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本 ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784163280905
感想・レビュー・書評
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2005~09年にわたって「オール讀物」に掲載された6短編の単行本化。
乙川優三郎の作品は、世の中の片隅で世間の不条理に押しつぶされそうになりながら懸命に生きている人々が、自分のそばの小さな幸せを見つけて救いを得ていく、というものが多い。『闇の華たち』というタイトルは作中には出ては来ないのだが作品全体を表すことばとしてふさわしい。
新妻と歩いていた友人に酔って因縁をつけて斬り殺した剣術師範代の男に、剣で仇を討つ男/柳生の里を出て弓で仕官したが晩年になって不正を告発して剣士として討ち死にするする男/出世した幼なじみが咎めを受けて零落する様を見守る出戻りの女/自分を騙して計画的に出奔し画家となった夫と再会して逢瀬を持ち続ける妻/幕末の水戸藩の暴発を監視していた隣藩の武士/武士の次男が医者となるが、救えない患者に、また幼い息子を本家の跡取りに出さざるを得なかったことに悩む蘭方医。 -
短編集。いつまでも読んでいたくなる。「悪名」が良かった。
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先日読んだ乙川優三郎の「生きる」は読み応えのある小説集だったが、今日読了したこの「闇の華たち」もそれに劣らず心に残る作品集だった。
武家小説ということで、どの作品も男たちの生き様を前面に出して描いてはいるが、その陰に隠れた女たちの生き方にもきらりと光るものがある。
時には主人公の男よりも、女の姿により心惹かれるものがある。
そうした男や女たちは、武家社会のしきたりやしがらみに縛られながらも、そのなかでそれぞれの道を懸命に捜し求めながら生きている。
それはいつも困難や軋轢に満ちた道である。
しかしそれを承知のうえで、立ち向かっていく。
その真摯で折り目正しい姿に心打たれる。
こうした感動は、時代小説独自のものである。
そして時代小説を読み続けたいと思わせられるのも、こうした感動を味わいたいがためなのである。
そうした期待に、乙川優三郎の小説は間違いなく応えてくれる。
ひかえめで端正な文章からつむぎだされる物語や登場人物には、限りない魅力と愛おしさを感じる。
そして同時にしみじみとした哀歓を感じとることができるのである。
これからも彼の作品をできるだけ読み続けていきたいと考えている。 -
ちょっと雰囲気変わったかな。
途中まであれー?と思いながら読んだ。
最初から格好よくて一人で勝手になんでもうまくこなす少女漫画の王子様がチャンバラ大河をするような男話になっちゃうのかしら?って。
けれどやっぱり人をひとりずつ丁寧に描いていて、割り切れないままに進んでいくそのモヤモヤさえ清清しい。
最後の話が好き。
タイトルがちょっと雰囲気にそぐわない。 -
時代小説じゃないと書けない話しばかりでさすがだわあ^-と
ちょっと感動。
突き放しちゃった感じが冷たくてここちイイ。
こんなの読むとやっぱり、
今の人の心の中と、外側のなんやかやの色々なものがどうもしっくりと
マッチしていないんだなあ、と考えて、でも、
どの時代でもそうなのかなあとも考えて、 -
読了 2009年 7月 (借:大村市民図書館)
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すばらしい。タイトルからはなんだか伝奇っぽいイメージがされたが、そういう意味ではなかった。そのまま闇にうずもれていく、けれど華たち、ということだった。「男の縁」がそれを象徴しているかのようである。歴史とは、ひとりの人間がその生をどんな形であれまっとうした、その積みかさね――華であるのだと、改めて感じた。個人的には「悪名」がよかった☆ ツボった。
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09/08/15 クサってた気持にカツを入れてくれた一冊。
武家モノはいいねぇ。
著者プロフィール
乙川優三郎の作品





