泥ぞつもりて

  • 文藝春秋 (2008年11月27日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163276601

感想・レビュー・書評

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  • 表題よりも、「凍(こほ)れるなみだ」が好き。

    子を授かることが至上の主上と女たち。だからこそ男女の機微が感じられると尊い。文の渡し方一つでも、花や蕾を添えて蔓を巻いて送るとかすごく素敵。「砂子〜」よりも男性の描写が多かったのも良かった。
    内裏での内外で燃えた憎しみは、長すぎる歳月が勢いを殺して、後に何が残るのだろうと思った。
    世代を超えて内裏で繰り返される権力争いと天皇の傀儡化も何とも辛い。

    池に積もった恋心は、薄氷のせいで掬えない。

  • 平安宮中の恋物語、暗いです。
    報われない思いや禁忌の恋や諦めや妬みが、平安貴族の優雅さをもって情緒ある形に落ち着いています。
    それでも、生き抜いている女性たちがよいですね。
    けっこう好きです、こういうの。
    折しも私的平安ブームの最中ですし。

    帝の寵愛を競う女たちと、血縁の親王がほしい男たちと、その中心にいる天皇。
    清和天皇、陽成天皇、宇多天皇の治世を割と史実に基づいて描いています。
    高子さん、すごいなー。

    「東風吹かば」は、こないだ読んだ成風堂シリーズ最新作に出てきた「飛梅」の元ネタがラストに。
    菅原道真、意外と腹黒い。この人だけじゃないけど。

  • 連作3編の収録。題名は和歌から。泥ぞ〜は陽成天皇、凍れる〜は藤原高子、東風〜は菅原道真となっている。全編通して読み終わると、高子が中心なのでしょうか?登場人物のほとんどがままならない想いを抱えていて、どんより暗く切ないです。
    最後はもの悲しく余韻が残りました。
    高子に負けず存在感を出していた源暄子にも興味がわきました。調べたら本当に実在していた人物ですが、情報はなし。関連本を読んでからもう一度再読したい。

  • 貞明(のちの陽成天皇)は、実の母からも愛されず、ずっと慕っていた乳母には通う人がいたことを知り、ますます孤独を深めていた。
    そんな中、兄弟のように共に育った乳母の息子・益に好意を打ち明けられ、求められるままに応じる。初めて愛情を与えられる喜びを知るが、夢のような幸せは瞬く間に終わりへと向かい…

    天皇家と、それを取り巻く外戚たちの主権争い。入り混じる男女の愛憎。
    平安時代って、もっとゆったりまったりしているものかと思っていたけど、こんなにスキャンダラスな出来事も、あったのでしょうか。

  • 平安王朝で生きる者の哀切な物語。
    男はただ政に生き、女はその道具として生かされる。
    人々の欲望が渦巻く宮中で幸せを掴める女などはほんの一握りで、その地位が幸せとも限らない。
    乳兄弟であった貞明と益の悲しい関係から始まり、年老いた高子と暄子が静かに二人寄り添うラストで終わる。
    嵐のように巡っては過ぎ去るすごい時代の一片を見てしまった。

  • 本誌のほうで途中から読んだのですが、気になって図書館で借りてきました。
    これは良い〜文庫になったら買って再読したいです!早く文庫化して欲しい〜

  • 読みにくい。「花宵道中」のが読みやすかった。多角的に描かれているから、入り込みづらいのかな、と。繊細な感じなんですけどね。誰メインなのか。。。あと、これはスルーした方がよいのかしらと思った描写が幾つかあった。

  • 入内できぬ女の思い。后になっても叶わぬ恋。報われることのない帝の愛――。平安王朝を舞台に様々な狂おしい愛のかたちを描く中篇集(アマゾンより)

    后がねとして内裏に上がるため、愛する男と引き離された藤原高子。
    彼女に狂おしいまでの恋を教えた在原業平。
    年若くして帝となった、高子の息子・貞明。
    貞明を慕う、乳母の息子・源益。
    入内を果たすが、顔も見せない貞明に心乱す紀君。
    愛する男の子を産んでも、満たされない想いを抱える麗景殿。
    帝に唯一の愛を捧げられながら、それに喜びを感じることがない石女の姫君・多美子。
    摂政による政治の介入を阻止すべく奔走したあげく、自らが帝となる運命を歩んだ源定省。
    定省の上に親政の夢を見、そして滅んだ菅原道真。
    欲はなかったはずなのに、結局は藤原北家にすべてをささげた藤原基経。

    「泥ぞつもりて」「凍れる涙」「東風吹かば」の3編の中で絡み合う、人々の想い・想い・想い・・・。
    綺羅綺羅しい殿上人の心中に潜む、泥のようにつもり消えないその想いの数々に、自分自身もまとわりつかれるような心地になる物語です。
    史実に則った話ですので、宮木さんのオリジナリティは薄れましたが、男色あり、百合ありと、バラエティ(?)に富んだ一冊。
    密やかな恋の想いに悩む夜に読むと、ハマり込んでしまう作品かもしれませんね。

  • お盆に実家で読んだ本⑤(ラスト)

    歴史ブームで世の中が沸いていますが、
    意外と平安時代は盲点ですよね。
    その中でも、天皇ものは少ないと思うなぁ。
    (私が知らないだけかもしれませんがね。)

    ただ、なぜかはまりませんでした・・・残念。
    今まで『伊勢』の授業ぐらいでしかお会いしなかった
    高子がすっごく生々しく「女」として登場していたり、
    天皇のエピソードもそれぞれ知っていたりで、
    興味がそそられる要素満載のはずなのになぁ。

    もうちょっと落ち着いて読めばよかったです。反省。

  • 業平と逃げる、あの有名なシーンで泣いた。
    待つしかなかった女の、気持ち。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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