四とそれ以上の国

  • 文藝春秋
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感想 : 51
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163277004

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと怖くて、でもすごく力のある景色。
    電車の中から眺めた四万十川を思い出した。
    雨の中、たまに人気のない駅に止まったあの景色。
    すごくすごく四国に行きたくなってしまった。

    四国を舞台にした5つのお話が収められているけれど、全部なんとなく景色を眺めたという程度で理解は出来ていないと思う。
    代々語り継がれてきた昔話を聞くのに似ているかもしれない。
    理解出来ないことも、不思議なことも、怖いことも、全部そのままを受け入れるしかない。

    中でも最後の「藍」が好きだと思った。
    そもそも藍が逃げるというのがとても不思議。
    どう決着をつけるのかと思ったら、想像以上に鮮やかなラストだった。
    四国に行きたいな。

  • 昔、本のタイトルで中身が気になって図書館で読んだが、よく分からず最初の話だけ読んでやめてしまった…こんな本もあるのかと思った

  • 四国を舞台にした意味のわからない短編集。ストーリーを追求しない文章の羅列は読了に耐え得ない。

  • 久しぶりに、いしいしんじさんの小説を読んだ。
    最初はなかなか読み進められなかったのだけど、いつのまにかはまっている。
    よくわからないけれど、独特なこの世界にずぶずぶと。

    四国という場所に宿る、土着的なものから生まれるものがたり。

  • 四国出身でも途中で投げ出したくなるくらい、独特な世界観。話は特になく、淡々と生活や、それぞれの心情が語られて行くのみ。

  • あまりよくわからなかった。いつもの伸びやかさがないような……「塩」はよかったです。

  • よそ見を許さない本で一気に読んでしまった。
    読み始めるとすぐに生々しい、気持ち悪さを感じるのだけど、数ページ読むともう捕まえられていて他に気をやりたくなくなる。床を歩いていると思ったらいつのまにか壁で、天井で、という感じの不思議さで、ああいしいさんの小説だと思う。
    いしいさんが言葉の前にあるもの、もっと根源的な衝動のようなものへどんどん向かっているのは感じていたけど、その志向が分かりやすいかも?

    感情も、言葉も、性的欲望も、暴力も、知的好奇心も、今も昔も、自分も他人も、四国でみんな渦になってどろどろに戻っていく。こちらの頭の限界を超えて飛び回る話についていくうちに、ああそうなんだなと分かる…ように感じる。
    私はまだ行ったことがないけれど、四国がぎっちりと詰まっていて「それ以上」へどんどんあふれ出しているのが読んでいてたのしく、「ふくふく」してしまう。
    どれが好きというのは悩むけれど、ガツンと来る「塩」、藍職人の地に足感と藍のふわふわした旅が絡まる「藍」が素敵だった。

    鳴門の渦の話は梨木香歩さんの「やがて満ちてくる光の」にもあったけど、やっぱりエネルギー、物語の溢れるところなんでしょうね。とっても行ってみたい。

  • タイトルと、装丁が素敵で何度か借りてみて、漸く読んだ。
    不思議な雰囲気。嫌いじゃない。

  • #宇宙船のエンジンの機械油は、マッコウクジラから採れる。「そして何より鯨がすみずみまで用いられたのは人が読む本だった。(中略)まったく関係ない話にみえたときも、巨大な鯨あるいは目に見えない鯨の影が海面下をゆったりとすすむ気配は本のどこかに必ずたちこめ……」

    #鯨は加工され、その姿をさまざまに変え宇宙にまで行く。遠いものと遠いもの同士を結び付け、さらにより遠くまで行こうとする試みこそが書物の機能であるなら、『四とそれ以上の国』はいしいしんじの最深記録。もはやアーヴィングでもフォークナーでもない、傑作。

    (2009/02/19)

  • 四国を舞台にした短編小説集。しかし、いしいしんじのこと、ただの四国に納まりません。人形浄瑠璃に心奪われ、英語教師は鉄道で南へ行き、巡礼の道を人々は行き、渦を見て、逃げた藍を追う。幻想というか、現に夢がもれ出ているのか、妖しげな世界が繰り広げられています。
    それは、ありとあらゆるものから物語が溢れ出ているからなのかも。四国の人々、土地、歴史、文化、伝統、交通、産業などなど。どれもこれもが物語となり、何もかもから物語が溢れ、それぞれが絡み合う。全ての物語の色が混ざり合いながらも、それぞれの色を残し主張し合う。あたかもマーブル模様を成すように。
    だから、主軸となる物語を見失ったり追えなくなることもありました。溢れる物語に翻弄され溺れてしまったのです。また再読すれば、新たなる物語を掴むことができるのでしょうか。

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著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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