架空の球を追う

  • 文藝春秋 (2009年1月30日発売)
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本 ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784163278308

感想・レビュー・書評

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  • こちらもまたフォローしている方のレビューを拝読して図書館で借りました(私の借りたのはハードカバーの方ですが)。
    また新しい一冊、出合わせて下さりありがとうございます。

    日本や海外を舞台にした11の短編集。

    日本が舞台の短編は、まるで偶然居合わせた隣のグループの話を悪気なく聞いてしまった時のような、気恥ずかしい可笑しみを感じる…ちょっと話しかけたくなってしまうけど絶対出来ないような…。

    海外が舞台の短編は、一つの物語の断片を鮮やかに切り取ったような映像が、目の裏に結ばれる。

    森絵都さんの文章は、登場人物たちをちょっと突き放したような、外側から観ている映画のような感じがする…あくまで私観です…。
    2020.6.17

    • さてさてさん
      ロニコさん、いいですよね、この作品。
      私は〈パパイヤと五家宝〉をまず思い出してしまいましたが、ロニコさん書かれているように『外側から見てい...
      ロニコさん、いいですよね、この作品。
      私は〈パパイヤと五家宝〉をまず思い出してしまいましたが、ロニコさん書かれているように『外側から見ている映画』、なるほどと思いました。表題作なんか特にそんな感じがします。ふわっとなんだかあたたかく、でも傍観者なんだな、自分と感じる独特な雰囲気感。最近、短編もいいな、と感じているのですが、この作品もとてもいい印象で記憶に残りました。
      2020/06/17
  • これいいわー。
    短編集なんですが、どれもユーモアに溢れていて、くすっと笑わせた後に爽快感がある。

    お金目当てで御曹司とお見合いし、結婚目前まで行った婚前旅行で、自分がかなり無理をして相手に合わせていたのに気づいていたと言われ、もう終わりだと号泣する。

    しかし、御曹司が「実はうちの会社倒産寸前なんだ」と告白すると

    「あなたは気がついていたんでしょ、私の太股にある根性焼の痕。だてに修羅場くぐってきたわけじゃないわ。借金取りくらい屁のカッパよ」

    とさっぱりして答える。
    人生の転換点を見た気がします。

    ほかにもスッキリする物語ばかり。
    こういうの好きだわー。

  • 森絵都さんの短編集。どれも味があって良かったけれど私が一番好きなのはイギリスのオフィスが舞台の「ハチの巣退治」。やりとりがコミカルで笑っちゃう。「太陽のうた」は難民の生活について考えさせられる。表題作の「架空の球を追う」は懐かしい欽ちゃん走りといい、息子を見守る母親たちの様子といい、わかるわかると思いながら読んだ。

  • 短編集。
    短編11編。
    どれも「普段話していそうなこと」というところに惹かれる。ありそうな話題だから、人の話を盗み聞きしているような面白さがある。

  • 「私らは神様の気まぐれでちょっとばかり移動した。神様の吐息に吹かれてここに飛んできた。今いるここが、だから、私らの土地なんだ」(「太陽のうた」より)

    11編の短編集。
    様々な国、様々な国籍の女性たちのほんのひとかけらの日常。

    取り立ててどれが1番!とは言えないのだけれど、
    どのお話も余韻が残る。
    全体的に大きな出来事が起こる物語はほぼなく、
    静かな女性たちの心の移り変わりだったり、
    周りの移り変わりが丁寧で手に手を取るように心情が入ってきた。

    ちょうど、こんな心持ちだったから落ち着いて読めて良かったかな。

    【10/24読了・初読・市立図書館】

  • 11編の短編集。1作がどれもかなり短いので、寝る前に2作ずつくらい読むと楽しいかも。「架空の球を追う」「銀座か、あるいは新宿か」「チェリーブロッサム」「ハチの巣退治」「パパイヤと五家宝」「夏の森」「ドバイ@建設中」「あの角を過ぎたところに」「二人姉妹」「太陽のうた」「彼らが失ったものと失わなかったもの」。「パパイヤと五家宝」が一番記憶に残ったかな。ああ、そんなことあるよなーと共感。オシャレで読みやすかったが、ボリューム不足は感じました。

  • どうにもしっくりこない少年野球チームの練習風景。それを観察する主人公が耳にする、母親たちの会話・・・「架空の球を追う」

    ある程度〈大人の女性〉になった女4人が続ける、答えの出ないささやかな問答・・・「銀座か、あるいは新宿か」

    早咲きの桜が咲く川沿いの遊歩道。そこで繰り広げられる人間模様・・・「チェリーブロッサム」

    ボスの命令で、オフィスに巣食う蜂の巣を駆除する羽目になった部下たち。相談の上、何でも屋のジョーに依頼をする事にしたが・・・「ハチの巣退治」

    スーパーで見かけた優雅なマダム。彼女に即発され、高額食材を次々とかごにいれる主人公。しかし五家宝を手に取った時に魔法が解けて・・・「パパイヤと五家宝」

    自然に返すために買ったカブトムシ。そうだ、私はジユウホンポウな女になりたかったんだ・・・「夏の森」

    猫をかぶってつかまえた、禿げてカツラの婚約者。誘われた婚前旅行先のドバイでだって、抜け目なくうまくやれるはずだったのに・・・「ドバイ@建設中」

    偶然通りかかった道で、昔ひいきにしていた食堂がつぶれたことを知ったカップル。これまた偶然に、乗っていたタクシーの運転手は、その店の元従業員で・・・「あの角を過ぎたところに」

    妙に意識してすれ違う姉妹。その間に立ち、お互いから相談を受ける従姉だったが・・・「二人姉妹」

    難民キャンプを訪れる、うわべだけ善意で飾った人間の思惑をよそに、したたかに生きる人々の日々・・・「太陽のうた」

    バルセロナ空港内で起こったささやかな事故。ワインの瓶は割れてしまったが、・・・「彼らが失ったものと失わなかったもの」


    久々に読んだ、森さんの短編集11編。
    人間の持つ、善なる部分を信じたくなる読後感。
    どれも本当に何気ない一瞬を切り取ったお話なのだけれど、どれも妙に心に残りました。
    女性は特に共感できるんじゃないかな。
    私は「架空の~」の母たちの会話と、「銀座か~」の女4人の会話にうんうん頷いてしまいました。
    「ハチの巣~」も、何でも屋ジョーがなぜハチを全滅させる殺虫剤を使わないか・・・という会話をオフィスの部下たちと交わすあたりがなんともイカしているのでお気に入り。
    「あの角を~」は、ほのぼのした話かと思いきや、最後は落とし穴にはまった感じがしましたね~。
    「太陽のうた」では偽善者の姿と対比させて、難民キャンプに暮らす元女優のたくましさが描かれていて・・・、読んでいて力付けられました。楽じゃない暮らし。でも、だからってそれがなんだろう?明日にはまた太陽が昇り、大地を照らしてくれるのに。
    「彼らが~」は、日本人ならではの行動&物語ですね。たぶん私でも同じ行動をするだろうなぁ。それくらい日本人にとっては当たり前な出来事なのだけれど、それをこんな風に切り取ると、こんな印象的なお話になるんだ~とびっくりさせられました。
    なかなか粒よりの短編集でしたよ♪

  • 「架空の球を追う」
    真似して走ってみる。
    練習は楽しいばかりではないとはいえ、誰一人とて真剣になる瞬間がないのならば辞めた方がいいだろう。

    「銀座か、あるいは新宿か」
    どちらが行きやすい。
    二箇所で決めようとするからこそ、中途半端な結果になって答えが出ることなく答えが出てこないのだろ。

    「チェリーブロッサム」
    緊急性はあったのか。
    常習犯であると知っている人が来てくれたからこそよかったが、何も知らなかったら困惑していただろう。

    「ハチの巣退治」
    ママへの手紙を書く。
    退治してくれるのは有り難いけれど、一回で全ての駆除をするのではなく少しずつになるのは商法なのか。

    「パパイヤと五家宝」
    値段を見て驚いたが。
    手に入れる場所によって変わってくるだろうが、自国の相場を知っていると比べてしまうのは仕方ないな。

    「夏の森」
    トトロの森に返す虫。
    たった一匹を救った気持ちになるのは自由だが、自己満足に巻き込まれる身にもなると有り難迷惑かもな。

    「ドバイ@建設中」
    河童との旅行中には。
    本音で話し合える仲だからこそ気楽に居れるとはいえ、人前でどぎついことを言ってしまったら不安だな。

    「あの角を過ぎたところに」
    ここにあったはずが。
    ずっと合った店が突然姿を消してしまっていたら、知り合いであるほど何があったのか気になるだろうな。

    「二人姉妹」
    避けていたのは本当。
    どれだけ仲がよかったとしても、時折距離を置きたいと思うこともあるだろうし気分にもよってくるだろ。

    「太陽のうた」
    外国人が見たかった。
    安全が確保されていない場所で暮らしている以上、絶対なんてないけれど常に気を張ってるのも疲れるな。

    「彼らが失ったものと失わなかったもの」
    火星まで持ってける。
    信じて購入したのだから、問題が起きた瞬間に店に文句言ってもいいだろうに黙って片すのは人柄だよな。

  • ギリギリ星3つ。

    どの短編もなんだか微妙。
    統一感がなく、とりあえず短編詰め込みました感が強い。

    うーむ。

    森絵都さんはそこそこ好きな作家なだけに残念。

  • 何気なく始まるのに、急に豪速球で別の世界に連れて行かれる森絵都の短編が好きで、この本も期待して読み始めたのだけどやや期待しすぎたかもしれない。
    面白かったんだけども。

    年に一度集まる昔の女友達グループが銀座か新宿どちらで集まるか二手に分かれて協議する話、スーパーでパパイヤを買おうとしているおしゃれな奥さんに釣られていた主婦が五家宝を手に取ることで現実に戻る話、なんとなく距離ができてしまった姉妹がUFOの話で突然昔のように戻る話が良かった。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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