- 本 ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163275307
感想・レビュー・書評
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読むのが止まりませんでした。
何だか自分の心を読まれているような、そんな共感できる言葉が沢山ありすぎて、目が回るようでした。
旦那との関係の時も、志澤や岩井や大林との関係の時も、ナツが感じた気持ち、男達の行動、とてもよく分かります。
終わることのない男女間の欲望がとても人間味に満ちていて、自由を手に入れても孤独が尽きず、どれだけ欲すれば乾きが癒えるのか。
性について深く気づかずにいれば幸せなのかも知れない世界でもあります。
結局、「どこまでも自由であることは、こんなにもさびしいことだったのかー。」
きっと何年経っても、この一言に尽きます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
村山由佳の本は何冊か昔読んだが
「星々の舟」が一番感銘した。すごいと思った。
「ダブルファンタジー」も次によかったかな。女の気持ちを覗かせてもらった。 -
のろのろ読んでいた上巻と違って、下巻はかなりのスピードで読んでいた。上巻の感想にも書いたけど、奈津の男性遍歴物語・・・なんていう安物ではない。もちろんセックスは大事な要素だけど、旦那依存症から自立した大人へ。女だから弱いなんてただの言い訳なんだな。おまけに自立するということは、「孤独」と真正面に向き合うことでもあると、思い知らされる。
大學での先輩で、偶然香港で再開した岩井良介。野獣的な志澤とは対照的に草食的な男性、だったのは過去だった。文筆家という意味では同業者だ。性的相性も抜群。だから性的つながりばかりが強調されているようだが、奈津の話を真剣に聞いてくれる人でもある。誰かに聞いてもらうだけというのも、時には心を強くする。奈津にほかの恋人が出現したとき、抵抗をみせたのは、やっぱり奈津を独占したかったからか。それとも広い意味での同業者として支えあって歩み続ける相手だと思っていたのだろうか。
最後に登場するのは、年下の俳優大林。将来、劇団でも立ち上げて、自分で脚本を書いて演出も、と野心を燃やす若者だ。奈津の脚本家としての力量を認めている。性的にも力強いのは、その野心の表れかもしれない。岩井と奈津を共有するなどとてもできない、選べと奈津に迫る。言われて狼狽したのは、奈津自身がすでに決定を下しているという事実に対してだった。この男、奈津を支配下に置いているようで、脚本家としては認めて尊敬している。だからしばらくは、奈津と上手くやっていけるように思う。
この大林との絡みで、奈津が師匠と尊敬した舞台演出家、志澤一狼太のその後が出てくる。奈津を夫から自立させ、いい作品を書かせようと梯子をかけて引き上げたが、奈津が自分を越えて高く昇って行くのをみて、怖くなって梯子を外すように奈津を捨てた。戻れなくなった奈津は訳が分からず悲嘆にくれる。結局、この男も女を自分の影響下に置きたかったのか。夫より奈津を理解し評価もていたが、自分を凌駕していくのには耐えられないんだ。奈津のことを「中身は男」・・・って恐れを認めているようなものだ。
最後の一文が鋭い。花火大会の帰り、大林とはぐれた奈津。「どこまでも自由であるとは、こんなにもさびしいことだったのか」。
以前、絶対王政時のある王のことを、「かわいそうなくらい孤独な人だった」と評した文を読んだ。最終決定権を持つ国家首長は、取り巻きはたくさんいるが、決定までは深く悩み、決定したことには責任を持たなければならない。結局、自分で自由に生きるということは、自分に対しての首長だ。脚本家として力をつければつけるほど、認められれば認められるほど、孤独になるのかもしれない。自分に責任を持つというのは、孤独とも背中合わせで、それと上手に付き合っていかなければならないと教えられた小説だった。 -
なんだろう、はっきりとは言えないけれど、同じような女性ってたくさんいるんじゃないかなと思う話だった。結局主人公にとっての幸せってなんなんだろうって。最後まで悩まされ続けたけど、人の人生ってそんなもんかなとか。
30-40代女性が読むとグサグサくることが山ほどあるのではないかなーと思いました。 -
ドラマ化されたと知り、興味を持ちました。
貪欲な奈津、それは寂しさの裏返し。
次々に現れる男性と関係を持つようになる奈津。
束縛夫に対して、奈津がもう少し違う出方をすることが出来たなら、その場所が一番幸せだったのかもと思いましたが、どうかな?
志澤にはまるで魅力を感じなかった。
岩井は良い夫風なので、浮気だったことが主婦としては残念。
最後の大林が私には一番魅力的でした。
でもきっと、奈津はそこでは留まらないだろうな。
僧侶の祥雲……ちょっと笑った。 -
序章、主人公奈津と商売男のセックスシーンだった。性欲が強いことを自覚し、持て余している、35歳の奈津。それゆえに、30代既婚者の、売れっ子脚本家の、奈津の恋愛物語、として読み進めていた。奈津に共感できる部分もあるが、ふつうは既婚者として許されない行いも、職業の特殊性を理由に許され、許している節があるなーと思っていたら、大間違い。奈津の恋愛事情を読んでいたはずなのに、終章でガラリと変わった。
最後数行「ああ。なんて、さびしい。どこまでも自由であるとは、こんなにもさびしいことだったのかー。」
これはただの、ただの恋愛小説。私にもあなたにも経験のある恋愛そのものだと。恋い焦がれた男に数回寝て捨てられ、一度寝ただけの男に虚しさを覚え、寂しさが埋まらず、安心できる男を求め、でもまた強く惹かれる男に出会う。恋愛していると、さびしい。終章まで読んで、そんな若かりし頃の記憶がブワっと蘇った。鳥肌。
著者プロフィール
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