婚礼、葬礼、その他

  • 文藝春秋 (2008年7月4日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784163272603

感想・レビュー・書評

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  • 表題作の「婚礼、葬礼、その他」は、てんやわんやの状態でおもしろかったです。でも自分事として考えたら、そうは言ってられないなと思いました。

    旅行を断念して出席した友達の結婚式と、上司の父親のお通夜の両方を同じ日に経験したヨシノの気持ちの揺れが、リアルに伝わって来ました。

    何よりも優先される葬礼、そして婚礼。でも、相手によっては優先したいのはその他のことかも。

    本の扉に「新しい葡萄酒は新しい革袋に詰めなければならない。」という新約聖書の言葉が書かれていました。婚礼や葬礼も最近は価値観が変わって、様々な形で行われていることと通じているなと思いました。

    婚礼も葬礼も、人を呼びつけること。という言葉に、はっとさせられた小説でした。

    もう一つは「冷たい十字路」。
    高校生の自転車事故を色々な人が違った立場で語り、最後に繋がるという物語でした。表題作とはガラリと変わったイメージでした。



  • 大事件ではないけれど、淡々だけどテンポ良くコミカルに進み、最後はほっとして終わる津村さんらしい短編です。
    十字路の方は、それぞれの違った接点は分かるのですが、登場人物が少し多すぎて混乱した。

  • 「婚礼、葬礼、その他」と「冷たい十字路」の2編。150ページほどの薄い本です。
    「その他」なんて意表を突かれるタイトルですが、内容もなかなか。
    内容紹介によれば「友人の結婚式に出席中、上司の親の葬儀に呼び出されたOLヨシノのてんやわんやな一日」を描いた作品ですが、何とも可笑しい。
    「どこか」可笑しいのは津村さんの持ち味でしょうが、これは積極的に笑いを取りに行っているようです。"ドタバタ"ではなく"てんやわんや"、ちょっとおっとりと上質感がある笑いがあり、良いですね。お気に入り。
    「冷たい十字路」は高校生の自転車事故をテーマに、無関係と思える人物たちが実はそれそれ点で繋がっており、その繋がりで主人公が変わるたびに新たな視点が現れる面白い構成ですが、構成を頑張ったぶん中身が薄れた感じで、ややガチャガチャした印象でした。

  • 旅行を婚礼でキャンセルしそれを葬礼で退席した話
    自転車事故の『冷たい十字路』

  • おもしろかったー表題作が特に。
    津村作品はまだ三冊目だけれど、なんとなく「とにかくうちに帰ります」を思い出しました。
    淡々とした文章なのに、風景が頭に浮かんで、自分の中にもある思いがうまいこと文章になっていて、あーそれだ!その言葉だ!と手を打ったり、文章の雰囲気に反して心がワクワクと浮き立ちます。
    「冷たい十字路」は、ラストが今ひとつすっきりせず、ただただ全編ヒヤヒヤしながら読みました。
    イヤだな、こんな通勤(通学)路。

  • 「婚礼、葬礼、その他」。休暇中に旅行を計画していたのに、友人の結婚式の幹事をしなきゃいけなくなって泣く泣く断念。当日式を終えて披露宴までの待ち時間に会社から電話がかかってきて葬儀に駆り出される、という運び。

    トイレの中で故人の愛人二人の罵り合いを聞きながら携帯電話でスピーチしているあたり笑えた。

    通夜>姑の体調>友人の結婚式>旅行

    お付き合いって大変ですよね。

  • 表題作と「冷たい十字架」の2編。

    旅行の予定をキャンセルして出席していた結婚式の途中で、上司の親の訃報が入りお通夜に出席することになったヨシノ。
    コメディとも言える話でしたが、津村さんの独特なシュールさに魅了されました。
    怒涛の1日を終え、ヨシノがラーメンを食べれそうなラストにハッピーエンドを感じました。

    暴走自転車が行き交う冬の交差点で起こった自転車事故。
    その場に居合わせたり、その話を聞いたりした、直接関係の無い人達の話。
    設定が何とも著者らしいと言うか、それぞれにその事故に対する思いがあり、そういうことってあるなと思わされます。
    もしかしたら、その事故の原因は、というモヤモヤしたことも想像だけであることも、このストーリーの魅力かなと思います。

  • 津村さんのこの淡々と書かれてる感じすき。
    同じことが起きたとして、私だったらどうするか。
    考えながら読んだ。

    むちゃくちゃだけど、なんだかんだどうにかなる。
    でも、できたらこんな風にことを荒立てずに生きたい。

  • 相変わらず面白かった~~~
    会社に所属している人間ならわかる~~~~ってなるし、なんで自分がこんなことに、、という状況でも文章が面白いからぜんぜん悲観的にならず読んでいける。頑張ろう社会人。
    何度も書いてしまうけど、津村さんが書くお話にこんなに共感できる人間に、大人になってうれしい。大人になることも悪くないなってなる、こうやって日々を頑張って生きていこうねって思う。今年もたくさん読みます。

  • タイトル作ともうひとつの中篇で構成されている薄い本。
    タイトル作はおもしろかった。

    残念なのは2篇目の『冷たい十字路』。タイトルが凡庸。

    登場人物の名前を名字だけにし、カタカナ表記する著者の文体が、悪く作用した見本。
    高校生3人が会話しているエピソードに、さらに数名の高校生の名前がカタカナで登場するので、非常にわかりにくくなっている。もう少し整理して書く能力はあると思うのだが。

  • 面白かったー!
    絶妙なテンポ
    的確すぎるツッコミ
    嘘でしょ!みたいなことは実は案外現実に起こりうる
    派手さはない。
    殺人も起きない。
    運命の出逢いもない。
    日常に潜む面白さがある。
    日常に潜む憤りに共感できる。
    まあでも仕方なし、それでも日々は過ぎていく。

    2008年7月
    文藝春秋
    装丁 野中深雪

  • 表題作はタイトル通り、婚礼と葬礼とその他の話。面白かった。主人公は地味でも真っ当に生きている女性だけどいろんなことに巻き込まれ、でも巻き込まれながらもがんばってる感じが愛おしい。
    周りへのつっこみが的確で、ところどころププッと噴出しながら読みました。

    中の表紙に書いてある「新しい葡萄酒は新しい革袋に詰めなければならない」ってどういう意味だろう。

    もう一作、「冷たい十字路」はもう少し先まで読みたかったな。

  • かぶりまくる時ってあるんだよなー。こういう義理とか付き合いをさらっとかわせる人よりこの主人公のように巻き込まれがちな人のが好感持てる。
    そして空腹時のイライラMAXはとても理解出来る。

  • 旅行の予定が結婚式。当日になり急に会社の上司の親が亡くなってお通夜に。
    もう、あちこちで笑ってしまった。ささやかな表現がいちいち面白い。漢字が読めなくて別の部屋に行って饅頭をすすめられたり、とにかくお腹が空いたり、結婚式の様子がとにかく大変で電話でスピーチを指示しながらも雑なまとめになったり。主人公ヨシノの淡々とした思考回路がとにかくツボにはまった。同時収録の自転車事故の話はリレー方式。こちらはうってかわってシリアスな感じ。津村さんの底力って、どれだけなんだろう。派手さがない分、人によって好き嫌いは分かれるだろうけど、私は好きだなあ。

  • 表題作はまるで太宰の女生徒のような感じ。コミックに近い?

    にへんめは、何かこれといって。すんなり読める。

  • コメディ。
    三谷幸喜のドラマや映画をもっとぐぐぐっとこじんまりさせた感じの。
    そしてそういうものが好きな私としては面白い本だったなぁ。

    冠婚葬祭に振り回される主人公と一緒にぐったりする。
    結婚式も葬式も疲れるんだよ。
    どちらもざわざわと賑やかである種のお祭り騒ぎなんだなぁ。
    そして津村さんはほんとこういう身近な感覚をうまく描く。

    もう一遍の「冷たい十字路」も結構面白かった。
    それぞれの視点がちゃんとその人の身丈に合っている。
    無理がない。無理に恰好よくないし、悪くもない。
    その人のちょうどが描かれているような感覚。
    あと車を運転するようになってから余計そうなんだけど、
    自転車って怖い、という、よくわかんない感想に落ち着きました。

  • 旅行、結婚式、葬式…

    ヨシノが心の中で故人に毒づいている場面、新婦と親しくなったきっかけ…派手じゃないけれど、こういう日常に根ざした描写が好き。

    2作目は登場人物の名字がカタカナなのが読みにくかった…

  • 巻き込まれて生きている。そして、巻き込みながら生きている。

  • 再読
    友人の結婚式の二次会の司会を頼まれたが、会社の上司の身内に不幸があり急遽葬礼に出向くハメになった表題作ほか、自転車事故が多発する交差点をめぐる人々を描いた「冷たい十字路」を収録

  • 表題作ほか1編収録。表題作は結婚式と葬式が重なったOLヨシノの1日を切り取った物語。
    世間の暗黙の了解「結婚式<葬式」の図式に従って、結婚式から見ず知らずの上司の父親の葬式に駆けつけたヨシノ。そこに出席した人たちとの関わりか思いがけず、自分の身近な人々、家族や亡くなった祖父母への思いを彼女に呼び起こす。見ず知らずの人の葬式で、それを思い号泣する彼女とまわりの温度差が滑稽で面白かった。
    伴録の『冷たい十字架』は自転車の転倒事故を起点として、物語が展開する。
    いずれも市井の人々の日常を切り取った物語であるが、これが面白い。言葉の選び方も好き。
    次は『ポトスライムの舟』を読んでみる。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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