本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784163266701
感想・レビュー・書評
-
2作収録。どちらも主人公は女性で、身内との関係に鬱々と悩んでいる。妹の恋人と関係を持った姉の、「妹の方が自分より愛されているのではないか」という感覚はなんとなく理解できる。
ぼやけたはっきりしない、何かひっかかるものを感じ、2作だけでは判断ができない。著者の他の作品を検索しても殆ど情報がない。もう書いていないのかな。岩井俊二あたりが映画化しそうと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者は1978年生まれだそうで、若い世代だけに「今」を捉える感覚が優れているな、というのが第一印象。
「湖水地方」の湖、「シャルル・ド・ゴールの雨女」の空き地を潰してできた広大な公園などの情景の無味乾燥さが、「今」という時代をよく表しているように思えます。
個人的には「シャルル・ド・ゴールの雨女」のほうが好み。
空港のカフェでの短い時間の会話と回想を切り取った作品ですが、テンポラリーな舞台設定と、主人公の極めてプライベートな(他人から見れば取るに足らない、しかし本人にとっては深刻な)煩悶とのバランスが、妙味のある抒情性を生んでいます。
「湖水地方」のほうは、妹が体調を崩して嘔吐した…という始まり方がいきなりベタさを感じさせるオープニングで、やや萎えました。
最後に、突飛に葦舟が登場するあたりの唐突性は嫌いじゃないですが。 -
「湖水地方」というタイトルに惹かれ、読みました。
帯には、「何が起きていたのか?何が起きなかったのか?美しい姉妹の間に迫る、逃れがたき葛藤」とまるで往年の大映ドラマのような仰々しい言葉が並び、どんな話かと思いきや。。妹の彼との逢瀬、華やかな美人である妹への意識下の嫉妬心など、確かに大映ドラマ的でありながら、さらりとして、それでいて内面を描くような筆致で、また、主人公の一種の諦観のようなものが、仰々しさや厭らしさを感じさせない素敵な物語だった。
もう一篇の「シャルル・ド・ゴールの雨女」も、表題作と同じく、ある種の諦観が漂っていて、素敵な物語である。
新しい作品が出れば、ぜひ読んでみたいと思える、新人作家さんでした。