ワンちゃん

著者 :
  • 文藝春秋
3.24
  • (4)
  • (23)
  • (61)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 177
感想 : 48
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (146ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163268804

作品紹介・あらすじ

芥川賞候補作!初の中国人作家登場。「王愛勤」ことワンちゃんは、名前のとおりの働きもの。女好きの前夫に愛想をつかし、見合いで四国の旦那のもとへ。姑の面倒をみながら、独身男たちを中国へ連れていき、お見合いツアーを仕切るのだ。各紙絶賛の文學界新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「ワンちゃん」はわかりにくい 日本文で 時折 つかえて 読みにくい。ただ、中国人女子のたくましさが 「ワンちゃん」には表現されていてその人物の 掘り下げ は 巧みだと思った。

    私も 中国にいて 女子のたくましさは いろんな場面で見てきた。
    いろんな状況でも へこたれず、ニコニコしている。
    『ビンボーはたのしい』という 女子にも出会った。
    それで、一生懸命働き 病気がちな父親に仕送りをする。
    なんてたくましいのだろう。そして、家族思いなのだろうと思った。

    ココに出てくる「ワンちゃん」は 王愛勤 という名前をもらことで
    勉強は嫌いだが「勤=よく働く」という ニンゲン である。
    兄は「愛軍」と名づけられ、高卒後 人民解放軍に入って 
    退役してから 市の商工局の課長になっている。
    姉は「愛学」と名づけられ、大学を卒業して 大手銀行に入っている。そして 地元の支店長になっている。

    ワンちゃんは 中学を出て 母親の働いていた工場で すぐに働き始めた。18歳のときに 洋服の露天の店をだして、仕事を順調に進めた。かっこいい 教師と結婚して 順調のように見えたが その男は仕事をやめ遊びだしてしまった。そのときには 子供が出来ていた。

    ワンちゃんは 一生懸命働くが その男が お金をせびりに来る。
    しまいには 店の女と一緒にベットにいるのを見つけて 別れる。
    子供は 男のほうに 預けることになる。
    (ここで、兄が 市の役人、姉が銀行の支店長ならば・・・
    ワンちゃんは もっといい仕事は紹介してもらえたはずなのであるが・・物語は そうなっていない。

    別れた男はワンちゃんが場所を変わって一生懸命働いてもお金をせびりに来る。
    息子が 18歳となり 5年ぶりにあった。身長は180cmくらいになっていて、別れた男とそっくりの美少年になっていた。
    息子は 髪を枯れ草のような黄色に染めてすっかり大人だった。
    高校は とっくにやめていた。
    『お母さんのDNAを受けついたので勉強が嫌いなんだよ』と息子は言う。
    息子はさらに言う
    『あのさ、お母さんは苦労したかもしれないけどさ、オヤジは結構楽しく遊んでいるよ。それも悪くないなぁとおもってさ・・・だってお母さんみたいに働きに働いて、何かよいことでもあった?オヤジって頭が結構よいよな。』と。
    ワンちゃんは 黙ってしまった。

    このような息子が 今の中国にはいっぱい いる。
    親が役人でいい思いをしていると 親のお金を消費するだけの若者もいる。そういう姿をリアルに描いているのがいいと思う。

    結局 ワンちゃんは 無口な日本人と結婚するのであるが、
    その無口な男のおぞましさ。
    そして 四国の松山のさらに奥の田舎で、
    独身の男の中国人の女子との結婚斡旋業をやる。
    そこにでてくる 日本人の男のものがさしさ。
    中国へのしたたかな目は日本へも向けられている。
    楊逸は問題意識が鮮明なので今後の作品が、期待できそうだ。

  • 在小王和老処女的2編。我学了中文:貴人多忘事。 万时嬉 。 树倒猢狲散。 人走茶就凉。 鱼和熊掌不可兼得。 女大当嫁。三十而立。老処女。东施/西施。人生自古傷離別。 我听听蘭意义。

  • 中国人作家さんですが、思った以上に読み易い文章でした。旧制が王さんだから ワンちゃんの呼び名で呼ばれる中国人妻。
    中国で仕事に成功するものの、金をせびりにくる女好きの前夫から逃げる為に四国の片田舎の日本人とお見合い結婚。結婚した相手との生活は嬉しくないものの、自らが仲介をして中国人と日本人をお見合いさせる。中国人の女性、日本人の男性、それぞれが結婚できない理由を抱えてのお見合い。
    もう一編が「老処女」日本に留学し、博士号修士まで取り、大学の臨時講師にまでなった女性。三つ下の後輩は結婚し、子供が二人。遅れはしたものの確実に自分の道を切り開く。そんな彼女を羨みつつも、現実は実家に帰ると老いた親が結婚して子供を産めと催促。
    結婚するような相手もなし。
    どちらも 未来の見える終わり方ではないけれど。なぜか とても頷いて納得してしまう話。中国人留学生、中国人妻でなくとも
    日本人の女性でもありうる話しだからなのか。
    するすると読め、内容の割りにはすっきりした読了でした

  • 「ワンちゃん」というのは日本のニックネームで、中国語の名字の「王」から呼ばれるようになった。

    服の卸売りなどの仕事をしつつ、一度の離婚を経験したワンちゃんは日本人と再婚し、日本国籍を取得した。

    日本の田舎で、おしゃべりな義母に救われてはいるが、無口な夫とひきこもりの義兄にだんだんとこのままではいけないと思い
    日本と中国の国際結婚の仲介役をはじめることにした。

    他短編。

    暗い…孤独な感じ…
    義母が亡くなるのがもっと悲しい気持ちになる。
    貧しさから逃れようと幸せになるために夢と希望に満ち溢れて日本人と結婚して日本にきても
    現実は理想とはまったく違うというギャップに読んでて絶望感しか抱かない(おおげさ

    てかこれがデビュー作なんだね!)^o^(

  • 短編が二編。
    どちらも絶望感に溢れる話。
    ポジティブなんて嘘だ、人間ってのはネガティブの中から一筋の希望を摑んで、それにも裏切られるのが人生なんだ(by大竹まこと)なんて考えの人にはオススメです。

  • 楊逸の文章は異国に溢れ、和に生きる我々と一線越えている。そこは「熊の敷石」に似た外国ではない。大中華帝国の名残であるまったく庶民的なものなのである。

  • 中国人作家なだけに名前が若干わかりずらいけどそれでもすんなり読める。
    切なさでいっぱいのこの小説、あたしは好きです。

  • どちらも悲しい話だった。もちろん中国から日本に渡る人、特に女性の中にはもっとキツい、悲惨な状況にいる人も、そんな世界とは無縁の幸せにいる人もいるんだろうし、そういう意味では、日本人と変わらない、日常的な悲しさの範囲なのかもしれない。けれど、淡々とした語り口に大陸のたくましさやおおらかさを感じる。ワンちゃんが、姑が亡くなったら日本にいる意味がないと感じる、その本末転倒ぶりというか、に、人生ってそういうもんだよなと思ったりした。心象描写がより深いのは老処女かな。いろんな意味で怖かった。20110922

  • 時々主語が分かりにくかったり、文章にぎこちなさがあったりと気になる部分はあるものの、ひきつけられる、力を感じる本でした。特に女性にはぐっとくるところがあるのでは、と思いました。

  • 日本の男と中国の女性のお見合いをまとめる訳のワンちゃん。落ちてはいけない相手に恋をしてしまう………。

全48件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

(ヤン・イー、Yang Yi)
作家。1964年、中国ハルビン生まれ。
87年、留学生として来日。95年、お茶の水女子大学卒業。
2007年、『ワンちゃん』(文藝春秋)で文學界新人賞受賞。
翌08年、『時が滲む朝』(文藝春秋)で、
日本語を母語としない作家として初めて芥川賞を受賞。
『金魚生活』『中国歴史人物月旦 孔子さまへの進言』(以上、文藝春秋)、
『すき・やき』(新潮社)、『あなたへの歌』(中央公論新社)、
『わが敵「習近平」』(飛鳥新社)、『中国の暴虐』(共著、WAC)など著書多数。
現在、日本大学芸術学部教授。

「2021年 『「言葉が殺される国」で起きている残酷な真実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

楊逸の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
村上 春樹
万城目 学
万城目 学
桜庭 一樹
冲方 丁
奥田 英朗
有川 浩
吉田 修一
吉田 修一
瀬尾 まいこ
奥田 英朗
桜庭 一樹
川上 未映子
山崎 ナオコーラ
川上 弘美
伊坂 幸太郎
伊坂 幸太郎
角田 光代
東野 圭吾
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×