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本 ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784163272306
感想・レビュー・書評
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短編集。
それぞれに基となる史実や作品があって、私はそれら全てをちゃんと知っているわけじゃない。説明なしで放り込まれて、読むうちになんとなく分かったような気がする程度なのに、つまらないとは感じないのだ。ちょっと中毒なのかもしれない。
面白かったのは「金の象眼のある白檀の小箱」で、1810年ナポレオンの時代のある伯爵夫人の手紙。
将軍の妻と不倫をした自分の夫に宛てて、不倫がバレてしまった将軍夫婦の騒動を綴るなんて、なかなかすごいな。
巻末には作者による解題があって助かった。
まあそれがあっても、ちゃんと楽しむには教養が足りてないのを自覚するのだけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白い部分もあり、難しくてよく分からない部分もあった。
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佐藤亜紀さんには珍しい短篇集。
私は最初の2篇と最後の1篇が良かった。
最初の2つを読んでいる時は、佐藤さん特有の、翻訳のような文章とその美しさに溜息が溢れ、さすが佐藤亜紀さん!と思った。
でも3つ目と6つ目が読みにくくて別の意味で唸ってしまった。
「アナトーリとぼく」はほぼ全てひらがなとカタカナなので、読むのがすごく疲れた。勿論わざと疲れる文章にしていて、そこに意図があるのだけど。
①弁明 /サド侯爵が状況と心境を語る話。語り口とその弁明がとにかく面白い。
②激しく、速やかな死 /ジョン・コリリアーノの歌劇(ホフマン脚本)「ヴェルサイユの幽霊」へのオマージュとのこと。タイトルになるのが納得の傑作。ギロチンに処される前の部屋に閉じ込められた人々。
③荒地 /アメリカへ逃げたタレイランのアメリカに対する感想の一人語り(フラオー夫人への書簡という設定)
④フリードリヒ・Sのドナウへの旅 /ナポレオンを暗殺しようとした青年の話。
⑤金の象眼のある白檀の小箱 /オーストリアの政治家メッテルニヒの妻が夫に書いた手紙という形式。夫の不倫相手のロール・ジュノとその夫ジュノ将軍の騒動について。
⑥アナトーリとぼく /ぼくはくまなのでひらがなとカタカナしか書けない。トルストイの「戦争と平和」を佐藤亜紀さんが訳したもの(皮肉を込めてということだろうか? 作者による解題に〝何語で読んでもピエールは道徳フェチの糞ナルシストであり、救いがたい利己主義者である〟と書かれている)
⑦漂着物 /ボードレールの「白鳥」より。変わりゆくパリについて。文章が素晴らしいく、うっとりする。美しい締め。 -
サド侯爵の独白、ナポレオン暗殺未遂事件の顛末、等、実在した人物や歴史的事実を独特に解釈し皮肉にも面白おかしくも描いた短編が収められている。
そもそものネタ元に対する知識があるともっと楽しめたのだろうけれど、無学な自分には知らない話も多かったのが残念。
読んでいて、「エスプリ」という単語が頭の中をめぐった。
高尚なユーモアを楽しむには教育と知識がいる、という欧米の文化を体現したような一冊だった。 -
文章は流石なんだが短篇集なのに加え何より内容がちょっとハイブロウすぎてだな。
ちなみに一番楽しめたのは「金の象眼のある白檀の小箱」、後『戦争と平和』が元ネタらしい「アナトーリとぼく」も元ネタ読んでないんでようわからんながらもなんとなく面白かったです。 -
著者の『バルタザール……』も『ミノタウロス』も読んでないくせに、この本の不穏な(栞紐も真っ黒だ!)雰囲気にあてられて、ふと手に取ってしまった。私の「佐藤亜紀初体験」(奥手ですみません)。装幀、帯、本体、よくできてます。初出がそれぞれ少しずつ年代の違う、雑誌掲載のものが中心の短篇集。だから、初出のときには、それとしてもう少し愉しめたかもしれない。ひょっとして、作者による解題によってむしろ「興醒め」してしまったかも。だって、だって、たとえばサド侯爵だったらご本人の書いたもののほうが百倍も刺激的だし、ボードレールだって、その詩を直接読んだほうが絶対にいい。解題を読んでからあらためて本文に戻ると、比喩や言い回しの陳腐なのが却って目立っちゃいます。あるいはまた「解題」に、「言わずもがなだが」とか「当然だが」と書かれていますが、これらの人物やエピソードを「言わずもがな」や「当然」として読む読者がどれほどいるでしょうか。出典や典拠は明確でなければならない、当然です。けれど、「それによって」物語を書くのならば、それ以上の何かを求めるべきです、書くほうも読むほうも。うーん、辛口すぎるかなあ。最初の一篇を読んだだけで、サドにちょっと同情して、サドの書いたものを直接読み直してみたりしたのでした。
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佐藤亜紀は相変わらず衒学的(←てのは違うかもしれないが)っつかプライド高いっつか自意識過剰だなあと思わないでもないですが、硬質の文章と筋立てはやっぱりかっこいいのでした。
『アナトーリとぼく』が(私的には)吉。
・・・・・・・でも直木賞は取らないだろ。大衆小説じゃないもんなあ。それでいいとは思うのですが、もちっと売れてほしいとも思うのだ・・・・・・・・・・矛盾? -
フランス革命期(国内、ロシア、アメリカも)が好きな人にはたまらない短編集。冒頭のサド侯爵の独白は藤本ひとみファンにはグッとくる。
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2009-06-00
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歴史的背景を知らない場合、面白さが半減すると思われる。もちろん自分は知らないほうなので、この作品は残念ながらこの評価。
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