兄弟 (上)

  • 文藝春秋 (2008年6月26日発売)
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本 ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784163271606

感想・レビュー・書評

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  • 中国文学のエネルギッシュさとスケールの大きさを余す所なく表現した作品。スケールの大きさというのは、登場人物の世代を超えて描かれる時間軸と、中国という国自体がその時間軸に極めて大きな変化を遂げている事で読み進めると全く印象が変わっていく物語である事。文革篇と開放経済篇、上下巻に分かれるが、先ずは上巻。文革篇では、無秩序で原始的、暴力的なシーンが生々しく描かれる。

    時代の変化に運命を振り回される義兄弟。小さな田舎町「劉鎮」の住人とのドタバタ劇は、弟が女子トイレを覗き、捕まるところから始まる。トイレで何を見たのか、食事を奢ってでも聞きたがる住人たち。随分ポップで読みやすい、下品な娯楽漫画のようだが、その後からが酷い。

    ネタバレになりそうなので、ここまでにするが、久々に莫言の描く世界観を味わったような満足感だ。中国文学に期待する所を期待通り提供してくれる。

  • "軽薄! ソープドラマ! ゴミ小説! 文学界の猛批判をヨソに爆発的なヒットとなった本書は、文化大革命から世界二位の経済大国という、極端から極端の現代中国四十年の悲喜劇を余すことなく描ききった、まさに大・傑・作。"

    “Frivolous! A soap opera! Trashy fiction! Defying the literary world’s fierce criticism, this book became a runaway hit, exhaustively portraying the tragicomedies of modern China over forty years—from the Cultural Revolution to its emergence as the world’s second-largest economy. Truly a grand masterpiece.”

  • 粗野で下品そのものの李光頭、これが中国人らしい中国人かつのしあがる人ということか。宋鋼、林紅との生き方の対比、容赦ないリンチ、激動の時代に圧倒される。

  • めちゃくちゃ面白い。すごいパワフルって感じ。喜怒哀楽全てが一冊で体験できる。宋凡平出てくるシーン全部泣ける。下巻も絶対読む。

  • これ以上面白い中国の現代小説はあるのだろうか。物悲しさと爆走感が、信じられないくらい絶妙にミクスされている。必読。

  • 久しぶりに睡眠返上で読んでしまった長編!
    文革篇は酷でいたいとこも多いけど、ついつい感情移入しちゃう。
    下巻の方はテンポよくてさらにぶっ通しで読んでしまった。
    他人の人生を並べてなぞるとこう見えるのか、と考える。
    気に入った人物は元詐欺師の周遊氏。

  • 文化大革命時代の中国が舞台。極端な悲劇と喜劇の連続。読み始めたら止まらない。午前9時に読み始めて、午後11時に読み終わった。

  • 完璧。喜劇的な悲劇、アーヴィングを彷彿とさせる展開に饒舌さもたまらない。今年はこの小説に出会えたことを幸せに思おう。翻訳もヘタウマ風というか、独特のリズムがあって読みやすい。(あらすじなど)女子便所を覗いている途中、便所に落ちて死んだ父を持つ李光頭は、やはり同じように便所を覗いているところを捕まえられるが、村一番の美少女、林紅の尻を見た話を村人に話すことで飯をおごってもらう逞しさ、ずうずうしさを持つ。李の父親を便所から引き揚げた宋凡平は、絵にかいたような好漢。妻を亡くし、李の母親と互いに子連れで再婚し、幸せな家庭を築くが、文革の嵐の中、弾圧され、撲殺される。やがて、李の母親も傷心の中、死亡するが、二人の子供は生涯支えあい、助け合うことを誓う。

  • しんどい時代と、いつの世にもいるであろう尻馬に乗って酷いことする人の描写がしんどい……スノッブで下卑た行いばかりする人や、太陽のように明るく裏表なく真っ直ぐなヒーローである父親という煮詰めたように濃い人々の中では、鍛冶屋や死体を一緒に運んでくれた男が1番理解しやすいかも。そして主人公は図太く、理解とか共感も湧かないし私から見たら謎めいて見えるっていうか予想もつかないところがおもしろかった。翻訳もの苦手だけどこれは読みやすかったです。(2010年に読んだ時の感想メモ出てきたので)

  • ほんの50年前にこんな犯罪が 人間の弱さと悪

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著者プロフィール

1960年中国浙江省杭州生まれ。両親の職場の病院内で、人の死を身近に感じながら育つ。幼少期に文化大革命を経験。89年には文学創作を学んでいた北京で天安門事件に遭遇した。80年代中頃から実験的手法による中短篇作品で「先鋒派」作家の一人として注目を浴び、91年『雨に呼ぶ声』(アストラハウス)で長篇デビュー。92年発表の『活きる』(中央公論新社)が張芸謀(チャン・イーモウ)監督により映画化されて話題を呼ぶ。本作『兄弟』は中国で05年に上巻、06年に下巻が発表され、またたくまにベストセラーとなった。他の長篇作品に95年『血を売る男』、17年『死者たちの七日間』(いずれも河出書房新社)、21年『文城』(未邦訳)がある。グランザネ・カブール賞(イタリア)、フランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」受賞。作品は全世界で2000万部以上、40以上の言語に翻訳されており、ノーベル賞関係者が中国で必ず面会する作家のひとり。

「2021年 『兄弟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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