いやしい鳥

著者 :
  • 文藝春秋
3.17
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本棚登録 : 158
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163274409

感想・レビュー・書評

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  • このデビュー作は、ガーリーは抑えられ。
    寓話でもない象徴でもない、とうとつなグロテスクが冴える。

    「いやしい鳥」
    何がどうなるかと思いきや、バトル!!

    「溶けない」
    集中もっともぼんやり。

    「胡蝶蘭」
    猫の首というイメージでぐいっと惹きつけられ。

  • 「いやしい鳥」
    「溶けない」
    「胡蝶蘭」

    文芸誌で短編一本読んだときから何となく気になっていた作家さん。
    やはり好みな作風だった。
    いずれの話も非日常・非現実な事柄が登場するのだけれど、それがもしかしたら語り手だけの体験なのではないかと不安を抱かせる。
    この非日常との距離感がとても自分にしっくりくるもので、もっと他の作品も読みたいと思った。

    「いやしい鳥」
    即座に結びつく証拠は、この表題作でも消されている。最初に詮索好きで勝手に妄想を膨らます主婦の視点から、この物語の主要な語り手を外から描写。そして男の語りも最初は支離滅裂。とても疑わしい。
    鳥になった男の不気味さは秀逸。同じ人間とは思えないところから、本当に人外へとなってしまう。

    「溶けない」
    三編の中では一番好き。
    幼いころ「恐竜」に飲み込まれた母親は、姿形も記憶もまったく同じ別の母親になって戻ってきた。
    同じくカメレオンを見たという同じ大学の女性や、「恐竜」じゃなくコモドオオトカゲだと言う大家。
    飲まれるって何なのか?
    母親との関係性や主人公自身の変化などが、人を飲み込もうとする何かとつながりを感じられて、このつながってるぽい距離感もいい感じ。
    明白じゃないけど、意味を感じる。

    「胡蝶蘭」
    スッキリとまとまった一編。
    最後がおしゃれ。

  • 「いやしい鳥」
     鳥を飼う男。その隣人たる主婦。この二人の視点が交錯しながら、鳥とそれを食した青年の惨劇が紡がれる。
    「溶けない」
     幼い頃、母を恐竜に食われてしまった女性、その記憶と、その後の人生、そして再びの遭遇を描く。
    「胡蝶蘭」
     物喰らう胡蝶蘭。それを引き取った女性。その、奇妙に、愛しい日々。

     3作ともに完成度が高く、なかなか満足だった短編集。個人的には「溶けない」が好きですかね。
     現実と幻想がぐるぐると静かに渦巻いて、奇妙で、不気味で、どこか惹かれる世界を形づくる。読者はとにかくその流れに身を任せてしまえば良し。
     文章もかなり好み。感覚をここまで適切に書ける人も珍しいのではないかと思います。過不足ない言葉で描かれているがゆえに、かえってその描写が浮き立って見えるとでもいいましょうか。人が何気なく感じていることを言葉にして提示する、という小説ならではの仕事を見せてくれました。

  • 「胡蝶蘭」
    胡蝶蘭の「顔」を思い浮かべると、確かに猫だの鳩だのゴキブリだの殺せるに違いないと思った。
    不気味さと吐き気を感じるが、私はベジタリアンではないので、と思い直し読み進めるうちに、分け前を欲しがるシーンでは胡蝶蘭を可愛く思うようになっていた。
    「溶けない」
    ユーリノルシュティンの「話の話」で狼が脅しに使われる子守唄が出てくるけれど、恐竜が今回のそれで、それに年を重ねても引き摺り込まれて連れ戻される感じ。
    「いやしい鳥」
    自宅のレースのカーテンを見る度に連想してしまうようになった。上手なのかもしれないが、ひたすら不愉快な物語だなあという感想を持った。

  • ファンタジー?妄想?よく分からなかった

  • え、、、どうゆうことー!!?

    怖かった。。。
    話が三つあるうちの
    話の順番が、
    いやしい鳥→
    溶けない→胡蝶蘭
    でよかった。。。

    いやしい鳥が怖すぎて、、、


    いやしい鳥、、、なぜ色んな人の証言なのか、
    入りづらかった。。。理解するのに時間かかる。けどなんとか読んだ。そして、怖くなった。

    なんた。これは!作戦なのか。。。

    どれにも共通してるのが食われるって感覚なんだけど、夕方、グエムルって怪物出てくる映画見たせいで、余計に想像された。

    三つの話の中では、
    溶けないが、面白いと感じるところが多々あった。
    日常感が所々あったからだろうか。

    胡蝶蘭は可愛らしくも思えた。

    おんなじ人が三つ書いた感じがしなかった。

    いやしい鳥は、妙にグロテスクな映像が頭に想像されて、、、だから、凄いのか。
    うん。妙に、怖かった。文の感じも全体的に荒い空気が漂っていた。妙に雑な感じが、息継ぎもないような主人公の語りが続く所が、綺麗に作られた作り物というより。本当にあるものを羅列して。錯乱して、切れっぱなしの布みたいに、だから。怖かったのかも知れない。どこかそこが街頭インタビューかニュース番組でも見てるような、ドキュメンタリーのコメントのような、あーそう思ったら、面白い作品かも知れない。怖くて拒否反応がすごかったけど、後になって、そう思わせてきた、構成?というか、書き方というか
    、、なんで三つの中で『いやしい鳥』がメインになってるんだと思ったけれど、こう考えていくと、なんだか、腑に落ちた。

    怖かった。。。最初、星2にしようと思ったけど、
    あの書き方は、似たような題材を使いながら、
    それぞれにあった、文の書き方で書いてるのかも知れない!?と思ったら、星4つになった。

    恐怖のち、不穏のち、謎の達成感と汗をかいた後の爽快感?がある本だった。

  • ここまでわけのわからない小説を読んだのは初めてかもしれない。
    奇をてらったかのような擬音もしっくりこない。
    感情的にも感覚的にも文章的にも、まったく反りが合わなかった。

  • いやしい鳥

  • 2019/04/04

  • 表題作が確かデビュー作になるのだっけ。この時点ですでに純文学ホラーっぷり全開。いやもう怖かった。起こっている出来事はある意味滑稽でもあるのだけれど、描き方でここまでグロテスクになるものかと。酔いつぶれた男子生徒を介抱してなりゆきで自宅に連れ帰ったバツイチ男性講師を襲うありえない事態、トリウチというこの生徒の生理的不快感がとにかく凄まじく、講師のほうが狂っているのかもと思いながらも、やっぱり私でもコイツをやっつけてしまうだろうと思う。

    「溶けない」は幼い頃に母親が恐竜に食べられた、と思っている女子大生が、一人暮らしのマンションでまたしても恐竜に襲われる。それは彼女にしか見えない幻覚・妄想なのか、しかしそれをカメレオンと呼び、あるいはコモドオオトカゲだと呼ぶ人もいて・・・解釈はひととおりではないだろうけど、個人的には母親が地味に毒親で母娘関係のいびつさが気になった。

    短編「胡蝶蘭」は、まあ一種のリトルショップオブホラーズ。凶悪な植物がグロいけれどちょっと可愛い。

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著者プロフィール

藤野可織(ふじの・かおり)
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年「爪と目」で芥川龍之介賞、2014年『おはなしして子ちゃん』でフラウ文芸大賞を受賞。著書に『ファイナルガール』『ドレス』『ピエタとトランジ』『私は幽霊を見ない』など。

「2022年 『青木きららのちょっとした冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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