- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163280806
感想・レビュー・書評
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前作から続いていた暗い雰囲気が、今作でも漂っているような、そんな印象があります。街の灯で感じていたような、昭和初期の華族という、なんとはなしに感じていたワクワクした非日常の雰囲気というものが段々影を潜め、華やかで、それでいて密やかでといった雰囲気は、もう感じられなくなっているように思います。
徐々に不穏な気配を帯びていく世情と上流階級と聞けば、何かしら非日常は残っているはずなのですが、そこにはもう「こんな世界に住んでみたい」といった憧れはありません。
なんだか醒めた印象を持ってしまうのは、私の問題か、雰囲気が変わってきたからかわかりませんが、正直に言えば残念な変化でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
華族の栄子お嬢様とお付きの別宮さんのシリーズだったんだ!昭和初期の描写…登場人物の言語と土地の情景は、丁寧でお見事、指先が届きそうな感じ。風雲前のパノラマの中、茶目っ気と蘊蓄を交えながら、凛として謎を解いて行く。想いが時代に裂かれる匂いのラストが切ない。
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戦前の昭和初期の時代を華族の目線から、ちいさな事件を題材に当時の生活が描写されている。現代とは違う温かみが感じられた 作者の文章力のせい?。
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とりあえずあまり集中しないで読んだら、わかりにくかった。。。
うーん特に印象もなし -
第141回直木賞受賞作にして、「ベッキーさんと私」シリーズの最終作。
昭和初期の華族のお嬢様と、社会情勢の中、北村薫さんお得意の「日常の謎」をきめ細やかな筆致で記した連作短編集。
華族主人の神隠しの謎を描いた「不在の父」、上野で補導された良家の少年の行動を探る「獅子と地下鉄」、物語を閉じる表題作「鷺と雪」の3作。
昭和11年2月の「あの」事件の中で「わたし」花村英子に起こった偶然が、物語の余韻を何時までも心に刻みつける。
もう少し読みたい、もっと読みたいと思いながらも、雪の帝都とこれからの時代を象徴させる物語の閉じ方で非常に印象的。
「日常の謎」のミステリとして良く出来ているのは「獅子と地下鉄」。
良家のお坊ちゃまが、夜の上野で補導される。彼が残したメモには上野と浅草の文字。上野と浅草に共通するものは? 上野に何があったのか?
彼の行動についての謎解きも、その視線も優しくて大好きです。 -
白い白い、降り積もる雪の朝の、鮮烈なラストシーン。
こんなにせつない間違い電話があるなんて。
戦前生まれのヒロイン英子が桜田門外の変を連想する、山村暮鳥の詩の「騒擾ゆき」という一節に、彼女よりずっと後の時代を生きる私は、やはり二・二六事件を連想してしまって、ここに向かってお話は進んでいくのだろうなあと、予想はしていたのですが。
ベッキーさんシリーズ1作目の「街の灯」に登場した服部時計店が、こんなかたちでラストに出てくるとは。ひとつひとつのお話を丁寧に描きながら、シリーズ全体の大きな流れを緻密に構成していく、北村さんのあいかわらずの上手さを感じました。
ベッキーさんシリーズ最終作とのことですが、良くも悪くも生粋のお嬢様である英子が、「善く敗るる者は亡びず」という言葉を胸に抱きながら、この後の暗い時代をどう生き抜いていくのか、読んでみたかったなぁと思いました。 -
直木賞受賞作品でベッキーさんシリーズ3作目だったのですね・・。文章が美しく、昭和初期の伯爵・子爵などなど上流社会の日常生活・価値観が垣間見えてへえ~と思うことがww。超庶民の私には新鮮でした。単純な私は、読んだ直後は、自分も上流社会の人気分☆
「なあ、友達のなかにも辿って行けば、元貴族の人っているんだろうか?」というと、「現代になっても、俺らとはちがう世界に住んではるやろから、すぐわかると思うよ。まず、友達のなかにはいないねww」と言われました。はい。そりゃそうですね・・。超庶民ばんざい(*^_^*)
でも、幕末の維新でなおあげた下流武士の一族も貴族だったわけで、なんかへんなの。出自なんて長い歴史でみれば時流次第なのかとも感じまする・・。 -
北村薫の趣味の世界。
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『ベッキーさんと私』シリーズ第3作。直木賞受賞作。著者が得意とする"日常の謎"をベースとしたミステリー。私は北村薫さんの描く作品の持つ雰囲気が大好きです。特にこのシリーズは、昭和初期の裕福な家庭に育った、お嬢様特有のちょっとのん気な雰囲気を持つ主人公を目線から、当時の上流家庭の生活が覗き見れるところがとても好き。
のん気だった主人公が、様々な人と出会い、言葉を交わす中で、少しずつ心が成長していく過程もきちんと描かれている。
ベッキーさんが主人公を諭す場面は、自分が大人になった今だからこそ心に染みる。
そして、軍靴の足音が近づく、その不穏な雰囲気。
エンディングを読んでから改めてベッキーさんが主人公へ言った言葉を読むと、一つ一つが重く心に響きます。
北村薫さんの書くミステリーは、単なる"謎解き"ではなくて、それを取り巻く時代や人々の心の機微、人の心の奥底に潜む小さな悪意、喜び、絶望、希望、そういった感情を丁寧に丁寧に救い上げていて、いつ読んでも素敵だなあ、と思います。
「ミステリーが苦手」という人がこのシリーズを読んだら、きっと"ミステリー"の概念が崩れるんじゃないかなあ。
手元に置いて、何度も読み返したい作品。