- Amazon.co.jp ・本 (146ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163268804
作品紹介・あらすじ
芥川賞候補作!初の中国人作家登場。「王愛勤」ことワンちゃんは、名前のとおりの働きもの。女好きの前夫に愛想をつかし、見合いで四国の旦那のもとへ。姑の面倒をみながら、独身男たちを中国へ連れていき、お見合いツアーを仕切るのだ。各紙絶賛の文學界新人賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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「ワンちゃん」はわかりにくい 日本文で 時折 つかえて 読みにくい。ただ、中国人女子のたくましさが 「ワンちゃん」には表現されていてその人物の 掘り下げ は 巧みだと思った。
私も 中国にいて 女子のたくましさは いろんな場面で見てきた。
いろんな状況でも へこたれず、ニコニコしている。
『ビンボーはたのしい』という 女子にも出会った。
それで、一生懸命働き 病気がちな父親に仕送りをする。
なんてたくましいのだろう。そして、家族思いなのだろうと思った。
ココに出てくる「ワンちゃん」は 王愛勤 という名前をもらことで
勉強は嫌いだが「勤=よく働く」という ニンゲン である。
兄は「愛軍」と名づけられ、高卒後 人民解放軍に入って
退役してから 市の商工局の課長になっている。
姉は「愛学」と名づけられ、大学を卒業して 大手銀行に入っている。そして 地元の支店長になっている。
ワンちゃんは 中学を出て 母親の働いていた工場で すぐに働き始めた。18歳のときに 洋服の露天の店をだして、仕事を順調に進めた。かっこいい 教師と結婚して 順調のように見えたが その男は仕事をやめ遊びだしてしまった。そのときには 子供が出来ていた。
ワンちゃんは 一生懸命働くが その男が お金をせびりに来る。
しまいには 店の女と一緒にベットにいるのを見つけて 別れる。
子供は 男のほうに 預けることになる。
(ここで、兄が 市の役人、姉が銀行の支店長ならば・・・
ワンちゃんは もっといい仕事は紹介してもらえたはずなのであるが・・物語は そうなっていない。
別れた男はワンちゃんが場所を変わって一生懸命働いてもお金をせびりに来る。
息子が 18歳となり 5年ぶりにあった。身長は180cmくらいになっていて、別れた男とそっくりの美少年になっていた。
息子は 髪を枯れ草のような黄色に染めてすっかり大人だった。
高校は とっくにやめていた。
『お母さんのDNAを受けついたので勉強が嫌いなんだよ』と息子は言う。
息子はさらに言う
『あのさ、お母さんは苦労したかもしれないけどさ、オヤジは結構楽しく遊んでいるよ。それも悪くないなぁとおもってさ・・・だってお母さんみたいに働きに働いて、何かよいことでもあった?オヤジって頭が結構よいよな。』と。
ワンちゃんは 黙ってしまった。
このような息子が 今の中国にはいっぱい いる。
親が役人でいい思いをしていると 親のお金を消費するだけの若者もいる。そういう姿をリアルに描いているのがいいと思う。
結局 ワンちゃんは 無口な日本人と結婚するのであるが、
その無口な男のおぞましさ。
そして 四国の松山のさらに奥の田舎で、
独身の男の中国人の女子との結婚斡旋業をやる。
そこにでてくる 日本人の男のものがさしさ。
中国へのしたたかな目は日本へも向けられている。
楊逸は問題意識が鮮明なので今後の作品が、期待できそうだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編が二編。
どちらも絶望感に溢れる話。
ポジティブなんて嘘だ、人間ってのはネガティブの中から一筋の希望を摑んで、それにも裏切られるのが人生なんだ(by大竹まこと)なんて考えの人にはオススメです。 -
楊逸の文章は異国に溢れ、和に生きる我々と一線越えている。そこは「熊の敷石」に似た外国ではない。大中華帝国の名残であるまったく庶民的なものなのである。
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中国人作家なだけに名前が若干わかりずらいけどそれでもすんなり読める。
切なさでいっぱいのこの小説、あたしは好きです。 -
どちらも悲しい話だった。もちろん中国から日本に渡る人、特に女性の中にはもっとキツい、悲惨な状況にいる人も、そんな世界とは無縁の幸せにいる人もいるんだろうし、そういう意味では、日本人と変わらない、日常的な悲しさの範囲なのかもしれない。けれど、淡々とした語り口に大陸のたくましさやおおらかさを感じる。ワンちゃんが、姑が亡くなったら日本にいる意味がないと感じる、その本末転倒ぶりというか、に、人生ってそういうもんだよなと思ったりした。心象描写がより深いのは老処女かな。いろんな意味で怖かった。20110922
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時々主語が分かりにくかったり、文章にぎこちなさがあったりと気になる部分はあるものの、ひきつけられる、力を感じる本でした。特に女性にはぐっとくるところがあるのでは、と思いました。