虚栄の肖像

  • 文藝春秋 (2008年9月29日発売)
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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784163273204

感想・レビュー・書評

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  • 花師と絵画修復師という2つの顔を持つ男・佐月恭壱が主人公の話。「深淵のガランス」で願ったとおり、シリーズ化した模様。やったぁv 

    佐月が常のように「例の人」から受けた今回の依頼は、少々趣が異なっていた。まずは霊園の墓前に桜を活ける「花師」の依頼をこなしてもらったあと、修復の依頼をすると言う。奇妙ながらも肖像画修復を請け負ったが、奇妙なことはまだまだ続く。報酬が金ではなくうなるほどの銘品の甕に代わり、絵は受取る直前に火事となり焼け焦げ裂けてしまった。それでも、以前の写真があったことから修復を進めていくが、甕を預けていた「例の旗師」が完成前だというのに何故か他人に売ってしまっていたのだ。佐月の知らないところで、また何かが動き始めていた…―――『虚栄の肖像』

    珍しく例の旗師を介さない依頼だった。善次郎の知り合い…佐月の父が存命の頃の知り合いだという。藤田嗣治の絵の修繕を終え返却した佐月に大道寺氏は、本家にある藤田作品の修繕もお願いしたいと申し出る。京都に赴いた佐月はその地で、忘れられない声を聞く。15年前、日本を離れる前の恋人・倉科由美子の。―――『葡萄と乳房』

    ここ3ヶ月、修復仕事を受け付けなかった佐月のもとに持ち込まれた”あぶな絵”。そのすさまじくもなまめかしい縮緬絵に、佐月はひきつけられ修復を引き受ける。だが調べても作者・英斎の素性は謎のまま、褐色化した部分の画材も不明であった。そしてさらに調べるうちに別の謎も…。―――『秘画師遺聞』

    雑誌掲載の2話+書下ろしの中編3作です。

    今回は修復仕事や骨董世界の薀蓄よりも、佐月の過去に重点が置かれたように思います。特に『葡萄と乳房』そして『秘画師遺聞』。由美子との関係、そして前作から出ていた父親のこと。はっきりと「何があった」かは書かれていませんが…怖い世界だよな…と思います。人生が、狂わされる世界だよね。
    それにしても女狐さん、ホントどこまでトラブル体質なんですかあなた(笑)。不屈というかしたたかというか…あいかわらずお元気で嬉しかったですけどねv

  • どうもうっかりシリーズモノの途中から読んでしまったらしい。
    花師であり絵画修復師でもある男がからむ絵画に秘められたミステリー仕立ての短編集なのだが、登場する人物たちの相関が深くわからず、いまいち楽しめなかった。

  • (収録作品)虚栄の肖像/葡萄と乳房/秘画師遺聞

  • 花師と絵画修復師、二つの顔をもつ佐月恭壱が引き受けた仕事にまつわる事件を扱った短編集。
    「虚栄と肖像」「葡萄と乳房」「秘画師遺聞」の3編収録。

    ようやくそれぞれの過去が見え、ぐっと人間味が増してきて面白かったです。
    でもこのシリーズは大人向けな印象。
    緻密な仕事をする職人たちを扱った、トーンを押さえた世界でした。
    派手な殺人が起きるわけではないですしね。
    しかも今回はよりエロい・・・。

    それは置いておいて、個人的には「秘画師遺聞」で河鍋暁斎と暁英の名前が出てきたのは嬉しかったですね。
    ここでも出てた!って感じで、よっぽど気になる人物だったのでしょうね。
    絵画にまつわる謎もより面白かったです。
    芸術、さっぱりわかりませんけど、美術館へ行くのは好きでした。
    また行けるようになったらこのあたりを思い出しながら眺めたいと思います。

    あ~、でもあの仲介する女性が彼女だったのはちょっとショック。
    本作ではすごいマダムなイメージだったので、元シリーズのイメージと合わないのですけど。
    こんなこともやってたんだぁ。。。それを匂わすような描写が元シリーズにありましたっけ?

    なんだか『ギャラリーフェイク』を読み直したくなっちゃったなぁ。

  • 「深淵のガランス」の続編。
    美術界の因業深さより、女の情念というか
    執念?って・・・…あぁ。

  • 花師と絵画修復師、二つの顔を持つ佐月恭壱シリーズ第2弾。
    (第1弾は深淵のガランス)
    3話収録の短編集。
    北森さんの短編は好い。長編ももちろん好いのだけれど。
    短編集なのだが、ボリューム的にはワイド短編。
    1話1話がずっしりしている。

  • 2010/04/20読了。

  • 絵画見るの好きなのもあって、絵の修復、本物か贋作かなどがでてくるこのシリーズには魅かれる。

  • 火災に遭った父の肖像画の修復を引き受け
    報酬として古備前の甕を前払いで受け取ったが
    どちらからも怪しい匂いがする「虚栄の肖像」
    藤田嗣治の作品の修復に向かった先で
    教授だった彼女の父により引き裂かれた学生時代の恋人と再会し
    藤田作品に隠された取引を知る「葡萄と乳房」
    無名の作者による縮緬の緊縛画を修復する過程で
    絵師の正体として意外な人物が浮かぶ「秘画師遺聞」
    花師と絵画修復師を生業とする佐月恭壱の推理小説。
    装丁:大久保明子 装画:中山尚子

    追悼。
    読んだことがなかったので適当な厚さのこの本を手に取りましたが
    シリーズものの後の方らしくキャラクタをつかむのに
    時間を取ってしまいました。
    絵画修復師の主人公が修復の仕事を通して
    政治家の駆け引きや贋作商売を見破っていきます。
    普段関わることのない絵画修復の過程も細かく説明されていて
    自分の知らない世界を知る面白さも。
    しかし前作も読まないとやっぱり消化不良だな。

    「磯村の「男は一代」という言葉がよみがえった。思えばそれは己の仕事にもいえるのではないか。絵画修復師は修復の痕跡をなるべく残さないことで優劣が決まる一面を持っている。優秀な修復師は己の足跡をなるべく消し去ろうとする。まさに一代限りの仕事といってよい。」

  • 絵画修復師シリーズ二作目。絵画修復師の腕によって本物が贋物になる、というのは分かりますが。その逆もあるなどとは! なんとも奥の深い世界です。
    ……実はなんだかどろどろとした世界ですね。今作は特にその傾向が顕著。北森作品ではおなじみのあの人もやはり登場しますが。かなりテイストは違いますね。どうも誰もが信じられないような雰囲気。重いです。
    それでも。このラストはしんみりさせられました。哀しさを感じさせながら、どこか優しさもあるような気がします。

  • 相変わらずちょっと暗い絵画修復士のシリーズ。連作三短編。

    装幀 / 大久保 明子
    装画 / 中山 尚子
    初出 / 『別冊文藝春秋』2007年5月号・7月号・9月号、2008年1月号・3月号・5月号、書き下ろし1本

  • 北森鴻の作品は好き。
    特に、この佐月が主人公のは 好みかも。

  •  「虚栄の肖像」「葡萄と乳房」「秘画師遺文」の中編三本。 読むの大変です。意味を取る、という面において。 恭一が受ける絵の修復依頼は謎めいたものばかり。それはかつての恋人、裕美子へとつながっていく。彼女が死んだ後に明かされた真実に恭一は心を震わせるのだった。 何度か繰り返して読むか、ページをふり返りつつ読むのがお勧めです。

  • 墓前での奇妙な花宴で依頼されたのは、肖像画の修復。報酬は、桜を活けた古備前というが…。表題作ほか全3篇を収録した、ミステリー連作短篇集。花師と絵画修復師、2つの顔を持つ佐月恭壱シリーズ第2弾。

  • <table style="width:75%;border:0;" border="0"><tr><td style="border:none;" valign="top" align="center"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163273204/yorimichikan-22/ref=nosim/" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/51NkVWBt1SL._SL160_.jpg" alt="虚栄の肖像" border="0"></a></td><td style="padding:0 0.4em;border:0;" valign="top"><a href="http://blog.fc2.com/goods/4163273204/yorimichikan-22" target="_blank">虚栄の肖像</a><br />(2008/09)<br />北森 鴻<br /><br /><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163273204/yorimichikan-22/ref=nosim/" target="_blank">商品詳細を見る</a></td></tr></table>
    <blockquote><p><strong>墓前での奇妙な花宴で依頼されたのは、肖像画の修復。報酬は、桜を活けた古備前というが…。表題作ほか全3篇を収録した、ミステリー連作短篇集。花師と絵画修復師、2つの顔を持つ佐月恭壱シリーズ第2弾。</strong></p></blockquote>
    表題作のほか、「葡萄と乳房」 「秘画師遺聞」。

    <A HREF="http://flatkotori.blog12.fc2.com/blog-entry-1305.html" TARGET="_blank">『深淵のガランス』</A>の続編である。
    銀座で花師を営み、その一方で絵画修復師としても名を馳せる佐月恭壱(さつき きょういち)の元には、曰くつきの依頼がたびたび舞いこむ。それも偶然を装って巧まれたりもするのである。佐月の腕の確かさの証でもあるのだが、そのたびに佐月は怪しげな成り行きに巻き込まれることにもなるのである。読者としては、その巻き込まれ方が面白いともいえるのだが。
    前作で登場した、朱健民・明花親子、前畑善次郎、若槻らに加え、今作では、佐月が大切に思う人がキーパーソンとして登場し、珍しく佐月の心を揺らすのも見所である。
    人の思惑が一枚の絵の中に封じ込められている様は、芸術作品というよりも、人間の煩悩の縮図を見るようにも思えてくるのである。

  • 美術館所蔵、常設展示され、一般に知られている絵画と比べると
    日陰のイメージがある個人所蔵の美術品。

    花師としてのエピソードも好きだけど、今回は少なかったね。

  • 絵画修復師のシリーズでした。冬の狐さんが出てくるのに名前だけはがんとして出さないのね。素敵。
    一話書くのに一体どれだけ下調べがいるのやら、恐ろしいほどです。おもしろかった!

  • 2008/10/11読了

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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