運命の人(四)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163281407

作品紹介・あらすじ

舞台は沖縄へ-。曲折の末、弓成は沖縄へやってきた。様々な人々に出会い、語らううちに、かつて沖縄返還取材に邁進しながら、見えていなかった沖縄の現実に直面する。再びノートとペンを手にした弓成の元に、あの密約を立証する公文書が発見されたというニュースが飛び込んできた。誇り、家族、一生を賭けるつもりだった仕事。すべてを失った男が彷徨の末、再生への道を歩き出した時、アメリカから届いた思いがけない報せが真実の扉をこじ開ける。感動の巨編、ここに完結。

感想・レビュー・書評

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  • 死を決意した弓成亮太が、生き帰って来ました……
    運命の人4作目 
    2009.04発行。字の大きさは…中。

    国家公務員法111条違反(そそのかし)に問われた毎朝新聞政治部記者の弓成亮太は、最高裁で有罪判決が確定し、自分を見失い。家族とも別れ、死への旅に出て行きます。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    弓成は、死に場所を求めて、鹿児島から沖縄行きの船に乗ります。
    弓成は、戦争中、戦後の沖縄の事を書き残して置かなくてはと決意してから生き返ります。
    最後に、妻由里子との再会と、その後に含みを持たせた言葉から、少しずつ気持ちを繋いでいくように思われます。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    【読後】
    4月29日から音読で読んできましたが、やっと読み終わりました。約3ヶ月長かったです。
    第4巻目の今作は、著者山崎豊子さんが、どのような終わり方にもって行くのかと思って読んできました。そしたら最後の舞台を、沖縄に設定したのには、ビックリか、納得か。

    解説を読んで、山崎さんが沖縄を是非書いておかなければならないと言っていたのが分かります。私は、戦争中、戦後の沖縄を知っているつもりでいたのですが、この本を読んで、ここまで大変な、悲惨な事があったのだと涙が止まりませんでした。
    そのため、読むスピードが凄く落ちてしまいました。

    な、涙が、涙が……出て酷い時は、4ページしか進まない時が何日も続きました。
    いまも、この文章を書きながら涙が出て来て、キーボ―ドが霞んでいます。
    沖縄の事をいま書く事は、私には、出来ません。
    2021.07.07読了
    2021.07.08感想記入

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    著者の山崎豊子さんが、「この作品は、事実を取材し、小説的に構築したフィクションである。」と文頭に書いて有りますが。読んで行くと1971年の沖縄返還協定に関する取材で入手した機密情報を記事にする以前に野党国会議員に漏洩した毎日新聞記者の西山太吉らが国家公務員法違反で有罪となった実際の西山事件を想起させる内容となっています。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    【音読】
    6月10日から7月7日まで音読で読みました。今回は、大活字本でなく単行本です。

    ※「運命の人」の感想と読了日
    運命の人4作目 2021.07.07読了 2021.07.08感想記入
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163281401#
    運命の人3作目 2021.06.10読了
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163281304#
    運命の人2作目 2021.05.25読了 2021.06.04感想文記入
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163281207#
    運命の人1作目 2021.05.07読了 2021.05.31感想文記入
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/416328110X#

  • 舞台は沖縄へ。まだ記憶に新しい沖縄密約の文書が発見される。
    沖縄の歴史や沖縄の人たちの思いが語られる。3巻までとはまた一転して、といった感じ。
    沖縄には地上戦での苛烈な記憶、今なお残る土地の問題、起こり続ける事件や事故の問題など山積されている。この本が出たのが2009年。それから10年以上経つが、問題は解決へとは向かわず、積み上がる一方であるような気がする。

  • 報道の自由と知る自由、この二つは峻別されるべきものなのでは…と読みながら考えていた。

    報道する側は全きの客観性において報道することなど不可能だろうし、知る側の私達にとってはやたら全てを知り、いちいち瑣末なことに捉われていれば大きな大事を見逃してしまうのではないだろうか?

    最終巻の沖縄編については作者の思いが前面にあふれ出た展開になっている。日本人と沖縄と東アジア諸国の近現代史について、真剣に教え考えるべきだと痛感した。

  • (一)から(四)まとめて

    非常に大作で読み応えがあった。
    フィクションではあるが、事実をベースにしているため緻密な取材がされていることが感じられる。
    特定の職業(新聞記者)というものが核となっているので、臨場感がある。
    戦後日本史の埋もれていた大きな課題が引きずり出されていると言えるのかも知れない。

    山崎豊子の作品がテレビや映画をはじめ大きく取り上げられている。これももしかしたら映画化されるのものの一つになるのかも知れない。

  • 第四巻を書くため著者はこの物語を始めたような気がする。本書は沖縄への謝罪の書である。殆ど金銭による本土返還であるに等しいことを暴露された佐藤政権は、これを男女のスキャンダルにすりかえ、それに国民もマスコミも黙ってしまう。そのことが、現在も沖縄の米軍による実質支配につながっているようである。
    第四巻は創作部分が殆どで、その後の西山太吉とは違うようであるが、小説では本土の犠牲になり続けている沖縄の現状を描いており、現政権においても解決できない政治に対する怒りを覚える。この著者の作品の読後感はいつもこの絶望感だ。
    佐藤栄作のノーベル賞は返還すべ気だな。何故ならば、金銭による返還だし、まだ米軍が支配しているもの。

  • すっかり前に読み終わったのに忘れていた。なんというか、面白かったし色々と大切なことが書いてあったけど、すごい飛ばし読みしてまった。小説感とか時間の流れとか繋がりとか、そういうのがイマイチだったんだと思う。でも面白い、と思ってしまう、山崎豊子はすごいです。

  • いわずとしれた。

    今回は主人公含めあまりキャラが立っていない気がした。傲慢不遜で財前吾郎を思わせる弓成亮太は、急に4巻で存在感がなくなる。
    巻ごとに状況の切り替えがびしっとしすぎている感が。ラストも終わるべくして終わり。
    そして30年分くらいずらーーって流れてるから、登場人物が出ては消え、その後にどうなるかていう小説的な要素もあんまりだった。

    でもなんだかんだおもしろかったしいいや!
    毎度頭が下がります。

    蛇足。沖縄の「なんとかさー」ていうのは活字にすると大分違和感が。
    なんで題名が、運命の人?誰か教えてください。

  • ※註 全四巻まとめてのレビューです

    『沈まぬ太陽』から10年、山崎豊子の最新作は1971年の沖縄返還協定の調印にあたって、日米間で取り交わされたいわゆる「沖縄密約」についてのドラマである。

     毎朝新聞政治部の辣腕記者であった弓成亮太は、沖縄返還にあたってアメリカ側が補償すべき地権者への土地修復費400万ドルを日本政府が密かに肩代わりする旨の密約を示す電信文を、親しくしていた外務省女性事務官・三木から密かに入手した。
     当初、ニュースソースを秘匿するために、紙面でも詳細に立ち入らず慎重を期したが、世論を喚起するには至らなかった。そこで予算審議が大詰めを迎えた国会の場で、国民を欺き通す政府・外務省を糾弾しこの問題を世に問うべく、この秘密の電信文を野党・社進党の若手議員に手渡した。しかし、弓成が自身の記事ですら慎重を期したこの電信をあろうことかこの野党議員は委員会審議の場でふりかざし、文書の漏洩が問題化した。

     長期政権の花道をつけるべく用意した沖縄返還について邪魔を許さぬ新聞嫌いの佐橋首相の意向もあり、文書を弓成に流した事務官の三木は国家公務員法違反で逮捕され、弓成自身も三木に国家機密の漏洩を「そそのかした」かどで同時に逮捕された。
     そして、注目の起訴状には弓成が夫を持つ三木と性的関係にあり、その情に訴えて強引に外交機密を盗み出させたという内容が並べられていた。新聞社側は「知る権利」「報道の自由」を断固守るべく、全面的に弓成をバックアップし、国民に知らせるべき内容を秘匿した外務省側の責任を一審で責め立てた。一方検察側は、この密約が秘匿されるべき国家機密であるという前提の下、三木を籠絡した弓成に報道に携わる者の倫理の逸脱と取材方法の違法性に重大な責任を課すというストーリーを作り上げ、真っ向から対決となった。結果的に、一審は弓成に無罪判決を下したものの、二審は逆転して有罪、最高裁への上告も棄却され、弓成は敗北した。

     ストーリーの全体構成は第1巻が事件の概要、第2巻~第3巻が裁判経過、第4巻が裁判後の弓成の半生を描いている。

     およそ小説とは思えないぐらいの取材と現実への厳しい眼差しは、他の追随を許さないが、1971年の高度な政治的問題である日米外交交渉とスキャンダラスな裁判、1945年の凄惨な沖縄戦、1990年代の沖縄基地問題を一つの作品に詰め込むにはかなり無理があったのではないだろうか。
     社会派小説を書いては右に出る者がない山崎の力作であるが、著者の年齢を考えれば長編小説としてはこれが最後になる可能性もある。小説の出来としては、『大地の子』『沈まぬ太陽』のように頁をめくるたびに胸を締めつけられるような傑作とは言えないが、戦後日本政治外交史の最重要問題である「沖縄」についての著者の強いメッセージを受け取ることができた。

  • 個人的に、著者の作品の中で
    『沈まぬ太陽』に継ぐ好きな作品となった。

    国家権力の横暴さ、
    外務省官僚の閉鎖性、
    新聞マスコミのあり方、
    沖縄の戦中・戦後・今の実情 など、
    難しい問題がうまく構成されていると思う。

    そして、いつもながら感服するのは
    徹底した取材のもと、
    卓越した構成力で、
    埋もれがちな問題を浮かび上がらせるスタンス。

    すばらしい小説家であるとともに
    優秀なジャーナリストだと思う。

  • 1から3と比較すると4だけ異質な感じを受けるが、終わりがまとまってるのでまあいいか。プライドと自負が人一倍の主人公と必死で支えようとする妻が昭和の時代っぽくて時代を感じた。当時の妻はそうやって結婚生活(=夫を支える生活)を送っていたのだなとしみじみ感じた。「自分が、自分が」と出る妻である自分の至らなさを思った。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

山崎豊子の作品

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