤朽葉家の伝説』『少女には向かない職業』『私の男』と読んで、この3作に連なるものが、抗いきれない運命に立ち向かう少女、だと知れる。
    桜庭さんの手にかかると、彼女たちが果たして立ち向かっているのか、それともただただ翻弄されているだけなのかは定かではないのだが…。
    この「少女性」こそが桜庭さんの描きたいテーマだとすれば、なるほど年代順に作品を見れば、作家としての著しい成長の跡が見てとれる。
    しかしこの『私の男』がその答えだとするならば桜庭さんの出した答えはあまりに酷ではないのか。
    花が淳悟を受け入れたとき、そこに諦観はなく、受容と寛容が描かれていた。
    母性という後ろ盾こそあったが、私にとってはおよそ理解しがたい心根であった。

    この作品の評価を★3つなんていう低評価にしたのは、桜庭さんへのささやかな抵抗である。
    これほどまでに心をざわつかせ、絡めとるような作品ならば★5つが妥当なのだろうが、
    さらなる高みに用意された桜庭さんの答えを見たときに、これまでに読んだ作品が昇華されるのではないのか。
    そんな気がする。

    65点(100点満点)。

  • 私はこういう話が大好きなので、この本に出会えてよかった。
    万人受けするかどうかは別としてね。
    人物や情景の描写、お話の組み方が非常にうまい。
    はまってしまう人は引きずり込まれてしまう、お話。

  • 桜庭一樹の著作は読んだことがなかったので、
    どれか借りてみようと思い手に取った一冊。
    ちょうど直木賞受賞作品があったので、これを借りました。
    何の気なしに読んでみたが、
    頭をがつんと殴られたかのようなショックを受けた。

    恋人とか夫婦って結局は他人だけど、
    血のつながった、それも兄弟とかではなく親子。
    ダイレクト、これ以上ないくらいダイレクトな繋がり。
    究極の愛が、そこにはある。

    保護者としての、子の幸せを思い導いていく責任からは大きく外れていて
    子にとっては究極の愛とは言い切れないゆがんだ愛。
    でも、彼にとってはベスト
    これ以上ない、切ない、愛の形

    どうせ他人だし・・・なんて男と女について悶々しているわたし、
    こんな風に愛されたいと思ってしまった
    歪んでいるけど、歪まずにはいられないくらい愛されたい。
    こんなわたしも歪んでる?

    お話の組み方もうまい。ひきこまれる
    時系列順に記されていたら、こんなにはまらなかった


    究極の愛のおはなし


    こどもにとって、幸せなのかはわからないけど。

  • しんどい話だった
    でもあれが時系列順になってたらもっと鬱になってたと思う

  • エロイだけの話かな?と読む前は思っていた。
    が、そういうものではなく、どちらかと言えばミステリーに近い。

    影のある親子、ただし養父と養女の関係。
    北に住んでいたときに、彼らに起こった出来事はなんだったのか?

    第一章が現代であり、花が結婚し養父から逃れていく。
    淳悟はその後姿を消してしまうため、どうなったのかすごく気になるが、その後が描かれていない。また、花の母親とどのようないきさつがあったのかも描かれていないため、その点が少し不満。母親と愛し合っていたのか、そうでなかったのか。

    結果的にあまり好きになれる内容ではなかったが、デビュー作でこれだけ書けるとは素晴らしいと思った。他の作品も読みたいと思える作家。

  • 店頭にこれが、並んだ時は、こういうのはいいですって、勝手に拒否。直木賞も煽って、結構、売れていたような。
    桜庭一樹という名前も普通に聞くようになって、急に読んでみようと思い立った。これが、私の読み時。
    すごく読み応えがあった。
    近親相姦が軸で、単純には、そこが桜庭一樹的と思える。内容は、奇をてらうったものではなく、文学が、ずっと取り上げてきた心の闇とそこにある家族の話。本当に欠陥を持ってしまった時、それでも生きていくのに、必要なものを考えさせられたし、本当にそれでも生きていかなければならないのかとさえ思ったけれど、答えなんて出ない。誰かを犠牲にして、それでも、幸せには生きられない負のスパイラル。あー、久々に出口のない話を読んだ。

  • 私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。〈本文より〉

    この冒頭の一文で一気に引き込まれた。
    さらにその後明かされる主人公とその養父の名前。
    腐野(くさりの)て。
    思わず笑ってしまった。
    『砂糖菓子〜』の海野藻屑といい、桜庭一樹のネーミングセンスは毒が効いてて本当に面白い。

    読み始めてからはあっという間だった。
    見てはいけないものを見ているような後ろめたい気分になるけれど、それでもページを捲る手を止めることができない。
    凄いものを読んでしまったと思った。
    ここまで心の奥底を鷲掴みにされて揺さぶられるような感覚を味わったのは、初めてかもしれない。

    現在から過去へ、徐々に明かされていく花と淳悟の背徳的な関係と、彼らの犯した罪。
    狂信的なまでに求め合う二人の姿からは、鳥肌が立つような不快感と共に、お互いの存在以外何もいらないという壮絶な絆を感じた。

    9歳の実の娘と肉体関係を結んでしまうという、あまりに異常な父親であるはずの淳悟が物凄く魅力的に書かれていることに驚き。
    こんなに格好良い男が父親だったらあり得ない話でもないのかも‥‥なんて思ってしまうのが恐ろしいところ。

    彼らの過去を知った上でもう一度第一章を読み返すと、自分の娘であり母であり女である花の花嫁姿を見つめる淳悟と、自分の父であり息子であり男である淳悟との別れを決意した花の心情があまりにも切なくて苦しくて、涙が出た。
    花はエリート会社員の美郎との結婚で世間的には勝ち組になったのかもしれないけれど、彼女の幸せはやっぱり淳悟なくしてあり得ないと思う。
    淳悟はあの後どうなったのだろうか‥‥。

    どうでもいい話になるけれど、個人的に淳悟のビジュアルイメージはチバユウスケしか考えられない。

  • 賞を取って話題になり、名前は聞いていたものの、
    ベタベタな恋愛小説なのかなーと思っていて、内容は全然知りませんでした。
    たまたま目に付いて借りてみたんですが。

    恋愛小説には違いないんだろうけど、原点は家族愛か。
    いや、もっと深くて重いにしても。自分のツボは、今は恋愛より家族。それも再認識。
    近親相姦も、小さい女の子と大人の男の性交渉も、生理的にすごい苦手。
    ストーリーに引っ張られるのと、無条件で見たくないものから引こうとするのと、
    真逆のベクトルの綱引きで結構消耗しながら、それでもぐんぐん読まされた。

    彼ら二人だけの閉じた世界は、ねっとりと濃密過ぎて胸焼けしそうだったけども、
    ていうかはっきり言って気持ち悪かったんだけれども、
    それでも尚、自分にとってもこれが傑作だという結論になったのは、
    時系列的には遡って物語の発端となる、最終章に泣かされたことが大きい。

    逃げ惑う大災害のパニックの中で、転んでしまうお母さんと小さな妹、
    駆け戻るお父さん、そして夜遊びしていた中学生のお兄ちゃんも、
    最後に間に合って家族がそろう、あのシーンです。ネタバレすいません。
    次の瞬間に津波に呑まれて散り散りになる大悲劇であるとしても、
    終わりのときを共有できた彼らは、それでも幸せだったと思ってしまったし、
    だからこそ、その場から疎外されてしまったヒロイン花の、
    引きちぎられるような喪失感と孤独が、ものすごく鋭く突き刺さってきた。
    おとうさんの「生きろ、がんばれ」という言葉の残酷さ。言い尽くせない。

    同じように巨大な空洞を抱えた養父と、寂しさを埋めるために
    狂気のように混じりあってしまうのにも納得できました。
    寂しさがどれだけ大きなマイナスエネルギーになるか、まだ辛うじて覚えてる。
    唯一無二の自分達の世界を守るために、犯罪に走ってしまうことにも。
    第一章=ラストシーンで、花が半身をもぎ離すように社会に戻る意味の大きさも。
    嫌いな話なのに共感させられてしまったのですから、やっぱり傑作だということです。
    でもやっぱり、嫌いだけどね・・・。

  • 読了日2010/08
    第138回直木賞受賞作品。この本を手にするまでに9カ月待ちました!
    やっとやっと図書館の予約が回ってきて、2日で読み終わっちゃった。
    なんとも気が長い・・・買えばいいんだけど(笑)

    震災で家族を亡くした9歳の少女。その子を引き取った天涯孤独の25歳の親戚の男。
    少女、花が9歳から結婚する24歳までの、この2人の絡みつくような濃厚な関係と血への執着を描いた物語。
    内容が重たく、その上、背景がオホーツクに面した北海道紋別の黒い海と東京の場末の古びた汚いアパートとすごく暗い。
    内容が内容だけに、嫌悪する読者も大勢いると思うけど、「あぁわかるわかる」という所が全くないだけに、すごく興味をそそられる。
    もう一度、読み返してみたくなる。

    それに、個人的に、このどうしようもない暗い穴に落ちて行く一方みたいな物語好きです。

  • 読了2回目

    こんな終わり方だったっけ?

    物語は現在から過去に向かって進んでいく。

    間違ったことをしていた2人なのに、最後に幸せな結婚が出来た花は良かったと思うけど、安定した海上保安官の立場を捨てて、どんどん荒んでいった淳悟はどうなったんだろう。

    結末はこれが一番良かったんだろうけど、なぜだか花にはお父さんから離れないで欲しかったかも。

  • 歪んでいてどうしようもないけど
    純愛だと思った。
    文章のねっとりした感じが好き。
    薄暗いけど透明な話。

  • 二人に全く共感出来ないので、ただただグロテスクな二人の関係を遡って知っていく本でした。

    最後まで読むと、どちらのせいでもない不幸だと感じます。
    最後まで読んで、第1章を読み返しました。
    過去を捨てやり直す若さがある花と、もう捨てられない老いがある淳悟が離れるのは必然だと思いました。

  • 濃厚で衝撃的で残像がいつまでも頭から離れない...そんな映画で、どうしても気になる部分が多々あったので補うつもりで原作を。
    なるほど単なる近親相姦ではないんだなあ、と。
    花はおとうさんコンプレックス。
    淳悟はおかあさんコンプレックス。
    花はそれを埋めるように淳悟を。
    淳悟はそれを埋めるように”血の人形”である、花を。
    「おとうさあーん」と叫ぶ花と、
    「おかあさあーん」と叫ぶ淳悟、似ているなあって。
    もちろん、補うためだけではないと思うけれど。
    再読する際は第6章から遡るつもり。
    またもういちど、映画も観たいです。
    浅野さんと二階堂ふみちゃん、圧巻でした。
    本を読んでいても、二人がほんとうに、そこに、いるみたい。

  • イエモンにインスピレーションを得ていると知って納得。
    確かに私の知ってるあの世界だ。
    花のことを理解できるのは自分の環境のせいだろうと気付いて妙にざわつく。

  • 遡っていく時系列、登場人物それぞれの視点に立たせたチャプター構成がよかった。
    一人一人の性格や考え方も際立ってくるし、2人の強い絆と歪んだ関係に引っ張られすぎないように読み進められた。都内にいると、自然環境や土着特有の文化、職業に左右されるといった感覚を覚えない。よくも悪くも育った環境にいかに影響されるか、感じさせられた一冊。

  • 重たいけど、スッと入る感じ。とても読みやすい。田舎町の描写が2人の関係を余計歪んだものにさせていた。義父の振る舞いや言葉にキュンときてしまったことも。親子、恋人、近親相姦といった表現じゃなにか物足りない。もっと深くて薄暗い。読み終わった後に『ふぅ…』と溜息を漏らしてしまうような後に引く話。お気に入りです。

  • 読みにくそうなテーマなので手を出せずにいたけど、読んでみたらすごく好きな雰囲気の本でした。暗くて、生臭い。
    孤独だった者同士の依存と愛。現在から過去をさかのぼって書いてあり、読み終わったあとにはまた最初から読みたくなる。花と淳悟の関係が素敵だと思ってしまった。骨になっても一緒に居たいと思えるのはうらやましい。二人が出会ったころの話もよかった。花が人殺しをするシーンは頭の中に映像が鮮明に浮かんでトラウマになる。淳悟が消えてから、二人はどうなったのかまったく予想がつかない。まだ終わっていない気がする。

  • ストーリーとしては賛否両論あるだろうが、物語全体に漂う爛れて寒々しい雰囲気が読んでいて伝わってくる。特に花と大塩爺の流氷の上での対峙の場面、情景が嫌でも目の前に浮かんでくる。それだけでもこの小説を評価する理由になる。

  • 今まで読んできた桜庭作品とは感じが違うからなかなか手を出さずにきた一冊。読み始めると惹き込まれて一気読み。時系列が逆になっているので段々と色んなことに明らかになっていく。どろどろしてるし花と淳悟の愛の形は歪みきってるのに、文章がとても綺麗で、もう一度読みたいと思わせる作品だった。最後の方は今読むと少し辛いものがあるかも。2011/533

  • 新婚の現在から、おとうさんとのこれまでの生活を過去に遡って、おとうさんと出会うまで読み進めていく。

    娘もおとうさんもそれぞれ心に闇を抱え、さらに新たな闇を共有したからなのか、お互いが依存し過ぎて離れ難くなっている。
    でもだからと言って、超えてはならない一線を越えてしまう点は理解しがたいなぁ。

    読み応えはあったけど、気になる事もあり余りすっきりしない…。

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著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば かずき)
1971年、島根県生まれの小説家。
1999年「夜空に、満点の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。
『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)、『私の男』で直木賞を受賞。他の代表作に『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『赤朽葉家の伝説』などがある。
ゲームのノベライズやライトノベル作品や、山田桜丸名義でゲームシナリオを手がけるなど幅広く活躍している。

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