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本 ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784163281209
感想・レビュー・書評
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毎朝新聞政治部記者の弓成亮太が情通で逮捕……
運命の人2作目
2009.04発行。字の大きさは…中。
外務省安西審議官付きの女事務官の三木が国家公務員法100条(秘密を守る義務)。毎朝新聞政治部記者の弓成も国家公務員法111条違反(そそのかし)で逮捕されます。
弓成が、沖縄返還時の日米密約をスクープすると。総理の怒りを買い国家公務員法で逮捕される。その検察の起訴状に「情通」と記載。
検察は、弓成を貶めて、強引に女と寝て、脅して情報を取ったと世間に印象付けて、事件の本質を隠そうとしているとしか思えない。
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第2巻は、沖縄返還協定が調印された翌年の1972年(昭和47年)。舞台は、東京です。
外務省安西審議官付きの女事務官の三木と、毎朝新聞政治部記者の弓成の逮捕から始まります。
弓成の逮捕は、佐橋総理の強引な指示によるもので。警察、検察は、弓成を逮捕するのに国家公務員法111条違反(そそのかし)を用いました。そして起訴状に、女事務官の三木を強引に寝取り、脅迫して情報を取ったとしました。
しかし、三木と弓成の間は、恋愛関係であって、強引でも、脅迫でもなく。三木が、自発的に安西審議官の所に回ってくる文書をコピーして、弓成のためにと渡していたことが書かれています。
しかし、逮捕された三木は、3ヶ月間に渡って、弓成と寝たことを、夫に言われたくなければ、安西審議官の所に回ってくる文書を俺に見せろと、強引に、脅迫された証言しています。これは本人が自発的に証言したのか、警察の取り調べで誘導されたのかは書かれていませんが。
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毎朝新聞編集局は、弓成逮捕を受けて、
国民の「知る権利」どうなる 正当な取材活動
権力介入は言論への挑戦
と題して「知る権利」を大々的にキャンペーンを展開しますが、最後は、女を寝取ったとの検察の起訴状を受けトーンダウします。毎朝新聞上層部は、女を寝取って情報を取ったのはまずい、社の名誉にかかわると、こんな下劣なことをしてくれてと……。
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【読後】
2巻は、東京地方裁判所での裁判の経緯が書かれていますが、その中で、弓成が妻・由里子さんに一言も、事件の話をせず。三木との関係を詫びるでもなく、淡々と自身の裁判の事を考えています。事件前の家族を慈しむ姿を見ていた私には、これが同一人物なのかと思わざるおえません。
事件後、私は、弓成に対する思い入れより。由里子さんに同情してしまいます。
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【音読】
5月8日から5月25日まで音読で読みました。今回は、大活字本でなく単行本です。
2021.05.25読了
2021.06.04感想文記入
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著者の山崎豊子さんが、「この作品は、事実を取材し、小説的に構築したフィクションである。」と文頭に書いて有りますが。読んで行くと1971年の沖縄返還協定に関する取材で入手した機密情報を記事にする以前に野党国会議員に漏洩した毎日新聞記者の西山太吉らが国家公務員法違反で有罪となった実際の西山事件を想起させる内容となっています。
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※「運命の人」の感想と読了日
運命の人4作目 2021.07.07読了 2021.07.08感想記入
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163281401#
運命の人3作目 2021.06.10読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163281304#
運命の人2作目 2021.05.25読了 2021.06.04感想文記入
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163281207#
運命の人1作目 2021.05.07読了 2021.05.31感想文記入
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/416328110X#詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
レビューを書いていなかった。
星は2012年に読んだ時に付けている。
当時ドラマを先に観ているはずだが、今、あらすじを読んでも全く内容を思い出せないが、1巻には星を4つ付けているから1巻はたぶん面白かったのだろうな。
しかし、2巻で星が2つになっていて、その先の巻に進んでいない自分…。
今から再読するにはもう時代が古過ぎて、ついていくことができないだろうと思う。
山崎豊子氏の「沈まぬ太陽」も、何度かトライし直しても3巻止まり…。
凄い作家さんなんだけど、もう私に読む気力が無い。
ごめんなさい。
(このレビューも、以前1巻のレビューだけ書いてあったものの、ほぼコピペ) -
ほとんどが法廷劇。記者としてリソースを明らかにしてしまうことになったのは、たしかに失敗。それに対して、どのような対応をするのか、今の段階では主人公の記者に対しては、自己中心的である印象は拭えない。そのためあまり共感的に読むことはできない。しかしながら、最近でも話題になる国家権力に対峙して戦うことの恐ろしさは感じる。
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二巻は裁判が始まり一審の途中まで。なんか個人対国という構図になっており怖い感じがします。
モデルとなった方は、2005年になって、情報開示されたアメリカの資料を元に、自身の有罪判決に対する賠償請求を求めて訴訟を起こしています。2012年にはドラマ化もされたようです。 -
逮捕された弓成。
国家権力に屈したのかと思いきや、三木とのスキャンダル発覚。
この時点で、弓成への同情が薄れ、同時に主人公としての魅力も下降。
心底、応援しようと思わなくなった。
奥さん、家族が可哀想・・・ -
二巻。
外務省密約文書の不正入手で逮捕された主人公と
関係者の取調べと裁判。
「不正入手」行為を攻める検察側(国)と
国民に嘘をつく密約をした「国」を攻める弁護側(主人公)。
二つの罪の重みづけを争う裁判。
実話だけど、不合理だよなあ。
どっちも罪でしょ、と。
いつも思うのだけど、法律の解釈とか
裁判のもっていきかた次第で刑が変わるのが腑に落ちない。
今回もそんな感じで、ざらりとした感覚が残る。 -
展開が深まっていくことを期待し過ぎたのだろうか。
深くなりつつあるが
まだまだ序の口ですかね・・・
機密漏洩に激怒した総理。
激怒、故のつるし上げ?そして逮捕。
こわっ!
凛とした奥様、由里子さん
立派すぎますです。
続巻も大きく期待します。 -
主人公の記者が機密文書漏洩の件で逮捕されましたが、この巻では裁判が始まります。
前巻ではわからなかった、協力者との関係。そのスキャンダルに振り回される奥さんですが、この人は立派すぎるほど。
それに比して、主人公の態度に腹が立ちます。
知る権利とスキャンダル、機密漏洩は、この巻だけではまだまだ決着つかず、です。 -
※註 全四巻まとめてのレビューです
『沈まぬ太陽』から10年、山崎豊子の最新作は1971年の沖縄返還協定の調印にあたって、日米間で取り交わされたいわゆる「沖縄密約」についてのドラマである。
毎朝新聞政治部の辣腕記者であった弓成亮太は、沖縄返還にあたってアメリカ側が補償すべき地権者への土地修復費400万ドルを日本政府が密かに肩代わりする旨の密約を示す電信文を、親しくしていた外務省女性事務官・三木から密かに入手した。
当初、ニュースソースを秘匿するために、紙面でも詳細に立ち入らず慎重を期したが、世論を喚起するには至らなかった。そこで予算審議が大詰めを迎えた国会の場で、国民を欺き通す政府・外務省を糾弾しこの問題を世に問うべく、この秘密の電信文を野党・社進党の若手議員に手渡した。しかし、弓成が自身の記事ですら慎重を期したこの電信をあろうことかこの野党議員は委員会審議の場でふりかざし、文書の漏洩が問題化した。
長期政権の花道をつけるべく用意した沖縄返還について邪魔を許さぬ新聞嫌いの佐橋首相の意向もあり、文書を弓成に流した事務官の三木は国家公務員法違反で逮捕され、弓成自身も三木に国家機密の漏洩を「そそのかした」かどで同時に逮捕された。
そして、注目の起訴状には弓成が夫を持つ三木と性的関係にあり、その情に訴えて強引に外交機密を盗み出させたという内容が並べられていた。新聞社側は「知る権利」「報道の自由」を断固守るべく、全面的に弓成をバックアップし、国民に知らせるべき内容を秘匿した外務省側の責任を一審で責め立てた。一方検察側は、この密約が秘匿されるべき国家機密であるという前提の下、三木を籠絡した弓成に報道に携わる者の倫理の逸脱と取材方法の違法性に重大な責任を課すというストーリーを作り上げ、真っ向から対決となった。結果的に、一審は弓成に無罪判決を下したものの、二審は逆転して有罪、最高裁への上告も棄却され、弓成は敗北した。
ストーリーの全体構成は第1巻が事件の概要、第2巻~第3巻が裁判経過、第4巻が裁判後の弓成の半生を描いている。
およそ小説とは思えないぐらいの取材と現実への厳しい眼差しは、他の追随を許さないが、1971年の高度な政治的問題である日米外交交渉とスキャンダラスな裁判、1945年の凄惨な沖縄戦、1990年代の沖縄基地問題を一つの作品に詰め込むにはかなり無理があったのではないだろうか。
社会派小説を書いては右に出る者がない山崎の力作であるが、著者の年齢を考えれば長編小説としてはこれが最後になる可能性もある。小説の出来としては、『大地の子』『沈まぬ太陽』のように頁をめくるたびに胸を締めつけられるような傑作とは言えないが、戦後日本政治外交史の最重要問題である「沖縄」についての著者の強いメッセージを受け取ることができた。
著者プロフィール
山崎豊子の作品





