千両花嫁 とびきり屋見立て帖

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163270500

感想・レビュー・書評

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  • 先日「花鳥の夢」を読んだ時に巻末の著書紹介で興味を持った作品。
    「千両花嫁」とはどういう意味か?と思えば、正にその通り。
    主人公・真之介は奉公していた道具屋のお嬢様と恋仲になり主人に許しを請うと、主人は一年以内に自分の店を構え千両の結納金を持って迎えに来たら娘・ゆずをやると難題を吹っ掛ける。すると真之介、本当に道具屋を開業し一年で千両を作って持っていく。しかし主人は約束など知らんと二人の仲を許さない。そこで千両を置いてゆずとともに駆け落ちしてしまう。

    表紙のほんわかした雰囲気とは裏腹に危なっかしい話なのだが、この先も道具屋商売ならではの様々な駆け引きが描かれる。また舞台設定も幕末の京都ということで新撰組や坂本龍馬、勝海舟など有名人が次々現れ物騒な事件も起こる。先に書いた、千両の結納金が新撰組に奪われたり奪い返したり、改めて結納金を納めに行けば突き返されたり、千両もの大金があちこち行って落ち着かないのも不思議。

    真之介・ゆず夫婦の関係が面白い。
    真之介は元々捨て子で老舗道具屋〈からふね屋〉に拾われて奉公人となり二番番頭まで登り詰めた叩き上げ。一方のゆずは〈からふね屋〉のお嬢様として生まれ育ちのんびりした風情。しかし道具の目利きはゆずの方が上で、いざというときの腹の据わり具合もなかなか。
    立ち位置の違いから真之介がゆずをお嬢様として遠慮して扱っているのかと思えばそうではなく、夫として力強く引っ張る。と思えば真之介の窮地をゆずが救うこともある。
    どちらが上とかどちらが引っ張るとかではなく、その時その時で助け合ったり背を押したり対等なのが良い。
    時に喧嘩もするがそれもスパイス。二人の店〈とびきり屋〉の番頭始め奉公人たちも仲良く盛り立ててくれる。

    先の新撰組は近藤勇と土方歳三が出てくるが、近藤勇は時に強引で刀の目利きが出来ないのを人のせいにしたりちょっと器が小さい。芹沢先生と呼ばれる巨漢はとかく意地悪で何かと金を寄越せと言う。
    坂本龍馬はさっき言ったことをすぐに忘れるほど忙しない。頭の中も日本のことをあれこれ考えて忙しない。

    様々なピンチを機転と度胸で乗り切る夫婦が面白いが、七話もあると似たパターンもあって少し中弛みもあった。
    しかし終盤、真之介の出生に関わる曰くありげな布が出てきたり、ゆずの両親が二人の夫婦関係を許す兆しが見えてきたりと気になる展開に。

    シリーズ作品らしく続編もあるので追いかけていきたい。これから時代と環境が激変していく中で道具屋という商売がどうなるのか、夫婦がどうなるのか。

  • 道具屋の若夫婦を主人公に、幕末の京都を描く。

    江戸を描いた小説は多いけれど、京都側は珍しく、新鮮。
    歴史上の人物を絡め、幕末の雰囲気が色濃い。

    ピンチを機転とはったりで乗り切る、主人公たち。
    応援したくなる。

    この方にしては珍しく、ほのぼのした作品。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-ecdb.html

  • 人に勧められて。自分では手に取らなかった作家さんだけどすらすらと読めて、夫婦の逞しさを幕末の中に感じられ面白い。

  • 幕末の京都の御道具屋。
    駆け落ち夫婦、真之介とゆず。
    新撰組や坂本龍馬などでてきて、次は誰がどう絡むんだろう?と楽しみ。

    ・千両花嫁
    千両かけて桜茶の産地当て

    ・金蒔絵の蝶
    芸妓の嫁入り道具

    ・皿ねぶり
    黒塗りの鎧櫃
    侍の襲撃

    ・平蜘蛛の釜
    九十九茄子の茶入
    茶道の若宗匠初登場

    ・今宵の虎徹
    虎徹十三振りの真贋
    ゆずの母、嫁入りの話
    結婚一年目

    ・猿ヶ辻の鬼
    攘夷派と開国派の贈り物
    夫婦喧嘩
    オチは予想ついた

    ・目利き一万両
    真之介に縁ある辻が花染めの裂
    捕まった跡取り三人
    剣術で勝つ人の目利き

  • 相変わらず上手さを感じさせる短編集。一話一話どれもが非常にしっかりと書かれた、きちんと読ませるストーリーになっていて、今回も大変満足させてもらった。

    皿ねぶり、は、勝海舟、坂本龍馬、そして岡田以蔵が登場する。最後に三人が言葉短くやりとりする小さな場面が描かれているのだが、司馬遼太郎の「人斬り以蔵」(もしかしたら、「竜馬がいく」だったかも。記憶が怪しい)に、ほぼ全く同じ場面がある。意図的なんだろうか。どうなんだろう。司馬遼太郎ファンとしてはちょっと気になり、もしわざとだとしたら何となく嬉しい気がするところである。

    ゆずが真之助との結婚を認めようとしない母親の琴から、初めて自身の嫁入り当時の話と重ね合わせる形で本当の気持ちを聞かされる「金蒔絵の蝶」は、母娘のすれ違う愛情の機微が見事に描かれていて、本短編集の白眉。琴の我が子を思う愛憎の深み、その何とも言えないせつなさが胸を打つ。ままならない人生、どうにもならない気持ちを心の奥に沈めて生きる、そんな生き方もある。山本兼一、お見事。

  • 見立ての勝負に毎回ドキドキしてしまう。目利きができて度胸もあるゆずがかっこいい。これは惚れてしまう。夫の真之介も雰囲気は飄々としているのに有言実行で、本当に素敵な夫婦。新撰組が出てくるのも面白い。続編もあるので読むのが楽しみ。

  • のぞいてみたくなる
    とびきり屋 道具屋さん。

    真さんに顔相みてもらいたいし。
    度胸のあるゆずちゃんと話してみたい。

    いい話ばっかりの短編集に。
    幕末の京の景色が溶け込んで。
    人情話が絡みあう。

    壬生浪の新撰組。
    長州藩や、土佐藩に勝海舟。


    高杉さんでてくる。
    金蒔絵の蝶
    都々逸もあって。コレが好き‼︎

  • このシリーズは、大店の娘さんに恋した奉公人が駆け落ち同然で大店を出て、道具屋さんを開き、町から持ち込まれる様々な難題を二人で解決していくお話。
    二人の優しい人柄や、目利きの鋭さ、度胸、機転が素晴らしくて読んでいて気持ちいいです。

    新撰組や坂本龍馬も出てきて、町人からすると、こういう風に見えるのかと、目から鱗の部分もありました。

  • 連作短編7編
    幕末の京都を舞台に,駆け落ちして夫婦になった真之介とゆずが,道具の目利きと人物の目利きを武器に,たくましくしたたかに,そして愛情深く生きてゆく.ふんわりとした中に芯がすうっと通っているのが良かった.

  • 山本兼一さん作品、初読み。
    幕末の京都が舞台で、尊王攘夷やら開国やらがからんでいるのがちょっと・・・、だったけれど、サクサクと読めました。 表紙の絵がほんわかだから、調子狂う(笑)

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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