オブ・ザ・ベースボール

著者 :
  • 文藝春秋
3.24
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本棚登録 : 359
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163267302

作品紹介・あらすじ

ファウルズ。とある町の名前でこの町の名前。人が降ることで有名で、地理の試験に出ることは決してないが、誰もがみんな知っている。人が降るっていうのは人が降るってことで、つまり文字通り人が降る。降るなら雨か雪、せいぜいがところ蛙程度にしておいて欲しいという要望は上まで届いたことがない。そんな町に送られてきたユニフォームとバットを身につけたレスキュー・チーム=町の英雄たちの物語。第104回文學界新人賞受賞作。知の迷宮をさまよう「つぎの著者につづく」併録。

感想・レビュー・書評

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  • 色々評価や解釈が違うのが本の面白さ。作者のテーゼを挑戦ととるか、ひとりごとととるかで楽しみ方はぜんぜん違う。
    「オブ・ザ・ベースボール」は、予測可能であるが理不尽がともなう偶然性。打者なのに「カムオン、オールライト」という立場の逆転と「ヒット」を複数もの意味を重ねているところが味噌だと思う。位相の逆転と時間の捻れが組み合わさるといかに簡単に複雑な世界を生み出すのか。でも結局、人間は与えられた世界で与えられた役割をこなすことが生きるために必要で、それが尊厳であるし、自己を自己で叩いても同量のダメージを両方に与える。生死を分かつのは、運命の重力にしたがって、堕ちてくるか、そのポイントにスライドするかの違いで全て時間で表現できる(ただし上昇はしない)。ベースボールは手段であり、本来の目的はレスキューなのだから、名前はどうでもよい。何を目的として生きて、何をなすかなんて、凡人にはできるはずがない。そしてなしてしまったら、そこから強制的に退去させられる。のさばっているのは、人生から引退した人間のみで観客。フィールドプレイヤーの尻を追っかけ、勝手に飽き、また本人の勝手な思いを載せて投影して戻ってくる人間が意外に多いのだ。
    「つぎの作者につづく」は、円城塔的デカルト命題。「我思う、故に我あり」が誰かの思いと重なっているならば、我は一体何か?存在の分からない誰かの過去既に発表されていた(と言われる)思いと重なっているならば、その誰かを認めることができれば、自分とは違う人として認識され、自己の存在が肯定される。僕は僕で誰かじゃない、ことは他者に指摘されて初めて客観性を持つものであり、主観の徹底排除と絶対的肯定をシニカルに描く。自社と他者とのボーダーが曖昧になり、誰かのフィーチャリングとか、コピーとか、影響とか全く受けていない人間などすでに存在はせず、その作為の排除の証明はバカバカしいほどで(ペゴス)、それが作為的でないと対象者本人が証明できない以上、絶対的客観と相対的主観にもとづいて、結局誰かのバトンは渡すとか受け取るとかの以前に、破片となって誰かに刺さっている。それが本人の望む望まないに関わらず。
    答えを求める読書なんて参考書を読むことで十分だ。本には人生を楽しむ(生きる)ヒントとスパイスはあるけど(それが注釈のように)、答えなんてあるわけがない。自分が今、この文字を読んでいるって誰が証明できる?僕が読んで、書いている文字は、もしかしたら貴方の見てきた、書いてきた文字ではないのかもしれないのに。

  • この人やっぱりすごい。いろいろ言ってるけど、結局何もない。なんだけど、何かある感じ。
    形式すらも判然とせず、フィクション、メタフィクション、はたまた自伝、という感じ。
    通読するには一定の忍耐が必要。でも面白いよ、これ。

    図書館にて。

  • 表題作はまだいい。
    二作目の訳わからなさが異常すぎる。
    この手の本に慣れないからか、内容のせいか、読んでる最中に頭が痛くなってくる。

  • レスキュー・チームとベースボールのキーワードに惹かれて読んだけど、全くもって理解不可能だった。オイラの少ない知識と勘と感受性を総動員して、何かをわかろうとするんだけど何かはわからないままだ。「つぎの著者につづく」に至っては、オイラは本当に読んだんだろうかというほどわからないという次元を越えて、何も残っていない。最後のページを読み終えたときは、やっと暗い森を脱出して人里に戻ってきたような感じがした。終わってよかったぁみたいな。なぜこの本が芥川賞候補だったんだろう?っていうのは余計なお世話か。

  • くだらないけど哲学的という初体験をしました。

  • 面白い小説とは思えないが、理屈っぽさが何かクセになりそうな作家。
    表題作は降ってくる人をバットをで打ち返す(?)レスキューチームというナンセンスさ。まったく笑えない繰り言が続くのだが、舞台がアメリカの田舎町という全く現実感のない中で、翻訳調のパロディということかもしれない。
    もう1作「つぎの著者につづく」は、別人が同一の作品を書けるか、という話。情報論をブンガク的に表現するとこうなるのか、という箇所は分かったのだが、その他にも引用が多数。傍注を読まなかったので、もう一度読みのすべきかも。

  • 2014年12月2日読了。
    「つぎの著者につづく」は読み飛ばしてしまった・・・。

  • 表題作は軽い口当たりで読みやすかった。もう1作は迷子になった。

  •  未読了。未読了というのは「オブ・ザ・ベースボール」は読んだけどカップリングの「つぎの作者につづく」は諦めたということです。どんどんと諦めが良くなっておる。

     先に烏有此譚を読んでアー!(>д<)ってなる作家だという認識があって、でも「オブ・ザ・ベースボール」はアー!(>д<)ってならずに済んだ。よしゃよしゃと思ってたらカップリングの「つぎの著者につづく」でやっぱりアー!(>д<)ってなったのである。

     アー!(>д<)というのは不愉快さではなくて「わからん!わしゃあもうわからん!」という己自身に対する諦念なので、「世の中にゃあ歯の立たぬものがあるんだなぁ」という新鮮さがあった。畳の目が全部別の色に塗り分けられている感じ。でも一目ずつ全部読まなきゃならぬとなると力尽きるわよね。

     歯の立たぬものは、ある。

  • 意味わからないし、謎も解けないし
    もや~っとしたものが残りまくりですが
    どこかスッキリとカッコイイ。そんな本。

    空から人が降ってくるので、バットで打ち返す。そんな本。

    オールライト。

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著者プロフィール

1972年北海道生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベー
スボール」で文學界新人賞受賞。『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊
藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞

「2023年 『ねこがたいやきたべちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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