- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163272108
感想・レビュー・書評
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2014/04/05読了
日本の社会問題...というと難しくややこしく聞こえるが、現状は呆れるほどシンプルで酷く、怒りと嘆きに満ちている。フィクションではなく実在するものであり、作中のような人間は多くいる。そう考えると、政治とか経済とかは、こういった下層の人たちにどう機能するのだろう。
千川フォールアウト・マザー
母親にならざるを得ない人、子育てをしたいのに満足に出来ない人。たしか、出産する費用が無いからと病院を後にして流産してしまった母親の話を聞いたばかりだ。
マコトのおふくろが主人公でした。絶対に勝てない「王」はタカシでもなく、マコトの母親なのかも。時には人の手を借りること。そして、選択をすること。
池袋クリンナップス
「偉い人」と「豊かな人」は、心をどこに置くのだろうか。
ビジネスのためなのか、行動・本望のためのビジネスなのか。自演でも、本望の部分を理解する人はいるのでカズフミは恵まれたほうなのかも。本当に「日本を良くしたい」と思うリーダーとは、こういう人なのかもしれない。
定年ブルドッグ
トラブルの内容よりも、パワフルなおっさんの強さ。
タカシとの対戦は見てみたいな。時代は変わり、生き方や考え方は柔軟に考えなくちゃいけないのだけれど、軸の部分はそのままであるべきであると思う。
非正規レジスタンス
なんだか身につまされる話。働き方、生活の仕方の是非はともかく、こうしている人って思った以上にいそうだ。
マコトの怒りが今回は如実に表れていて、それだけ、筆者の関心があるということだ。
今は色々なサービスがあり、それだけ、生活に関わる一切が簡略化され商品のように扱われている。労力というものの存在価値も同様に軽量化する。仕事を巡るこうしたシンプル化は負のスパイラルを引き起こしているのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりのIWGP。
本作は母子家庭や非正規雇用など、日本の中にある貧困にスポットを当てている。
海外の貧困に比べて日本の貧困は取り上げられる回数が少ないので、新鮮な感覚はある。
池袋クリンナップスに関しては、題材はいいのだが、展開がイマイチである。
これは非正規レジスタンスにもいえるのだが、今作は結末が少し予想しやすい作品が多いように感じられる。
また扱う内容も池袋のガキからは
大分離れてしまっている。
そんな中定年ブルドッグは、初期を思わせるようないかにもストリートなネタ。やはり1冊に1作はこのような話がないとつまらない。
キングの登場が少なかったのも個人的には残念。 -
ミニコメント
大人気シリーズ池袋ウエストゲートパークの8弾。現代の闇を描くクライムノベル。
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/484116 -
池袋ウエストゲートパーク8
初期の頃の残酷さはないため、ストーリーを楽しみながら読むことができる。
時々マコトが読者に語りかけるのもおもしろい。
内容が当時の社会問題を取り扱っており、なかなか変わらない世の中ではあるが、一つのスパイスのように感じた。 -
池袋という限定された土地で
世の中のその時点での普遍的なネタを
等身大の若者の行動で描く。
取材とかしっかりやってるんだろうな。 -
IWGPシリーズ第8弾。
「千川フォールアウト・マザー」シングルマザーの3歳の子供がバルコニーから落ちた話。
「池袋クリンナップス」ボランティアゴミ拾いの代表者が金持ちの息子で自称誘拐される話。
「定年ブルドッグ」元彼に脅迫された子を助ける話。
「非正規レジスタンス」家も無い派遣とユニオンにまつわる話。
どの事件も現在ありそうなモノを題材としていてなんとも言えない気持ちになってくる。
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本シリーズに関しては著者も完全に巡航速度に入っているようで、初期の作品ほどのワクワクはないものの、時事ネタを絡めてupdateしつつ安定したクオリティを保っている。今回も期待通りの出来で一気に読んでしまった。今後は、主人公が成長したり、ライフステージを変えていったりといった連作特有の楽しみも期待したい。
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このシリーズいっきに読むと繋がりがちゃんとみえてきて面白さが増す。
「千川フォールアウト・マザー」…シングルマザーの子育てがテーマ。留守中に息子のカズシが自宅バルコニーから転落して怪我をする。マスコミから叩かれるシングルマザーのユイ。そんなユイが人妻専門の風俗スカウトマン・シンジにひっかかってしまう。ユイはカズシが邪魔になり虐待をしてしまう…。マコトのお母さんが大活躍する。シンジを叱り、ユイにも正しい道を教えてあげる。お母さんかっこよすぎる。マコトの小さいときにそんなことがあったなんて。お母さんもシングルマザーとしていろいろ悩みながら、自分を責めながらマコトを育ててきたんだなあと。ほっこり、しみじみする春のお話。
「池袋クリンナップス」…池袋に現れた清掃ボランティアのお話。季節は夏。クリンナップスのリーダー・カズフミは不動産会社の御曹司。カズフミが誘拐されて、1回目は身代金受渡しに失敗。2回目に交渉人としてマコトが指名される。カズフミの父・啓太郎が突然倒れてしまう…。誘拐犯に扮していたのはカズフミ。すぐに連絡をいれるマコト。『父が垂直のビルをつくるなら、わたしは格差社会でちぎれてしまった人と人を水平に結ぶための力になろう』っていうカズフミの想いがすごく良いと思った。こんな優秀でエリートだけどちゃんとした考えを持つ人が本当にいたらいいのになあと思う。
「定年ブルドック」…タカシの依頼で別れた男から交際中に撮ったSM写真をネタに恐喝されているハルナの相談にのる。ハルナの父親は警察官で、ばれないように解決しようとするが、その恐喝男・カズマは父親にも恐喝メールを送っていた。元警察官の大男・大垣とマコトの凸凹コンビが結成される。1回目の脅しは成功。マコトが彼氏役になって、Gボーイズの名前を出してカズマをビビらせた。でもカズマも黙っていなくて、今度はハルナをさらって形勢逆転。マコトは大垣と、バックアップとしてタカシとGボーイズにも応援を頼む。カズマはネットで出会った、金をもらって誰かをはたくのが仕事の男たちを連れてくる…けど、大垣が強すぎてあっさり終了。大垣とハルナの会話は良かったなあ。最後ちょろっとゼロワンが出てくる。タカシは大垣とスパーリングをやったんだろうか。秋の父と娘の良いお話。
「非正規レジスタンス」…非正規雇用、ネットカフェ難民がテーマのお話。これはなんだか、考えさせられるというか、今の時代にも現実としてあるわけで、なんだかなあと。日雇い派遣で働くサトシと出会ったマコト。コラムのネタとして話を聞かせてもらう。ネットカフェで寝泊まりしながら日雇いの仕事をする生活はなかなか地獄だった。そんなとき、東京フリーターズユニオンの代表・萌枝と知り合う。サトシが仕事の帰り道、何者かに襲われた。同じような事件が同じユニオン内で何件か起きている。マコトは派遣会社・ベターデイズに潜入することになる。そこでみたのは本当に過酷な世界。池袋支店の店長・谷岡もベターデイズの罠にかかっていた人のひとり。マコトとモエは、谷岡の協力を得て内部告発をすることに。じつはモエがベターデイズ社長・亀井の娘だった。モエのやっていることは本当に勇気のいることだしすごい。そして正しい。みんなが人間らしく働けたら…当たり前だけど難しい現実。その後、会社のコンプライアンス担当重役となったモエ、その片腕に谷岡。池袋支店で正社員となったサトシ。最後のシーンはすごくあたたかくて、良かった。サトシのノートに書かれた言葉がすごく切なくて、どうしようもなかった。正月明けのとても読み応えのあるお話でした。 -
ここまでくると、ネタはパターン化してきた。現代社会の解決出来ない問題に取り組んでいる。ただし、結局個人じゃ何も解決出来ない。もうしたらいいのやら。
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どんどん社会風刺的になってしまった
ちょっと面白みにかけてきましたね。